今、備えない防災という考え方が広がっている。身の回りにあるモノやサービスを非常時に役立てることができる「フェーズフリー(局面をなくす)」だ。日常生活で使えて災害時にも活躍する、注目のフェーズフリーを体験した。

見つけられる?インテリアになじむ防災グッズ

モダンなインテリアでまとめられたおしゃれな一室。壁には絵画、ソファの上にはふかふかのクッション、テーブルの上にはお菓子にペットボトル飲料、紙コップ、ティッシュ、ペンといった日用品が置かれている。

この部屋の中に防災グッズがあるというのだが…。

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吉原アナウンサーが部屋の中を歩き回るが、何も見つけることができない。見兼ねたディレクターがヒントを出した。

ディレクター:
さっき触ってましたよ

吉原功兼アナウンサー:
触ってた?何も触ってないよ…あ、触ったぞこれ。あれ?ただのクッションじゃない。何だろう、すごくもこもこしたものが…なるほど!これ寝袋なんですね

違和感なく部屋になじんでいた、カーキ色のクッション。ファスナーを開けて広げると、成人男性がすっぽり包まれるサイズの寝袋になった。株式会社ドリームの「SONAENO クッション型多機能寝袋」(1万2800円)だ。

このような防災グッズに取り入れられているのが、「フェーズフリー(局面をなくす)」という新しい考え方。一体どういうものなのか、言葉の生みの親に聞いた。

フェーズフリー協会 佐藤唯行代表理事:
これまでの“備える”防災に対して、“備えない防災”とよく言われます。普段の私たちの暮らしを豊かにしているものが、非常時に私たちの生活や命を支えてくれる、という考え方がフェーズフリーなんですね。備えなきゃっていうより、もう備わっている。こう、解決していくような

普段から便利に使えるものが災害時にも役立つ、これがフェーズフリーという考え方。スーパーマーケットでも、徐々に広がりを見せているようで…。

イオン大阪ドームシティ店 荒木隆行課長:
“日常のストック”を“非日常の備え”に。また最近の非常食は、通常の食卓でもおいしく時短で作れるとして、日常から活用方法を工夫されています

イオンでは、8月から防災のコーナーを拡大していて、普段から食べられる防災食は人気が高いそうだ。

ぬれた紙にも書けるペン、賞味期限3年の梅干し

先ほどの部屋に戻り、フェーズフリーグッズ探しを続ける吉原アナウンサー。今度は机の上の日用品を確認してみる。

吉原功兼アナウンサー:
何の変哲もないボールペンですね。これはフェーズフリーグッズではございません

ディレクター:
フェーズフリーグッズです!

吉原功兼アナウンサー:
これが!?

吉原アナウンサーが手に取ったのは、三菱鉛筆(uni)の「加圧ボールペン パワータンク」(166円)。ペン先で空気が専用インクを押し出すことで、ぬれた紙にも書ける仕組みの「加圧式ボールペン」だ。

吉原功兼アナウンサー:
すごい技術!水害などで紙がぬれたとしてもメモを書けるんですね

サンナップの「デザイン紙コップ メジャーメント150ml (50個入り295円)は、計量カップとしても使える紙コップで、日本製紙クレシアの「ティッシュペーパー スコッティ ウエルネス5箱」(394円)は、箱を使って8種類のエクササイズができるという。

いずれもフェーズフリーに力を入れている、オフィス向けの商品を展開するアスクルで買ったものだ。

また、通常は半年ほどの賞味期限を3年まで伸ばした“保存食”になる梅干しは、株式会社バンブーカットの「備え梅」(4粒入り2160円)。おしゃれなデザインで手土産にもおすすめしているそうだ。

さらに、ディレクターが「これもです」と差し出したのは、取材中にずっと持っていた大きなバッグ。災害時に水を入れることができる「heart bridge バッグにもバケツにもなる超撥水バッグ」(3278円)だ。

