11月に入って値上げに拍車がかかる中、物価高騰のあおりを最も受けているのが高齢者だ。その深刻な影響について、食材を提供するフードバンクと、ある一人暮らしの高齢者を取材した。

年金支給日の間にお金がなくなってしまう

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先日、広島市内のフードバンクが開催した食料の無料配布会。今回の配布会には37世帯が訪れた。フードバンクによると訪れる人は徐々に増えているという。

フードバンク あいあいねっと・原田佳子代表:
コロナ禍の大変さも何とか頑張ってきた。しかし、この物価高で、もうにっちもさっちも行かなくなった。そういう人たちが本当にたくさん増えているということを、この活動を通じて感じます

会を主催する原田代表。これまで生活に困っている人の食料支援を行ってきた。
急激に進む物価高騰のいま、ある傾向が出始めているという。

フードバンクの配布食材
フードバンクの配布食材

あいあいねっと・原田代表:
高齢者の年金支給は2か月に1回。去年の暮れごろから年金と年金の支給の間で、食べるものを買うことができない。そういう依頼が非常に気にかかります

物価高は高齢者の避けられない出費を直撃した。さらに、日本が抱える高齢化社会ならではの課題も浮き彫りに…。

近所づきあいが ”最後の頼みの綱”

あいあいねっと・原田代表:
一人暮らしの高齢者が増えている。特に高齢者は女性が多い。長生きするのは女性ですから。高齢者の女性は年金が少ない人が多い。

あいあいねっと・原田代表:
その時に何が頼りになるかというと地域で色々な人が支えてくれる。そこなのです。唯一。3食のご飯を1食削っても地域との付き合いを大切にしないといけない。高齢者にとって付き合いを大事にするという事はセーフティーネットなのです。自分たちで、そういうものを作らないと、どうしようもない時代になってきた

あいあいねっと 原田代表
あいあいねっと 原田代表

賃貸マンションに1人で暮らす林昇さん、76歳。
林さんはフードバンクから食糧支援を受けている。

林昇さん(76)
林昇さん(76)

林昇さん:
高血圧症になって倒れたのですよ。トラック運転手をしているころ。

林昇さん:
高血圧で上が200、下が100くらいあって高かった。倒れて退院してから、それまでに色々お金を使っていたので、生活保護にしてもらったのです。73、4歳までは仕事をやっていたが、それから仕事がなくてどうしようもないからこの状態です

持病が悪化して2年前に仕事を辞め、今は年金と生活保護を受け生活している。

人付き合いもなく ”寂しいよ ほんと” 

林昇さん:
1か月トータルで、どうしても6万~7万円いるのです。最低でも。

私は病気になってからは年金が安いので生活保護にしてもらったのだけれど、それでも、生活保護費の7万円くらいでやっていかなければいけないので、もうぎりぎり
Q:生活保護も年金も全部入れていくらくらい?
11万円くらい。そこから家賃を3万8千円引くと7万円くらいしかない

林昇さん:(冷蔵庫の中を見せる)
こういう具合に何もないでしょ

冷蔵庫の中にはほとんど物がない
冷蔵庫の中にはほとんど物がない

Q:買いだめしたり?
今日行くところだったけどね
Q:安い時に買いだめしたりする?
夜7時か8時頃に行こうかと思っているのですが
Q:夜値下げになった時に?
値下げになった時に

林さんは自ら、人との付き合いを避けるようになった。
家計の圧迫は社会とのつながりを減らし「孤独」と「孤立」を生み出す。

林昇さん:
交際費は・・・。友達はいっぱいいるけどしない。お金の貸し借りもできないし、自分は自分、人は人だし、誰も助けてくれないからね。このままいくんじゃないかな僕の場合は…
Q:人と会う機会も少なくなる?
ないですね。ないです

先が見えない不安。それでも、「値上げの時代」を生きていかなければならない。

林昇さん:
Q:先が見えないのはつらいですね?
落ちる所まで落ちているんで、これ以上悪くならないとは思っているのですが。僕らはお金もないし、地位も名誉もないから。

林昇さん:
生活保護のみなさんがどんな生活をするか分からないけど、私は私なりに、とにかく人に迷惑をかけないこと。あとは節約しながらやっていく。あとは死ぬのを待つだけ。

林昇さん:寂しいよ、ほんと

林さんのような生活に困窮している一人暮らしの高齢者。その孤立を防ぐセーフティーネットづくりや高齢者同士を横につなぐコミュニティーの構築が急を要している。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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