全国各地で老朽化が問題視されつつある下水管を、こんなロボットが点検してくれるかもしれない。
この記事の画像(8枚)サービスロボットメーカーの株式会社テムザックは11月8日、下水道管の点検を助けるクモ型ロボット「SPD1」を開発したと発表した。
SPD1は8本の足で移動し、「基本仕様」の大きさは21×25×25cmで、重さが約3.5kg。大きさが異なる直径20~30cmまでの管をこれ1台で走行でき、ゲームコントローラーを使った「直感的な操作が可能」とのことだ。通信は有線LANケーブルを使用し、SPD1には基本仕様の他に、「上部カメラ付き」と「360度カメラ付き」がある。
1匹…と言ってしまいそうだが、単体での運用はもちろん、先頭は前方確認、2台目は調査箇所の記録、3台目は必要箇所で作業などと、「群れ」での作業もできるという。
そもそもSPD1を開発したのは、道路・下水道管整備会社からの依頼がきっかけになったそうだ。
全国に広がる下水道の管路は総延長約49万kmもあり、実はその5%にあたる2.5万kmが標準耐用年数の50年を経過している。さらに、耐用年数が過ぎた管路は今後急速に増加すると予想されているが、下水道工事の現場では慢性的な人手不足に陥っているため、点検や修繕の見込みが立たないという。
そんな現状から、多様なニーズに対応するためにSPD1が開発されたのだ。では実際、下水管は現在どんな方法で点検していて、どんな問題があるのか?SPD1はどんなメリットがあるのか?
テムザックの担当者に聞いてみた。
従来の機器は20~30kg…負担が大きかった
――SPD1は何ができるロボットなの?下水道以外に活用できるの?
下水道管内を調査するロボットです。上水道、ガス管等、地面の下にある「埋設管」の調査にも活用ができます。
――これまでの下水管の調査法を教えて。
タイヤ式の調査カメラが主に使われていますが、堆積物や障害物があるとそこで終了となってしまい、見たい箇所まで届かない・進めない・見られないといった問題や、狭い管径(φ200)に対応できる機器が少ないという課題がありました。
さらに、作業人員の人手不足や高齢化が進む中、装置自体が20~30kgと重たく、負担が大きくなっています。
また1970年代頃から急激に整備されだした下水道管は、標準耐用年数50年を経過したものは年々増加しているにもかかわらず、慢性的な人員不足などによって調査が追い付かない状況となっています。
トイレやお風呂など生活に直結する設備を、今後も安全に継続して使うためには、効率的に調査・工事を進める新たなアイテムの開発が必須となっています。
――タイヤ走行と比べてSPD1メリットは?
堆積物や障害物のある状況でも走行できる突破力。1台で異なるサイズの管(φ200~φ300)に対応が可能です。
ゲームコントローラーで直感的に操作できる
――「群れ」で作業をするメリットは?
機能を自由に組み合わせられる点です。
また、一つのロボットが出来ることには限界があります。無理に多機能化すると、重量が重たくなったり、本体価格・メンテナンスコストも高額となってしまいがちです。なので、一つ一つは単機能化したロボットが協力し合い、作業をこなしていく方が効率的です。将来的には、ロボット同士が通信をしあい、コミュニケーションをとりながら自律的に動くことで作業をこなしていく世界が主流になっていくと考えています。
――デザインのこだわりは?
インパクトのあるデザインを意識し、クモのようなデザインにしています。
――目のような部分の役目は?
次の開発フェーズで、ライトがつく予定です。
――SPD1は何人で操作するの?作業軽減になる?
複数台のロボットを一人で操作できます。1台1台を切り替えて操作しても良いですし、同時に同期して動くことも可能です。操作は、ゲームコントローラーを用いて直感的に操作することができますので特別な技術や技能の習得は必要ありません。(※傷・異物等の確認作業には専門知識が必要)
また、1台3.5kgと軽量なため、取り扱いがしやすく、作業者の負担軽減につながります。
――ちなみにSPD1って英語のスパイダーから名付けたの?
Spiderからとりました。
なお同社は、このSPD1での実証実験を行った後、製品モデルの発表を予定しており、アームなど機能を付け替えた応用展開も考えているそうだ。
ロボット好きの心をくすぐりそうなデザインだが、大事なインフラ整備のために、人間の負担を減らす役割も担うSPD1の今後に注目したい。