ところ狭しと並べられているのは、ナンバープレートを外された中古車、その数300台以上。このあと、これらの車はすべて同じところに運ばれるというのです。行き先は、ロシア。いま、経済制裁下のロシアへ輸出される日本の中古車が急増しています。

ロシアからの発注急増「輸送に2カ月」

10月24日、めざまし8が取材したのは、海外向けの中古車販売店。ここ半年ほどで、ロシアからの発注が約3倍になっているといいます。

JPトレーディング べーラム・ナワブ・アリCEO:
2022年3月以降、注文がだんだん増えて、すごく増えた感じ。今は車屋さんはみんな忙しい

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事務所から一歩外に出ると、そこには、ロシアへの輸送を待つ車がズラリ。船が足りず、運ぶまで2か月ほどかかっているのだといいます。

なぜいま、日本の中古車が人気なのでしょうか。
日本で走っていた中古車を約2カ月半前に購入したという、ウラジオストクに住むコンスタンチンさんに話を聞くと…

ウラジオストク在住 コンスタンチンさん:
日本の中古車は、乗り心地がよくて丈夫です

もともと、ロシア国内で人気を博していたという日本の車ですが、専門家は別の要因も指摘します。

自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子 氏:
日本の自動車メーカーもそうですし、ヨーロッパの自動車メーカーや部品メーカーが、みんなロシアから撤退しているんですね。ロシア国内で新車が作れないので、もう日本から中古車輸入した方がいいだろうと

“経済制裁の対象外”で人気急増 円安も後押しに

そしてもう1つ、中古車が注目される理由が「経済制裁対象の600万円に当てはまらない」ということです。日本政府はロシア政府への制裁として、ぜいたく品の輸出禁止措置をとっていますが、乗用車については600万円を超えるものが対象。中古車は制裁の対象になっておらず、昨今の円安も後押しとなり、日本の中古車に注目が集まっているというのです。
コンスタンチンさんは「モスクワ以外の都市では車は不可欠。日本の車だけが頼り」だと言います。

一方で「軍事転用」の懸念も

一方で、ロシア政治に詳しい専門家は、こんな「軍事転用の可能性」に関する懸念を指摘。

筑波大学・中村逸郎 名誉教授:
ロシアが一方的に併合した4州は“戦時体制”が導入されています。同時にプーチン大統領によって、ロシア全土が“戦時体制の準備段階”と指定されています。将来、自家用車を軍車両として利用するために巻き上げられるのではないか、という懸念も高まっています

世界的な半導体不足などにより、新車の生産台数が減少し、中古車の価格が値上がりしている日本。そうした中での中古車の輸出急増ーー。
ロシアへの経済制裁が、こんなところにも影響を及ぼしています。

(めざまし8「#NewsTag」10月25日放送)