エリザベス女王が亡くなった。
96歳だった。
彼女が愛したとされるスコットランドのバルモラル城で8日午後、家族に見守られ旅立った。
母親の故エリザベス皇太后が100歳を超えていたこともあり、女王も同じような年齢まで生きるのではないかという期待もなかった訳ではない。しかし、70年以上連れ添った夫君のエジンバラ公が昨年亡くなり、やはり、相当力を落としていたのだろうと推測する。
ダイアナ妃の非業の死、皇太子はじめとする子供達のスキャンダル、最近ではヘンリー王子とメーガン夫人の反旗を、機智とユーモア、優しさで乗り越え、彼女は70年に亘る在位を終えた。
早くも注目される新国王チャールズ三世の今後の“振る舞い”
“君臨すれども統治せず”を地で行った女王の人気は凄まじいものがあった。
第二次大戦後の激動の時代に国家統合の象徴として彼女が果たした役割は、この上なく大きかったとしか言いようがない。

そこで気になるのは後を継いだチャールズ三世がエリザベス女王の残した穴を埋められるかである。

これを言い出すのは早いかもしれないのだが、既に先行きを懸念する声も出ている。
チャールズ国王は例えば地球環境問題や農業問題等に彼自身の明確な考えを持っていて、それを打ち出すことを余りためらわない。時の政権が、彼の意に染まない政策を実行しようとしても、憲政上、黙って裁可する以外の選択肢は国王には無いのだが、例えば、週に一度、首相による情勢報告を受ける際に“意見表明”をして影響を与えようとするのではないか等という懸念があるのだ。
チャールズ国王も既に73歳、やり過ぎて、政治に介入しようとしたと受け取られるようなことをするとは実際には考えにくく、こうした懸念は杞憂に終わる筈だが、父親のエジンバラ公に似てか強い自我を持つとされるだけに、新国王の今後の振る舞いが早くも注目されているのだ。
エリザベス女王は最期の地にスコットランドのバルモラル城を選んだ
もう一つ気になるのは正式名称を“連合王国”とするイギリスの将来だ。
スコットランドの自治政府は、独立の可否を問う住民投票の実施をまた求めているのだが、エリザベス女王という連合王国の求心力が無くなった今、この独立の機運が更に高まる可能性が否定できないからだ。

この点に関しては、エリザベス女王が最期の地にスコットランドのバルモラル城を選んだのは意味があるのかもしれない。女王は普段の居城であるイングランドのウインザー城やバッキンガム宮殿に戻ることなく、彼の地で亡くなった。考え過ぎかもしれないが、最後まで女王の流儀で、さりげなく、自身の願いを示したのかもしれない。
正式発表は未だ不明だが、現地の報道に寄れば、女王の遺体は9日にロンドンのバッキンガム宮殿に戻り、その後、ウェストミンスター宮殿内に安置され4日間に亘って国民の弔問を受ける。そして、国葬はウェストミンスター寺院で二週間以内に執り行われるという。一部報道では17日前後とも伝えられている。埋葬地はウインザー城内になる。
戴冠式はかなり先になるのだろう。チャールズ国王は王室のスリム化・近代化にも熱心に取り組むと見られている。戴冠式もエリザベス女王の時に比べ、幾分簡素化されても不思議ではない。
皇太子には故ダイアナ妃の面影を残すウイリアム王子が就く。そして、同じ面影を残すジョージ王子が続く。国民の多くはこの継承には愛着を感じ続けることになると思われる。
【執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎】