スマホ決済アプリを使って無料で送金できる新たなサービスが、11日から始まった。

口座番号を知らなくても送金可能

新たな個人向け送金サービス「ことら送金」は、スマホの決済アプリに相手の携帯電話の番号やメールアドレスなどを入力することで、銀行口座番号を知らなくても10万円以下の送金ができる。

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メガバンクを含む大手銀行や地方銀行、計20行で始まり、今後は全国で50行以上が参加する予定だ。

手数料は各行が決めるが、11日から開始した20行は無料にしている。

このサービスによって各行の手数料収入は減るものの、現金を管理するためのコストを削減できるほか、将来的には銀行から他のスマホ決済サービスへの送金も可能にしたいとしている。

メイン口座の維持狙い

内田嶺衣奈キャスター:
市場の分析や企業経営に詳しい、経済アナリストの馬渕磨理子さんに聞きます。
私たちユーザーにとっては送金サービスが無料で利用できるのは嬉しいですが、一方の銀行は「手数料ビジネス」を手放すことになり、今回の試みは銀行側にどんな狙いがあるのでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
1つは「コスト削減」のためです。
例えば、全国に銀行店舗やATMを設置し、現金が途切れないようにするためには、多額の費用がかかります。

現金決済のインフラのコストは、日本全体で年間2兆8000億円といわれています。
今後、キャッシュレス化がさらに進むことを考えれば、店舗やATMを削減することで経営を効率化できます。

もう1つは、銀行口座の利用者が減ってしまうことへの危機感です。

内田キャスター:
銀行口座の利用者が減ることへの危機感とは、具体的にどういったことですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
いま、“○○ペイ”の存在感が増しています。
買い物や送金に加え、給与のデジタル支払いもスタートする中、今後も銀行との付き合いを続けてメイン口座を維持してもらう狙いがあります。

内田キャスター:
確かに、これからは給与の振り込みについても銀行の口座を使わなくなる可能性がありますね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
給与が振り込まれる口座は、いわゆるメイン口座となります。
結婚や住宅の購入、さらには退職や相続など、人生のライフタイム・イベントの度に銀行は相談にのってきました。

一般的にメイン口座の顧客がもたらす銀行収益は、非メイン口座の顧客と比べると数倍から数十倍の利益になります。
そのため今回、送金サービスを無料にしようとも、とにかく銀行口座を使ってもらいたいのです。

内田キャスター:
これからの銀行経営は、より難しい舵取りが求められそうですね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
銀行の収益に関して懸念されているのは 、「メガバンク」よりも「地方銀行」です。
地銀の場合、個人や中小企業など比較的小規模な顧客を対象とする例が多いです。

「預金」を「融資」にまわして企業や人の成長をアシストして、さらなる預金を生む「信用創造」は銀行固有の役割です。 今後は、競合してくるフィンテック企業などに対して、地方銀行ならではの強みである「信用創造」を活かし、地域を見守り、企業や人の成長を支えることが生き残りのカギになるように思います。

内田キャスター:
給与が振り込まれる銀行をメイン口座としていた方も多いと思いますが、これからは提供されるサービスを比較して、自分で選んで行く時代になったんですね。

(「Live News α」10月11日放送)