9月5日、静岡県で送迎バスの中に3歳の園児が取り残され、熱中症で死亡する事件が起きた。バスに空っぽの水筒が残されていたと聞くと、胸が締め付けられる。なぜ事件は起きたのか、園児の置き去り防止策は…。石川県内の幼稚園を取材した。
バスの中で出欠確認 降車後は消毒も兼ね見回り
事件が起きた背景には、いくつもの要因が挙げられる。
まず、園児が降りた後に車内をきちんと確認していなかったこと。また、出欠を確認するタブレット上では、亡くなった園児は出席になっていたが、園内では姿が見えなかった。しかし、保育士はそのことに気づいていながら、保護者に連絡をしなかったということもわかっている。
この記事の画像(17枚)事件はいくつものミスが重なって起きたということだ。石川県内は大丈夫なのだろうか。
155人の園児のうち、3分の1にあたる約50人が送迎バスを利用する、金沢市内のメロン幼稚園を取材した。
この幼稚園ではまず、バスの中で職員が出席の確認を取る。
そして、園児が降りた後は…。
メロン幼稚園 平井知子教諭:
必ず座席をすべて見回って、今はコロナウイルスがあるので、座席を消毒して降りるようにしています。
この幼稚園では職員が車内を消毒して確認した後、必ず運転手がダブルチェックを行う。
さらに園内では、クラスごとに直接、出席を確認する。
もしも、事前連絡がない園児の姿がない場合には、必ず保護者に確認をしているという。
メロン幼稚園 平井知子教諭:
園児の置き去りはあり得ないことだと思います。幼稚園は子供たちの命を預かる場所でもあるので、その命を大切に守るということが必要だと思います。
この幼稚園では、事件前から何重にも確認を行っている。
また県内の別の幼稚園を取材したが、給食やおやつの時間には人数と個数を必ず確認するため、園児の姿がないことに気づくタイミングは何度もあるという。
国に義務化を提言 「置き去り防止装置」とは
2021年にも福岡県で、同じように子供が送迎バスに取り残され死亡する事故が起きた。痛ましい事件を繰り返さないために、構造的な問題として再発策止策を提言する人がいる。
病児保育や待機児童の問題などに取り組み、テレビドラマのモデルにもなった認定NPO法人フローレンスの会長、駒崎弘樹さんだ。
9月12日、駒崎会長は立憲民主党が国会内で開いたヒアリングに招かれ、国の担当者にこう要望した。
認定NPO法人フローレンス 駒崎弘樹会長:
園バスの運営事業者に対して、置き去り防止装置の設置を義務化していただければ。
各省庁の担当者は、義務化を含めて幅広く対応すると答えるにとどめ、設置費用についても全額公費負担は難しいとの考えを示した。
駒崎さんが要望した「置き去り防止装置」とは、韓国で義務化されたものだ。2018年7月に同様の置き去り事故が発生し、韓国では約3カ月後の10月には装置の義務化に踏み切っている。
その装置は「スリーピング・チャイルド・チェック・システム」と呼ばれるもの。送迎を終えたドライバーが鍵を抜くと、バスの後方にあるブザーが鳴る。
ブザーを止めるには、ドライバーがバスの後ろまで行って、3分以内にボタンを押さなければならないという仕組みだ。
この装置なら、運転手は必ずバスの中を確認することになる。
国は10月中に対策案を取りまとめるとしているが、二度と同じ事件が繰り返されないよう様々な意見を聞き、対応してほしい。
(石川テレビ)