10月8日から10月10日にかけて行われたフィギュアスケート・近畿選手権。
女子は三原舞依、男子は友野一希が優勝した。
6つの地方大会と東・西日本選手権を勝ち抜いた選手が、12月の全日本選手権への出場権を手にできる。
今回は、近畿選手権で西日本選手権への出場権を獲得したシニア、ジュニアの選手、全日本ノービス選手権を決めたノービスの選手を特集する。
【シニア女子】
シニア女子は、ジュニアGPシリーズ出場のため、予選免除された吉田陽菜に加えて、9名が西日本選手権へ進出を決めた。
この記事の画像(21枚)優勝したのは三原舞依。夏場に走り込みやトレーニングを少しずつ増やして迎えた今大会で見事優勝した。
ショートプログラムは坂本龍一作曲の「戦場のメリークリスマス」。
三原は「始まってからプログラムが終わるまで、いつも以上に早く感じた」と話すように、最初から最後まで意識の行き届いた、1つの音も逃さない演技で優美に舞った。
後半の連続ジャンプでわずかな回転不足を取られたが、それでも今季初の70点超で、演技後には笑顔も見られた。
「プログラムに入る直前まで、いろいろな景色が見えたり、ちょっと手が冷たいなと思ったりして、自分の頭の中にいろんなものが入ってきた。プログラムのはじめのピアノの音が流れてからは急に切り替わって、世界観に入れたのかなと思います」
フリーの「恋は魔術師」は、初戦のあと振付師のデイヴィット・ウィルソンさんに動画を送り、ブラッシュアップしてきた。特にステップとコレオシーケンスを重点的に練習してきたという。
そのステップでは初戦から力強さが増し、最高評価のレベル4を獲得。加点も1.30つく出来栄えだった。さらにコレオシーケンスでは、出来栄え点の最高が2.5点中2点もの評価を得た。
ジャンプの細かいミスがあり、スコアを伸ばせなかったが、それでも2戦連続のトータル200点超えを果たした。
「修正しないといけないところで、まだまだできるところもたくさんあると思うので、今回の結果をしっかり受け止めて、全部次に活かしていけるようにしたい」
三原はこのあと、西日本選手権に挑み、さらにGPシリーズ2戦と約2週間に1度のハイペースで試合が続く。
「予定がいっぱい詰まっている方がずっと元気でいられる。コンスタントに試合があるので、1つ1つ大切にしながら、1試合ごとの反省を絶対次に活かしていけるように、1歩ずつ前に進めたら」と三原は気持ちを新たにした。
2位の籠谷歩未は、坂本花織と三原舞依の同門の大学4年生。
「いつもよりミスが多くて、体がちょっと重いような感じで動かなかった。その部分が細かいミスや普段しないようなミスにつながった。少し残念な気持ちがあります」と籠谷は振り返る。
ショート、フリーともにジャンプのミスが目立ったが2位に食い込み、地力を見せた。
「全日本選手権のフリーを滑る」という目標を持つ籠谷。
「基本的にジャンプはミスなく跳ぶというところは、絶対にやらなければいけないこと。試合が続いていくので、修正したい。アップの時から体が少し硬くなっていたと感じたので、普段からアップの方法も変えていって、改善していけたらいいなと思います」
今後はミスした部分の修正を図り、激戦の西日本選手権を勝ち抜いて、自身3度目の全日本選手権をつかむ。
1 三原 舞依(シスメックス)201.48点
2 籠谷 歩未(同志社大学)147.22点
3 鈴木 なつ(関西大学)125.34点
4 藤 由妃乃(同志社大学)120.64点
5 久保 舞和(関西大学)117.05点
6 高村 幸来(臨海フィギュアSC)113.88点
7 井上 晴絵(立命館大学)111.24点
8 木下 咲良(関西大学)104.90点
9 藤崎 ひなの(ゴールドスターFSC)99.93点
【シニア男子】
シニア男子は全員が西日本選手権に進出した。
優勝は友野一希。昨季は友野にとって、北京五輪代表こそ逃したものの、四大陸選手権は2位、世界選手権で6位に入るなど、世界に存在をアピールしたシーズンとなった。
