2022年度から高校の家庭科で金融教育の授業が始まるなど、「お金」について学ぶ機会が増えつつある。そんな中、8月28日に広島・廿日市市のショッピングモールでユニークなイベントが行われた。
売るも買うも“小学生だけ”のキッズフリマ 出店者の小学3年生に密着
使わなくなったものを持ち合って販売するフリーマーケット。取材したイベント「キッズフリマ」に店を出すのは、すべて小学生。一方、買う側もすべて小学生だ。
しかし、お買い物ごっこというわけではない。

キッズフリマを運営するハニシングセールスチーム・河野熙喜さん:
買うのも売るのも本物のお金でやり取りします。小学生ごろから少しずつお金について考える機会が増えると思いますので、フリーマーケットを通してお金の価値や物の価値を体験してもらうイベントです

キッズフリマは、お金について子どもたちが向き合うきっかけになればと2006年に始まった。今では全国で行われ、広島県西部では初開催である。
イズミ ゆめタウン廿日市・三浦健司 支配人:
地域に根差したお店作りをする中で、こういう学びの場を提供していきたいと思っています。8月最後の日曜日なので夏の思い出にもなれば

今回のキッズフリマに出店する小学生に密着した。小学3年生の片野ことなさん。学校から持ち帰ったパンフレットを、「こういうのがあるよ」と母親に喜んで見せたという。

ことなさん:
子どもだけで本物のお金を使うのは初めてだから、これやってみたいな、おもしろそうって思いました

キッズフリマに出品するために親子で使わなくなったおもちゃを探し、見つかった数はなんと100点以上。中には思い入れのあるおもちゃもある。箱いっぱいの消しゴム。これは、ことなさんが数を覚えるための数あそびに使っていたそう。

商品に値段をつけるのも、物の価値を考えるお金の勉強だ。ことなさん、おもちゃのアクセサリーはすべて30円と値付けしたのだが…。お母さんが「値下げ交渉をされるかもしれないよ」とアドバイス。ことなさんは「50円にしたら?」と少し高めの値段に設定。さあ、この値段で売れるかな?

取材者に売上目標を聞かれ、「えっと…」と返答に困ることなさん。そこへ、ついお母さんの本音が…「出店料が300円だから、それだけはほしいかな」
ことなさん:
じゃあ、全部で800円くらいほしいと思います

お釣りを間違えないかな? お金の受け渡しにドキドキ
さあ、売上目標も決まったところで、イベント当日。キッズフリマには、午前の部だけで19人の小学生店長が出店した。大人が手伝ってくれるのは開店準備まで。フリマが始まると、会場には小学生だけしか入ることができない。

ことなさんも開店準備が完了。店の名前は「こっちゃんすとあ」だ。

ことなさん:
いっぱい買ってもらえるようにがんばります

午前11時、キッズフリマがスタート。お客の小学生は会場に入りきれず、入場制限を行うほど大盛況。

ことなさんの店にもお客が来たが、そのまま立ち去ってしまった。「いらっしゃいませ」の声に元気がなくなりかけたとき、2人の女の子が店の前に立ち止まった。興味を持ったのは、パッチンブレス。

小学生のお客:
これ、ください

ことなさん:
これですか?50円です
本物のお金で子ども同士の受け渡し、ドキドキするよね?お釣りを間違えずに渡せるかな?100円玉を受け取って…

ことなさん:
50円のお返しです。はい、どうぞ!ありがとうございました!
2階から様子を見ていたお母さんは「1個も売れずに泣いて帰るかなと思っていたので、良かったです」と、ほっとした様子。
自分で収支を計算…売上目標達成「楽しかった!またやりたい」
商品が売れた後は、何がいくらで売れたのかを「収支計算シート」に書き込む。最終的な売上から支出の出店料を引き、利益がいくら出たのか計算するのだ。

ことなさんのお店はというと、最初の商品が売れてからは休む暇もないくらい次々と商品が売れていった。収支計算シートへの書き込みが間に合わないほどである。

「売上目標800円」と言っていたが、この売れ行きは目標をはるかに超えているのでは…?ここで、運営スタッフからイベント終了の合図。1時間のフリーマーケットが終了した。買い物をした小学生も、お気に入りの商品を見つけて大満足なようだ。

買い物をした小学生:
たくさん買っちゃいました。お店の人が小学生だったのでびっくりしました

この小学生の母親は「普段は見ない姿でした。子どもたちで計算して、すごく考えて買っているんだろうなと、見ていて楽しかったです」と話す。
イベントを終え、ことなさんはお母さんと一緒に売れた商品とお金を数えてみた。

ことなさん:
売上は2960円。商品がいっぱい売れて、お客さんもいっぱい来た。楽しかった。また、やりたいです

ことなさんのお母さん:
値段をつける時は「難しいね」って2人で言いながらやりましたが、娘にとっていい勉強になったと思います
本物のお金で物を売り買いする貴重な体験をした子どもたち。楽しみながらも、お金の価値や大切さを考えるきっかけになったかな。
(テレビ新広島)