種がなくて皮が薄く、とても甘い、真紅のブドウがある。2021年から出荷が始まったばかりの新品種、その名も「神紅(しんく)」だ。
開発したのは、「デラウェア」で有名な島根県。「デラウェア」や「シャインマスカット」に続く、第3のブランドとなるか。その取り組みを取材した。
シャインマスカットを超える甘さ “いいとこ取り”の新品種
ブドウの房が表面を覆いつくしたタルトに、ブドウがぎっしり詰まったドームケーキ。松江市の洋菓子店に並ぶ、期間限定のスイーツだ。ケーキを彩る紅いブドウは、新品種「神紅」。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/700mw/img_f7a1778d88793d36d15e13b0afa9c05c569534.jpg)
パティスリーガレット・武田竜一さん:
神紅はすごく高価なフルーツだが、たくさんのお客にたくさん満足いただけるように、ふんだんに使ってケーキを仕上げました
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/d/700mw/img_4de39f494a3438019747acb4efd68368359379.jpg)
嶋村采音アナウンサー:
驚くほどの甘みです。ケーキの美味しさを引き立ててくれています
この新品種を開発したのは、県の農業技術センターだ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/4/700mw/img_f4aec72f1ad38164e6a08d275ade0ea9526573.jpg)
ーーたくさんなってますね
島根県農業技術センター研究員・片寄志帆さん:
こちらが、“神々の国の紅いぶどう”、神紅です
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/4/700mw/img_64bbb5ea8f0081864b6444d28d10eced442500.jpg)
神紅は、山梨県で開発された鮮やかな紅色が特徴のブドウ「ベニバラード」と、種が無く皮が薄い「シャインマスカット」をかけ合わせて作られた。まさに美味しいところ取りをした、新品種なのだ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/700mw/img_6a8a0623ad19989b6592d61217c5e92a358953.jpg)
島根県農業技術センター研究員・片寄志帆さん:
神紅の特有の紅色を出す技術が難しくて、今でも苦労しています。デラウェアとシャインマスカットに次ぐような赤色の品種として、全国的にも有名になっていけたらと思う
激化するブドウの“トレンド争い”
全国的なブドウの収穫量は、この5年間で急増したシャインマスカットがダントツ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/9/700mw/img_592ed5aff43437db7134eceaeae7db6a392347.jpg)
一方、島根県が誇る「デラウェア」は2021年、「ピオーネ」に2位の座を明け渡して3位になった。このトレンド争いに新たな品種で挑もうと、島根県が全国に先駆けて交配に成功したのが神紅なのだ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/a/700mw/img_3a8976ea98e5f6b7807148f0edc06753568344.jpg)
島根県農業技術センター研究員・片寄志帆さん:
神紅は20度以上が基準になっていて、高いものだと25度とか26度になっていて、すごく高い糖度になっています。そこも魅力の1つです
島根県のシャインマスカットの基準糖度は18度。神紅はそれを超える甘さだ。
その品質の高さから、東京の百貨店では、1房1万7000円で販売されるものも出た。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/700mw/img_69af834c4da669644000c99fdcd80d3b403267.jpg)
東京の「日比谷しまね館」では、神紅の販売イベントが開かれ、都会地に向けた積極的なPRが展開された。しかし来場者からは、「神紅?知らないです」の声も。知名度はまだまだ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/9/700mw/img_f96b4dfceaf441d9b2b1dc1d16eb466a531508.jpg)
一方、松江市のホテルでは、島根ぶどうを使ったスイーツイベントが開かれた。地元でも新品種を知ってもらおうと、神紅を使ったケーキが並んだ。
品質守るため生産者限定…一方で栽培農家の増加とPRが急務
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/700mw/img_bbbd0cd64374bc187bef22cc849c4235501961.jpg)
2022年で、出荷2年目を迎える神紅。品質を守るために生産者を限定していることから、県内の栽培農家はわずか40軒あまりだ。9月下旬までの出荷量は約6トンで、全国へ打って出るには、栽培農家の増加とPRが急務となっている。
そんな中、心強い“神紅応援団”の一員、出雲市の和菓子店では…。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/2/700mw/img_32fb2cf27644ba2263963a6c29a38167501576.jpg)
出荷1年目の2021年から、神紅を1粒まるごと包み込んだ大福を販売。神紅に可能性を感じていると言う。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/700mw/img_7de60b5993ca90e6ad4ab41185690f18464773.jpg)
坂根屋・坂根壮一郎さん:
大福自体は、最初はたとえ売れなくても、食べていただいたお客様にはおいしいって高い評価をいただけるのは確信している。作り続けていくうちに広くみなさんに広まっていくのでは
島根の新たなブドウブランドの確立。神々しい紅い輝きとその甘さで、消費者を魅了する神紅の力に期待が寄せられている。
(TSKさんいん中央テレビ)