今季は“自分らしさ”をテーマに、ショート・フリーともに自身の持ち味を存分に活かした、見ている人が思わず笑顔になれるようなプログラムを用意。
9月のネーベルホルン杯でミスのあったショートは、この2週間で切り替えて、十分な練習を積んできたが、「少し嫌なイメージが残ったまま演技に行ってしまった」と話す。
今大会でもショートで2本の4回転ジャンプを決めきることができず、1位と15点差の2位発進だった。
「今は我慢のときだと思う。ただこの失敗に向き合って、しっかりこの結果を受け止めて、練習に打ち込むのみ。まずは明日のフリー、この2週間で頑張ってきたことを少しでも試合で出し切れるように切り替えて挑みたい」
気持ちを切り替えて臨んだフリーは、2本の4回転トゥループを力強いジャンプで成功。2点以上の加点がつく出来栄えを獲得した。
「昨日の演技を見ていて、すごく下を向いて演技をしていたので、自分でつまらないなと思った。今日はなるべく上を向いて気持ちの面でも上を向いてやろうと意識した」
フリーの「こうもり序曲」に乗せた、運動量豊富なコレオシーケンスでも2点の加点がつく高評価を得る。“友野らしさ”が垣間見える演技で巻き返し、逆転で優勝した。
「シーズン序盤にしては例年に比べて一番いい演技だった」とキスアンドクライでもホッとしたような表情を見せた。
「点数的にはまだまだ満足できるものではないですし、自分のMAXを出すにはもっと練習を積んでいかなければならない。本当にいい練習を積めているので、練習を楽しみながら、試合で出せるようにひたすら頑張っていきたい」
こう前を向く友野は、このあとGPシリーズ2戦に挑み、エンジンをかけていく。
2位の三宅星南は、昨季全日本選手権6位に入り、四大陸選手権の代表をつかんだ20歳。
今季は「4年後のオリンピックを目指すための土台づくりのシーズンにしたい」と目標を掲げる。
夏にも試合出場を予定していたが、スケート靴の調整が間に合わず、今大会が初戦となった。
昨季から継続のショートプログラムでは、冒頭に高さのある4回転サルコウを決めて勢いに乗ると、トリプルアクセルも成功させる。後半の連続ジャンプは3回転ルッツの着氷が乱れるも、なんとか2回転をつけミスを最小限に抑える。ショートの得点は83.44点。
「今までだったら弱気になっていた部分が、弱気にならずに、自分がやってきたことを信じて少しはできた。そこは本当に成長を感じられた。去年やっと80点以上出せるようになってきて、今回の試合もミスがありながら、点数を出したのは自信になります。もっともっと上を目指して、90点を安定して出せるような選手になれるよう頑張りたいです」
フリーは新プログラムの「タイタニック」を初披露。その中で初めて4回転トゥループにチャレンジし、出来栄え点1.90で初成功させる。続く4回転サルコウも決め、勢いに乗るかと思われたが、ここから4度の転倒により思うような演技ができなかった。
昨季よりも構成を上げた4回転3本をチャレンジすることの難しさを痛感した三宅。
それでも前を向き、「今はめちゃめちゃ悔しいです。4回転トゥループ、初めてのチャレンジで成功できたのはいい収穫になったんですけど、一番自信を持って、今回一番頑張りたかった4回転以外の部分の要素をしっかり決めるという部分が全くできなかった。そこに関しては本当に悔しいですし、今後頑張っていかないとと感じました」と語った。
175センチの長身を活かした、スケールの大きい滑りと表現力に定評のある三宅。ここにジャンプがかみ合ったとき、どんな演技を見せてくれるのか、楽しみだ。
3位の森口澄士(すみただ)は、今季ペアでジュニアGPシリーズに出場。1週間前のポーランド大会では3位に入る快挙を達成した。
その大会の翌週の試合になったが、ショートとフリー合わせて3本のトリプルアクセルを豪快に成功させる。200点超えで今大会でも表彰台にのぼった。
