2011年3月。東京電力・福島第一原発の事故により、一時避難を余儀なくされた福島県川内村。故郷に帰った女性は、人と村が出会う新たな場所を作った。「カフェを通じて大好きな故郷の魅力を発信したい」ー。夢を叶えるための一歩を踏み出した。
「家に帰れなくなる事があるのか…」
2022年秋・川内村に築200年の古民家を改修し誕生した「cafe&gallery秋風舎」。
秋風舎・志賀風夏さん:
川内村を知らない方であれば、村を知るきっかけになればいいと思いますし。ちょっとドキドキっていうか、心配でもあるんですけど、楽しめればなと思います
カフェを開業した志賀風夏さん。様々な経験を経て、「大好きな村を多くの人に知ってもらいたい」という思いを強くした。
原発事故で一時、全村避難を余儀なくされた川内村。当時、志賀さんは高校生だった。
志賀風夏さん:
「自分の家に帰れなくなる事があるのか」っていう、ちょっと血の気が引いたというか。「自分の家・ふるさとを残したい」という気持ちが強くなったので
村を知ってもらう新しい場所つくり
ふるさとへの思いを抱きながら志賀さんは、5年前に村に戻った。
志賀風夏さん:
好きな村に暮らして、好きな村を発信する仕事を自分でしたいと思ったので、村に帰ってきましたね
詩人・草野心平ゆかりの天山文庫で、管理人を務めながら村の魅力を発信してきた。
そうした中、大きな転機が訪れた。福島県・浜通り地方の若手起業家を支援するプロジェクトに、志賀さんが応募した事業が採択された。
その事業が、「川内村を知ってもらう新たな場所を作ること」だった。
カフェに未来への希望を込めて…
そうしてできた「秋風舎」。志賀さんの思いが詰まったカフェテーブルや椅子は、3年前に亡くなった父親が手掛けたもの。食器は自身の工房で制作した。
そして、一番のお気に入りは村のこどもたちと一緒に作った土壁。
志賀風夏さん:
この古民家を改修する時に、土壁を塗ってくださった子ども達とか、ボランティアの方達の手形を全部残してあります
「次の世代を担う子ども達と共に歩んでいきたい」…手形にはそんな思いが込められている。
志賀風夏さん:
やっぱりこの震災きっかけでなかったら、カフェとしてという形にはならなかったと思いますし。もちろん(震災は)マイナスなことばかりで、無かった方がいいんですけど、今となってはプラスになる事が沢山ありますね
ふるさとと人をつなぐ架け橋に
迎えたプレオープンの日。新たな一歩を踏み出す志賀さんにエールを送ろうと多くの人が訪れた。
訪れた人は「頑張って欲しい。ずっと持続」とか、「みんなに知ってもらいたい」、「川内村にはいい所が沢山あるので、その一つになると思う。是非多くの方に来てほしい」と話す。
志賀風夏さん:
川内の魅力だったり、文化だったり、川内にはすごいカッコいい人達がいるんだよっていう事を、知って欲しくてこの店を始めたので。私のこのお店をきっかけに少しでも広がっていけて、来るきっかけになればいいなと思います
大好きな村で、これからも志賀さんは歩み続けていく。