長崎出身の車いすバスケットボールの選手といえば、パラリンピックの東京大会に出場し、男子の銀メダル獲得に貢献した鳥海連志選手が有名だが、女子の世界でも2024年のパリや2028年のロサンゼルスを有望視されている選手がいる。

5月にタイで開かれたアジア大会でA代表デビューを果たした、江口侑里選手(22)だ。彼女の現在の姿を取材した。

左半身にまひ 武器は高さとシュート

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
ブレーキの焦げる匂いがしたり、もちろん普通のバスケも迫力あるが(車いすバスケは)また違う迫力があって、そこが面白い

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江口さんの障害の程度は「中程度」で、左片(=左半身)まひがあるが、女子の選手としては珍しくボールを右手のみの片手で扱う。体幹もあり、座面の高い車いすを扱って手を伸ばし、シュートを放つ際の打点は2m5cm。車いすバスケの世界では圧倒的な高さだ。

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
1番の武器は、高さとシュートだと思っています

2mを超える打点の選手は日本にほとんどおらず、高さを生かせるゴールに近い場所でのシュートやリバウンドを期待されている。

一般社員として仕事をしながら練習に励む

幼い頃から体を動かすことが大好きだった江口さん。まひはありつつ、小学3年生から高校まで健常者のクラブや部活動でプレーした。

長崎女子商業高校時代の恩師の教えが今も心に残っている。

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
先生は常にプラス思考で考えてくれている。「片手の方がいろんな体勢でいろんなことできるじゃん」と。高校が1番良い出会いでした

長崎女子商業高校時代の恩師からの言葉
長崎女子商業高校時代の恩師からの言葉

そして高校2年の冬、当時通っていた福祉施設で車いすバスケと出会った。江口さんは2021年4月からトヨタレンタリース長崎で正社員として働いている。アスリート雇用で「競技の練習が仕事」というパラアスリートも多い中、江口さんはあえて一般社員として仕事をする道を選んだ。

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
左片まひがあり、左足もまひがあるので、ずっと座りっぱなしだと足が硬くなって歩き方も変わってきちゃう。日常生活の中で動いて、車いすバスケじゃなくて歩いたり走ったり、歩くだけでも違うと思うので

代表の強化指定を受け、江口さんは自作の弁当をスマホで記録用に撮影するなど、食生活への意識も少しずつ変わり始めている。

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
アプリで入れるものがあるので、それ用に撮っている

――自作弁当に「アスリート飯」という要素はありますか?

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
いや、無いです。基本自炊をしないんですが最近し始めたので、食事はできるものは自分でして、徐々に徐々にという感じです

仕事のあと、江口さんは自分で車を運転し練習場所に向かう。運転はリラックスできるひとときだ。

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
想像ですけど、代表から下りても自分がやれると思うところまでは、ずっとやっているんだろうなと思うスポーツ

――東京オリンピックで鳥海選手のプレーは見ましたか?

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
見ました。次元が違う。あれだけスピードもあってバスケ車も使いこなすし、シュート率もある。バスケ車を使いこなせるようにならなくても、私なりのやり方でやればいいと思っています

「海外の選手と戦える選手になりたい」

平日は「SEAWEST」というチームで練習をしている江口さん。

高さという武器はあっても、車いすバスケの競技歴はまだわずか5年ほど。車いすバスケ女子日本代表のアシスタントコーチを務める西田聡さんのもとで、「まだまだ苦手」だと話す車いすを扱うチェアスキルなどの底上げを図っている。

車いすバスケ女子日本代表 西田聡アシスタントコーチ
車いすバスケ女子日本代表 西田聡アシスタントコーチ

女子の車いすバスケは東京大会では6位。江口さんは2024年のパリ、そして2028年のロサンゼルス五輪でメダル取るための主力とも期待されている。

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
リングの近くまで行かないといけない時に自分の力じゃまだ行けない。周りの人に助けてもらいながらシュートまで行けている。もう少し自分でシュートまで行けるようになれば、他の人がもっといろんなことができる。強化指定に選ばれたばかりなので、パラリンピックに出ることも目標ではありますし、その中で海外の選手と戦える選手になりたいというのが1番の目標

――そこは2024年?2028年でしょうか?

車いすバスケットボール女子日本代表 江口侑里選手:
2024年で!

はにかみながら、そう答えてくれた江口選手。あどけなさも残る長崎市出身のパラアスリートにこれからも注目だ。

(テレビ長崎)