「いろいろ課題はありましたけど、楽しく終われたと思います」
そう振り返る森口は、3週間後にはシングルで全日本選手権をかけた西日本選手権に出場。さらに翌週にはペアで東日本選手権に出場予定だ。
「西日本では今回よりいい点数で、しっかり要素も見直して、1つ1つスピンとかも大事に。パーソナルベストを更新できるように頑張っていこうかなと思います。東日本はペアだけの試合なので、ジュニアGPポーランド大会よりも成長した部分をたくさん見せられるように頑張りたい」
6位の須本光希は、2017年全日本ジュニア選手権で優勝し、2018年の世界ジュニア選手権に出場した実力者。大学4年生を迎え、今季がラストシーズンに。
昨季はケガや体調不良もあり、引退を考えていたが、去年の全日本選手権を終えたあと、「自分の中でちゃんと覚悟を決めて、もう1年だけやることを決めた」と今季も戦いの舞台へ。
今も体調不良と向き合う日々が続くが、「トリプルアクセルまでは、今シーズンどこかで1回は降りたいなと思っているので、ショートもフリーも構成に入れられるようにしていきたい」と語る。
前回2018年に開催された地元・大阪での全日本選手権は、出場を逃した。それだけに「ショート・フリーでしっかりいい演技をして、滑りきれるようにというのは、ずっと心の中にあります」と話した。
須本にとってラストシーズンとなる今季は、再び全日本選手権が大阪で開かれる。まずは出場権を獲得するべく、3週間後の西日本選手権に向けて調整を進める。
1 友野 一希(上野芝スケートクラブ)238.48点
2 三宅 星南(関西大学)205.30点
3 森口 澄士(木下アカデミー)200.07点
4 本田 ルーカス剛史(木下アカデミー)196.42点
5 壷井 達也(シスメックス)195.03点
6 須本 光希(関西大学)191.25点
7 木科 雄登(関西大学)190.06点
8 三島 悠生(ひょうご西宮FSC)141.26点
9 嘉手納 宙大(臨海フィギュアSC)133.61点
10 小林 隼(同志社大学)127.47点
11 彦阪 昇吾(立命館大学)120.65点
12 前川 裕士(大公大FSC)111.72点
13 川口 清壽(佛教大学)110.11点
【ジュニア男子・女子】
ジュニア男子は、ジュニアGPシリーズ出場のため、予選を免除された片伊勢武アミン、中村俊介、森本涼雅に加えて、11名が西日本選手権への出場を決めた。
優勝は高校1年生の垣内珀琉(はる)。ショート・フリーともに1位で優勝を飾った。
今季はジュニアGPチェコ大会に出場し、海外試合を経験。垣内は「海外の選手はスピードも速くて、トリプルアクセルや4回転をボンボン跳んでいるので、僕はまだまだ全然だなと思った」と語る。
今大会では中学1年生の頃からチャレンジし続けてきた、4回転トゥループを初成功させ、「とてもうれしい」と喜んだ。
しかし、「4回転を降りたことにビックリしすぎて、後半になってから体力がなくなってしまって、最後のスピンを取りこぼしてしまった」と反省する。
「西日本の目標はスピン。4回転トゥループを西日本でも降りて、後半バテないように頑張りたい」
西日本選手権で全日本ジュニア選手権の出場権獲得、その先の全日本選手権の推薦選手を勝ち取るため、これからも練習を積んでいく。
1 垣内 珀琉(ひょうご西宮FSC)188.40点
2 朝賀 俊太朗(木下アカデミー)182.83点
3 佐々木 晴也(京都大学)166.24点
4 名倉 一裕(大阪スケート倶楽部)148.96点
5 小島 志凰(浪速中・高スケート部)147.15点
6 佐藤 光(ひょうご西宮FSC)137.15点
7 磯和 大智(京都宇治FSC)122.96点
8 石原 弘斗(京都宇治FSC)122.13点
9 生田 琉悟(浪速中・高スケート部)121.96点
10 小山 紡(大阪経済大学)120.52点
11 髙木 航太(臨海フィギュアSC)119.59点
