国会は野党ペース?
いくつかのメディアで「今国会は野党ペース」という記事を読んだ。確かに旧統一教会に関する政府与党の対応で内閣支持率が下がり、山際経済再生相は辞任、さらに政府与党は立憲や維新などが提出した「被害者救済法案」に乗る形で与野党協議を始めた。
この記事の画像(3枚)また岸田首相は教団の解散命令の請求に道を開くと言われる「質問権」の行使を表明、請求の要件を「刑法違反のみ」といったん答弁したのに、翌日には「民法の不法行為も入り得る」と法解釈を修正した。
これらの動きを見ていると、確かに岸田政権は野党に押されているように見える。ただここに来て少し状況が変わった。まず救済法案については11/1の与野党協議の後に与党側が今国会での新法の成立を断念する可能性に触れた。
野党の出した法案で与党が受け入れられないのは「マインドコントロールによる寄付には国が是正命令を出すことができ、家族には取消権がある」という部分だ。マインドコントロールはオウム裁判でも認められなかったし、家族による取消権は財産権の侵害という指摘がある。
与党側の新法断念に対し野党側は「やる気あるのか」と怒っているが、実は野党側も最初からこの部分については「ハードルが高い」と認めていた。
国民の8割が「請求すべき」の意味
もう一つ、解散命令の請求については岸田首相が「質問権の行使」「刑事だけ→民事も」と請求のハードルを下げたので「まさか請求するのか?」と心配していたのだが、10/24の衆院予算委では「現在政府が把握している情報では過去の解散事由に照らして該当するとは認められない」と答弁した。
これまで旧統一教会側に民事上の責任が認められた22件のうち、20件が「使用者責任」を認めた判決だが、裁判で出た結果以上の新事実が「質問権」の行使で明らかになるとは考えにくい。首相の答弁を素直に解釈すれば政府は解散命令を請求しないということになる。
つまり法的には家族による取り消しも、解散命令の請求も困難だ。しかし複数の世論調査で解散命令については国民の8割が「請求すべき」と答えている。このギャップをどう考えればいいのだろうか。僕は「社会」ではなく、「法」が裁くべきだと思うのだが。
【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】