次世代の半導体の国産化に向け、トヨタなど国内企業8社がタッグを組むことになった。

国内企業8社がタッグ 最先端の半導体を国内で製造へ

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AI=人工知能などに使う次世代半導体の国内での量産化に向けて、トヨタ自動車とNTT、ソニーグループ、デンソー、ソフトバンク、NEC、キオクシア、三菱UFJ銀行の国内企業8社が、新会社「Rapidus(ラピダス)」を共同で設立した。

2020年代後半の量産化を目指し、政府も研究開発拠点の整備費用などを支援することにしている。西村経産相が11日に正式発表し、国が700億円を補助することを明らかにした。

次世代の半導体をめぐっては、性能を高めるため、回路の幅をより小さくする技術の開発競争が世界的に激しくなっている。新会社ではまだ実用化されていない、2ナノメートル以下の半導体の生産を目指したい考え。

もう一度日本の産業活性化を! 安全保障確保と一石二鳥を狙う戦略

Live News αでは、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚(おさない・あつし)さんに、話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
次世代の半導体を国内で作ろうと動き出しましたが、長内さんは、どうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール 教授・長内厚さん:
2022年のはじめ、熊本に台湾企業「TSMC」が、ソニーやデンソーなどとともに半導体工場を建設するニュースが話題になりました。この工場は回路幅が26ナノプロセスという、10年くらい前の半導体技術の製品になります。最先端ではない一方、広く様々な製品に使われます。
これに対して今回、トヨタ・NTT・ソニーなどが作る新会社は、ビヨンド2ナノという、現在の最先端技術の3ナノをしのぐ高性能次世代半導体の工場です。
この20年以上、日本の半導体産業は後退を重ねてきましたが、ここに来てようやく量産品から最先端製品まで、国内で積極的に作っていこうという流れになってきたという、うれしいニュースではないかと思います

ーーただ半導体はグローバルな競争が激しく、さらには米中の対立などの不安材料もあるようですが、これについては、いかがですか?

今回の試みの背景には、中国という地政学的リスクがあるのではないでしょうか。汎用技術はすでに、中国での生産が増えています。また、最先端の半導体の製造拠点である台湾も、中台の緊張関係を受けてリスクが高まっています。
最先端の半導体は軍事転用も可能な技術の為、経済的な問題だけでなく安全保障上の問題としても、日本は国内や同盟国での半導体開発製造が必要となってきたと言えます。
またアメリカは、アメリカ・日本・台湾・韓国の4者による半導体同盟「Chip4(チップ フォー」を形成しようとしています。ここで日本は明確にアメリカと歩調をあわせつつあり、半導体産業をもう一度日本に呼び込もうとしているわけです。いわば、日本の安全保障の確保と、産業再生の一石二鳥を狙う戦略と評価できます

ーー今回の半導体を含めて、日本のモノづくりが再び力を取り戻せるといいですね

本当にそうですよね。日本の産業の空洞化が叫ばれて久しい中で、もう一度、日本で生産をする産業を活性化させるというのはとてもいいことです。
ただし一方で、資源が乏しい国である日本の場合、自由貿易が広まることも、日本の国益にとって大切なことだと思います。中国との対立をあまり先鋭化させないというバランスも必要ではないでしょうか

内田嶺衣奈キャスター:
日本が誇る大手企業が手を携えることで、良い方向に進むことを期待したいです。ただ、生産拠点の整備とともに、人材の確保や育成もあわせて整えていく必要があるように思います

(「Live News α」2022年11月10日放送分より 一部内容更新)