パウダースノーが世界のスキーヤーに称賛され、高級ホテルやコンドミニアムが相次いで建設される「ニセコエリア」。リゾート地として高い評価を受けながら、土地が比較的安いことから、海外の富裕層に注目され、世界中の“富”が集まっている。                

この記事の画像(19枚)

今、その「ニセコ」で、パウダースノーを残すため二酸化炭素などの温室効果ガスを出さない未来の暮らしを形にするプロジェクトが進められている。

高評価を受けるニセコ町だが、町長はある危機感を抱いていた。

ニセコ町・片山健也町長:
地球温暖化防止に待ったなしの状況。できるだけ早くゼロカーボンシティを達成したい

「世界のリゾート地」の未来は…"環境に負荷かけない"まちづくり

世界を襲う温暖化と異常気象。そうした中でも世界に誇るパウダースノーを残したい。

その切り札となるのが、環境に負担をかけない最新の住宅街。その名も、「ニセコミライ」だ。

羊蹄山のふもとに広がる、ニセコ町。ここで始まっているのが未来の北海道の暮らしをカタチにするプロジェクトだ。

その名もニセコミライ。主体は官民で立ち上げたまちづくり会社、ニセコまち。取締役の村上敦さんに予定地を案内してもらった。

ニセコまち・村上敦さん:
第一工区のエネルギーコンセプトはオール電化。エコ給湯とエアコンを使った熱供給を考えている

9ヘクタールの敷地に集合住宅最大13棟を建設する。すでに2022年5月から第1工区の工事が始まっている。

ニセコミライの特徴は温暖化の原因となる二酸化炭素などを極力出さない暮らしだ。

ニセコまち・村上敦さん:
こちらに広がる奥が第二工区。2年後くらいから建築を開始する予定。シェアハウスと分譲住宅や、賃貸住宅を作っていきたい

北海道の冬でも電気料金5000円? "CO2フリー"の住宅

すでにニセコ町内にはモデルとなる集合住宅が建てられている。一見普通の住宅ですが、すごい特徴が。

集合住宅に住む人:
冬の寒い時期でも電気代は5000円くらい

冬は豪雪と厳しい寒さに見舞われるニセコエリア。しかし、使っている暖房は建物全体を温めるエアコンと部屋に置かれた小さなパネルヒーターだけ。

その秘密は壁に使われた超高断熱の素材だ。玄武岩を溶かして作ったロックウールなどの素材を使い、壁の厚さは一般的な住宅の倍の20cmもある。

ニセコミライではこうした住宅を2030年までに244戸整備する予定だ。エネルギーの自給も目指す。

太陽光パネルを設置し、発電した電力を生活や電気自動車の充電にも活用する計画だ。

ニセコまち・村上敦さん:
最大で4割から5割は太陽光発電を設置して、残りの電力は、ニセコ町内には水力発電所が3ヵ所あるので、そこから購入する形でCO2フリーのエリアを目指している

"夢物語"を現実に…超高断熱住宅で示した「ニセコの未来」

年々影響が大きくなる温暖化と異常気象。ニセコ町は2年前に「気候非常事態」を宣言。

2050年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。ニセコミライはその中核だ。

しかし、当初、町の目標は町民に十分に理解されなかった。

高橋牧場・高橋守社長:
いったい何? 本当にそんなの実現するの? 夢物語のように言われてニセコ町民に理解が得られない

ニセコ町内で50年以上牧場を経営している高橋 守さん。

当初は夢物語と思われた町の目標。しかし、高橋さんは環境を守りながら安心して暮らせる町を作りたいとニセコミライを担うニセコまちの社長に就任した。

環境に配慮したまちづくりを進めるドイツ・フライブルク市の視察も行った。

高橋牧場・高橋守社長:
どうしたら環境に優しい、効率の良いエネルギーを使えるか。CO2を排出しない、そして暖かい家。ニセコは大雪のところ。実現していかなければいけない

高橋さんが町民に理解してもらうために作ったのが先ほどの集合住宅です。

高橋牧場・高橋守社長:
実現して、町民の方にこういうものだと。結露のしない気密性のある家。見本にアパートを作った

全国から視察続々 "耐用年数100年"の衝撃的取り組み

いま全国の自治体も同じような住宅の導入を目指し視察に訪れている。

ニセコまち・早田宏徳さん:
これが全部、断熱材。叩くとトントンと音がする

この住宅は高気密の一方、壁の中に湿度を溜めこまないため結露ができにくく腐食しない。住宅メーカーでは耐用年数は100年と想定している。

視察した人は。

視察ツアーに参加:
今回の取り組みは住民や将来住む人。時間軸が長いところで見ている取り組み。他とは全然違う

視察ツアーに参加:
マイナス15度の冬でもできることは衝撃的。ニセコ町でできれば、全国でできる先進的な取り組み。波及効果もあるのではないか

環境に優しい街づくりは"移住促進"の期待も

さらにニセコミライは移住希望者が多いものの、住宅が足りないという課題の解決も期待される。

5月に着工した第一工区は集合住宅、2年後をめどに建築を始める第二工区はシェアハウスを中心にアトリエ工房やランドリーカフェなどを作り、住民の交流拠点となる。 

第三工区は安い賃料と光熱費で入居できる賃貸の集合住宅で、第四工区は別荘としての利用もできるワンランク上の分譲の集合住宅だ。

全体で約450人が住む予定となっている。

ニセコ町・片山健也町長:
まちづくりには課題がいっぱいある。住宅不足を解決する。雪の問題や相互扶助、子どもたちが安心して遊べる空間をどうするか。全然違う

ニセコ町・片山健也町長:
物を大切にする文化。地球環境負荷を考えれば、建物に価値を付ける、それを持続させる。ぜひみんなの力でモデル的なものを作りたい

夢物語ではないことを証明する、そんなニセコの夢の物語は始まったばかりだ。

(uhb北海道文化放送)

北海道文化放送
北海道文化放送

北海道の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。