上司と部下で行う「1対1の面談」の、質と効率を高める支援ツールとは。

上司と部下の対話効率化 

伊藤忠商事のとある部署。コロナ禍で減った上司と部下のコミュニケーションの機会を増やそうと、月に1度、1対1の面談「1on1」を実施している。

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このコミュニケーションを支援しているのが、クラウドシステム「Kakeai」。部下は、あらかじめ相談したい内容や上司に期待する対応を選択して面談を行う。

この日、部下の土屋さんの要望は「今後のキャリアプランについて一緒に考えて欲しい」というもの。それに対し上司の片渕さんは、土屋さんの話を引き出したり、自分の経験を交えたりしながら話を進めていた。

伊藤忠商事 食料カンパニー・片渕雅文さん:
海外に土屋が行くというところに意味があるような仕事をつくるというのは、海外に向けたキャリアを考えた時にすごく大事だなと思っている。

このとき話した内容を書き込むと、2人の画面上でも共有、保存されるため、毎回の面談内容を後で振り返ることもできる。

そして、Kakeaiの大きな特徴は、面談を行った後、部下が上司との面談を評価する機能。面談の満足度を「すっきり度」で表し、上司側にはどの部下が満足度をどのように付けたかは知らされない。

この評価と年代や会社の状態など、さまざまなアルゴリズムを元に、AIが上司の面談を評価する。「丸」が大きいほど評価が高いことを表していて、上司は面談における客観的な評価を得ることができる。

伊藤忠商事 人事総務部・浅井万由子さん:
上司から部下への関わり方の調整だとか、上司が1on1の質を今後向上させていく上でも参考となる指標になる。

このKakeaiは、実は社長の本田英貴さんが会社員時代の“苦い経験”から開発に至ったという。

Kakeai・本田英貴社長:
360度評価という部下が上司を評価するものがあって、無記名のコメントに「あなたには誰もついて行きたくないって知ってます?」とあった。
うまくできていると思っているけど違うのかもしれないとか、逆に自信をもって普段通りにやっていいんだなということを、上司が早めに気づいてコミュニケーションを変えていく材料。これを渡しておくことが、コミュニケーションを良くする上でとても大事。

現在、伊藤忠商事のほかにもドコモや富士通、旭化成など大手企業で取り入れられているこのシステム。今後は相談の対象を広げる機能も検討しているという。

Kakeai・本田英貴社長:
何か相談をしたいとした時に、それは必ずしも上司が一番いい相手じゃないケースというのもあるわけですね。例えば、少し遠くの部署の先輩や同期、場合によっては会社を超えて何か相談したい。適切な人と適切なタイミングで話ができるサービスの進化を考えているところです。

カギは上司のスキル

三田友梨佳キャスター:
「キャスター」取締役CROの石倉秀明さんに聞きます。上司と部下の1対1の面談というと、いわゆる評価面談が主流でしたが、1on1の面談はそれとは随分と違うようですね。

「キャスター」取締役CRO・石倉秀明さん:
1on1という手段はここ数年、マネジメントをする人にとって主流になってきた取り組みで、その効果を高めるために今回のような支援ツールやサービスは増えています。

三田キャスター:
なぜ、1on1の取り組みはここまで広がっているのでしょうか?

「キャスター」取締役CRO・石倉秀明さん:
背景には2つあります。

1つは評価サイクルを短くする必要が大きくなったこと。
これまでは目標を決めて半年、1年単位で評価をしてきましたが、ビジネスの変化のスピードが早くなり、半年や1年では評価サイクルとして長くなってしまった。また半年に1回の振り返りしかないと、途中でどんな取り組みをしたか、課題は何かなどを明確に思い出せないこともあり、どうしても曖昧なフィードバックになってしまいます。だからこそリアルタイムに良かったことを共有したり、やった仕事をフィードバックする場が広がってきました。

もう1つは、個人の働き方やキャリア観が多様になってきているので、個人の価値観やキャリアをどうしたいかなどを聞いておき、それに合わせて仕事の担当を変えるなど、一人一人に合わせた細やかなマネジメントが必要になっていることがあります。

1on1というのは上司と部下、2人でやることですが、組織の最小単位は2人なのでこの関係性を高めていくのは組織全体の関係性を良くしていくことにつながります。

三田キャスター:
1on1の効果を高めるためには、どんなことがポイントになりますか?

「キャスター」取締役CRO・石倉秀明さん:
うまく活用するには、部下の話を引き出す上司のスキルが必要になります。
上司のスキルがなければ、1on1でいつもの仕事の話をするだけになったり、そもそも部下が本音で話せなかったら本来の1on1の意味を見出せなくなってしまう。

ただでさえ、マネジメントのスキルは定義がないし、明確化もされていない。だからこそ今回のような支援ツールを使って上司の1on1スキルを可視化し、コーチング効果を高めることは非常に意味があります。

今後は1on1もそうですし、上司がPDCA(Plan・計画、Do・実行、Check・評価、Action・改善)を回す支援をするサービスが増えていくのではないかと思います。

三田キャスター:
コミュニケーションの場を積極的に設けていても、上司による一方的な場となっていたら対話ではありません。1on1が目的化するのではなくて、その先のキャリアのために有意義な時間となるためにも、こうしたサービスが力になってくれそうです。

(「Live News α」8月31日放送)