ジュニア女子はジュニアGPシリーズ出場のため予選を免除された柴山歩に加えて15名が西日本選手権へ進出した。
優勝は、今季ジュニア2年目を迎えた中学3年生の櫛田育良。昨季に続いて連覇を達成した。
ジュニアGPチェコ大会に出場し、海外試合も経験した。
ショートの「レッドバイオリン」を中学生とは思えない、あでやかな滑りで表現したが、2度の転倒があり、まさかの7位スタートに。
それでも、フリーでは継続のプログラム「サムソンとデリラ」を疾走感たっぷりに駆け抜けた。
伸びやかな歌声に乗せて、スパイラルやイーグルを見せたコレオシーケンスでは、出場選手で1番多くの加点がつく、高い評価を得た。
櫛田は「ショートで失敗した原因をちゃんと今日修正してやりました」と、フリーでは見事に立て直し、すべてのジャンプを着氷させ、逆転優勝する。
「今シーズンはショートとフリーをそろえられた大会がないので、そこをそろえられるようにすること。表現とスピンを確実に取れるようにすること」を目標に置いて、西日本選手権まで練習に励む。
1 櫛田 育良(木下アカデミー)156.78点
2 山田 恵(木下アカデミー)156.06点
3 村上 遥奈(木下アカデミー)150.73点
4 清水 咲衣(大阪スケート倶楽部)145.64点
5 高橋 萌音(神戸クラブ)131.42点
6 田中 梓沙(木下アカデミー)126.69点
7 重田 美星(神戸ポートアイランドクラブ)125.08点
8 吉本 玲(神戸クラブ)122.32点
9 山邊 百(ひょうご西宮FSC)121.72点
10 寺島 綾優(浪速中・高スケート部)120.40点
11 岩崎 陽菜(なみはやクラブ)119.98点
12 白岩 由里(ひょうご西宮FSC)119.74点
13 杉山 菜那(京都宇治FSC)117.79点
14 豆板 美稀子(ひょうご西宮FSC)114.01点
15 柚木 心春(京都宇治FSC)113.75点
【ノービスA・B、男子・女子】
ノービスA男子は推薦選手の高橋星名に加えて5名が、ノービスA女子は、推薦選手の河野莉々愛、鈴木華乃に加えて6名が全日本ノービスへ進出を決めた。
1 向野 慶(神戸ポートアイランドクラブ)77.69点
2 佐野 海音(滋賀ドリームFSC)65.48点
3 山田 志太朗(関西スケーティングC)60.94点
4 西谷 永遠(関西大学KFSC)56.10点
5 飛永 恭兵(大阪スケート倶楽部)51.46点
1 河野 莉々愛(木下アカデミー)78.25点
2 川勝 玲奈(木下アカデミー)77.38点
3 鈴木 華乃(木下アカデミー)75.09点
4 松浪 ひかり(関西大学KFSC)71.96点
5 乾 汐希(ひょうご西宮FSC)69.37点
6 池田 希(尼崎スポーツの森FSC)69.29点
7 北谷 美結(京都宇治FSC)68.68点
8 中島 羽菜(ひょうご西宮FSC)64.51点
ノービスB男子は6名全員、ノービスB女子は推薦選手の金沢純禾に加えて7名が全日本ノービスへ進出を決めた。
1 デイリー スカイラー海聖(神戸クラブ)57.41点
2 原 大翔(神戸クラブ)54.52点
3 多々納 怜(京都宇治FSC)48.52点
4 乾 晟太朗(ひょうご西宮FSC)42.46点
5 宮瀬 獅世(京都宇治FSC)40.50点
6 宮嶋 鼓太朗(京都アクアリーナSC)37.45点
1 金沢 純禾(木下アカデミー)77.22点
2 一貫田 紗生(関空スケート)62.65点
3 能登 咲空(ひょうご西宮FSC)60.95点
4 宮岡 光(ひょうご西宮FSC)58.83点
5 水越 蒼(大阪スケート倶楽部)55.02点
6 澤田 有理(ひょうご西宮FSC)54.75点
7 國時 理沙(神戸クラブ)52.85点
8 亀井 美杜(ひょうご西宮FSC)50.91点
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