バッグの中にペットボトルの水を注いでみると…。

吉原功兼アナウンサー:
うわ~、もれてない!ええ…マジックみたい

そして、吉原アナウンサーが最後まで見つけられなかった“フェーズフリー”が、壁にかけられた小さな絵画「アートトワレ」(1760円)。中にビニール袋と凝固剤が入っていて、便器に装着して使える「簡易トイレ」になる。

普段から飾れるおしゃれなデザインにすることで、有事の際の「どこにあるか分からない」といった悩みを解決できる、フェーズフリーなアイテムだ。

最近はやりのキャンプも、フェーズフリーなアクティビティ。電気もガスも通っていないところで楽しむことができていれば、ライフラインが寸断されたときも焦らず対処することができる。

スポーツで防災を楽しく学ぶ

このフェーズフリーという考え方、グッズなどに限った話ではない。フェーズフリーで“楽しい防災”を実現している新たな取り組みがあると聞き取材した。

障害物の上で台車を押したり、救援物資に見立てた箱を運搬したり…。こちらは「防災」と「スポーツ」を組み合わせた「防災スポーツ」だ。 

シンク 篠田大輔代表:
災害時の被災地の状況や被災者の声をヒアリングして、それをスポーツ競技として落とし込めるものにしている

篠田代表が阪神淡路大震災で被災した自らの経験をもとに発案し、2018年から普及活動を続けている「防災スポーツ」。「いつもの習慣が、もしもの力になる」と生き抜く力を養うことが目標。

社会課題の解決にスポーツを活用した取り組みとして、スポーツ庁長官賞を受賞するなど、国も注目する取り組みだ。

シンク 篠田大輔代表:
スポーツとして体で覚えていったものを、もしもの時にすぐ行動に移せれば

スポーツと融合させることで、いざというとき行動に移せる力になる“フェーズフリー”な取り組みだ。兵庫県明石市でも…。

「人間くるまレース」「土のうリレー」に挑戦

吉原功兼アナウンサー:
みなさん何をされてるんですか?

明石青年会議所 地域の防災ヒーロー創造 内藤慧委員長:
これから行う「Bスポーツ」の準備をしております。防災の「B」で「Bスポーツ」です

明石市の青年会議所が8月から始めた「Bスポーツ」。地元住民向けの運動会を開催し、競技で獲得したポイントを縁日で使えるようにするなど、「楽しみながら防災を学べる」ことを意識している。

参加した人たちに話を聞くと…。

小学2年生:
ほんまに地震になったら、そういう感じにすぐに逃げれるようになろうって思った

家族連れ:
座学というか、教科書だけやと難しいと思うんで。実際に起きた時にどうしようっていう話もできると思うので、本当にいいきっかけ

明石青年会議所 成田收彌理事長:
自治体や国が助けてくれるのを待つだけっていうのも、本当は良くないんだろうなと思っていて。スポーツの感覚で楽しくやって、結果的に有事の際に“体が覚えている”といった状況を作れたらいいなと

地震に備えたものだけでなく、水害や火災を想定したものなど、現在は6つの競技があるそう。吉原アナウンサーは「人間くるまレース」に挑戦。火災での避難を想定して、丸くつないだ段ボールの中を四つんばいで進む競技だ。

吉原功兼アナウンサー:
疲れるー!こういう動きしたことないんで、意外と腹筋使ったり。火事場って視界が悪くなっていると思うけど、段ボールの中も前が見えなくて視界が悪いので、災害をイメージできる

続いて、2人以上で土のうを1分間運び続ける「土のうリレー」。吉原アナウンサーは中学3年生とペアを組むことに。10キロ~25キロまで様々な重さの土のうを運び、三角コーンの間でリレーを行う。

用意された土のう1つを残して制限時間が終了。

ペアを組んだ​中学3年生:
人と協力することも大切なので、スポーツって協力してやることが多いから。災害が起きたときにどう動いたらいいかを考えることができました

スポーツとの融合だからこそ、防災の知識だけでなく協力することの大切さを学ぶことができる。そして、災害時にどう動くかをスポーツに落とし込むことで、もしもの時の一歩につなげる。「楽しい防災」もまた、フェーズフリーな取り組みだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月1日放送)