11月11日に東京・青海から出発する第64次南極観測隊が南極大陸に持ち込む“特別な地震計”がある。 開発開始から約40年の時を経たこの地震計は、過酷な環境下で実験を終えた後、 NASAが今後の宇宙計画で採用する方針だという。
月探査計画で打ち上げの予定が中止に
地震計を開発したのはJAXA宇宙科学研究所の教授、田中智(たなか・さとし)さん。

小惑星リュウグウのサンプルを地球に持ち帰った「はやぶさ2」のミッションなどでも活躍した田中さんだが、地震計の開発を振り返り「数奇な人生、ドラマチックですよ」と語る。

田中さんが開発した特別な地震計は、1990年代に始まった日本の月探査計画で月の内部構造を調査するため宇宙に打ち上げられる計画だったが、関連する技術の開発などが遅れた影響で打ち切りに。

しかし、田中さんのグループは地震計の開発を継続。
そして、12月、地球用に改良された地震計が南極大陸に持ち込まれ、宇宙を見据えた過酷な環境で実験が行われることになったのだ。

テストを重ね、過酷な環境・南極で実験へ
9月、高知県で、ドローンが地上約150メートル上空から地震計を投下し、地面に打ち込むテストが行われた。

地震計は、ロケット状の装置の中に入っていて、地中の奥深くまで突き刺さることで、微弱な振動も観測できるようになる。

また、この装置には通信機器やGPSなども搭載されており、 南極や火山など人が容易に近寄れない場所でもデータの計測が可能になる。

「いつかは花が咲く…」NASAが宇宙ミッションで採用
南極での実験を終えた後、地震計はついに数十年越しに月を目指すことに。

NASAはこの地震計について、従来のものより精度が高く過酷な環境に耐えられると評価し、今後の宇宙ミッションで採用する方針だという。

また、南極と同じように“表面が全て氷で覆われている”という土星の衛星・タイタンへと打ち込まれ観測を行う計画もある。

南極や月、タイタンにも活用される今の状況について田中さんは、「数々の偶然は重なっていると思うんですけど、地道にやってきたのがいつかは花が咲く可能性もあるときがあるんだなって」 と感慨深げに話した。

開発開始から約40年。地震計は宇宙への旅立ちを前に、南極での様々なテストが待ち構えている。
(「イット!」11月6日放送より)