「日本は官民合わせて、今後3年間で、総額300億ドル(約4兆1000億円)規模の資金の投入を行います」

岸田首相は、8月28日、日本とアフリカの協力を話し合う、アフリカ開発会議=TICAD(ティカッド)に、オンラインで参加。
今後3年間で、日本円で約4兆1000億円をアフリカに投資すると表明しました。

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なぜいま「アフリカ」への投資なのか。
国内からも賛否の声が上がる中、現地アフリカでは、「日本」の支援が「中国」によるものと“勘違い”されているという声も。
政府の狙い、そして、日本のメリットとはいったいなんなのでしょうか?

なぜ「今」なのか アフリカへの巨額の投資

岸田首相が表明したアフリカへの約4兆1000億の投資。
気になる内訳は、現状のところ詳細は言及されていません。
「官民」という発言があったものの、その割合や、何に使われるかも分からない状態です。

過去には、2013年に3.2兆円(政府開発援助(ODA):約1.4兆円、民間投資:約1.8兆円)の投資を表明。
アフリカビジネスパートナーズ代表の梅本優香里氏によると、「投資金は全てが税金ではなく、無償の資金供与も含むが、円借款(貸し付け)が大半」ということでした。

投資金の全てが「税金」ではないものの、国内の問題が山積している中で、「今」アフリカに約4兆円もの投資を行うメリットはあるのでしょうか?
アフリカ事情に詳しい国際政治学者の六辻彰二氏はこう話します。

国際政治学者 六辻彰二氏:
ひとことで言えば、「ある」と言っていいと思います。
アフリカというと「貧困」というイメージが強いと思うのですけれども、10年くらい前から、アフリカに入るお金は、「援助・支援」より「投資」の方が増えているのです。
世界の注目度が高まっていて、他の国が進出している中で、日本だけいかないとなると、その分乗り遅れるということになりますし、そこから得られるリターンもそれなりに期待はできますので。

アフリカの「魅力」とは?“投資すべき”理由

最後のフロンティアとも言われるアフリカ。
人口の推計を見てみると、日本は2020年に約1億2000万人だったのが、30年後の2050年には約1億人に減少すると出ているのに対し、アフリカは2050年には約24億8500万人、世界の4人に1人がアフリカの人になるという推計データが出ています。

現在の平均年齢を見ても、日本が48.0歳なのに対して、アフリカは18.6歳と若年層で構成されています。
これも長い目で見たときは非常に魅力的な点です。

世界の合計特殊出生率(2020年)、世界の女性が一生のうちに生む子供の指標を見ても、日本が1.33であることに対して、アフリカは3倍以上の4.36。
2021年に経済同友会は、「日本は縮小する国内市場を補うために、海外に成長の源泉を求めていかなくてはならない」と指摘も。

いち早くアフリカへの投資を行っていた豊田通商は、今年初めてアフリカでの売り上げが1兆円を達成。自動車需要のピークはこれからということで、さらに膨らむ可能性もあります。
豊田通商はアフリカ全ての国に拠点を持っており、自動車以外のヘルスケア事業(医薬品)なども好調だといいます。

エネルギー資源についても、モザンビークには日本が1年に輸入する天然ガス量の15年分が埋蔵しているガス田があるとされ、三井物産が投資・開発しています。
アフリカビジネスパートナーズ代表の梅本優香里氏は、この開発に乗り遅れると、日本だけ燃料価格が高騰したままの恐れもあると指摘します。

アフリカは今後、経済的にも資源のパートナーとしても重要になってくるのでしょうか?

国際政治学者 六辻彰二氏:
今まで関係が薄かっただけに、伸びしろと言いますかこれからまだ伸びる余地というのは、お互いにあるわけです。
まだ日本が手をつけていなかった部分、あるいはアフリカで開発が進んでいない部分でもお互いにニーズがあるわけですから、うまくすれば関係性は発展することができるんだろうと思います。

4兆円で何が得られるのか、「説明不足」という指摘には…

国際政治学者 六辻彰二氏:
おっしゃるとおり、日本政府はこのようなお金を出すにあたり、どういう内訳でどういう目的でということを、もう少し丁寧に説明すべきだろうと思います。
一方で「投資」ですので、どれだけリターンがあるかということに関して言うと、正直に申し上げると「確実」なことは申し上げられないと思います。
3年前の2019年に日本政府は200億ドルの投資をアフリカにするといい、3年間で200億ドル分投資はできたと、そこを強調するんですけども、ではそれでどれだけの利益が日本に返ってきたのか?というところに関しては、どこからも説明が来ないというのは残念なところでして。
リターンが期待はされるけれども、実際どの程度のものなのかと言うことは、政府の方にもう少し説明していただく必要があるかと思います。

アフリカでの「日本」の存在感の薄さ

岸田首相が出席したアフリカ開発会議は、1993年から日本が主導で行っています。
しかし、ケニアの大学で国際関係を研究するマチャリア・ムネネ教授は、アフリカでの日本の存在感をこう話します。

ケニア・米国国際大学 マチャリア・ムネネ教授:
日本は、ケニアに様々な支援をしていますが、広報活動が下手なので、知られていません。
以前、日本が道路の改修工事を行いましたが、ケニアの人は中国がやってくれたと言うでしょう。日本は中国に、認知度の争いで負けてしまっています。

認知度の低さから、「日本」の行った投資が「中国」が行ったと勘違いされているというのです。

それを裏付けるものとして、ガーナの調査機関が行った「他国・機関による自国への経済・政治的影響は?」という調査において、“ポジティブ”な国として中国やアメリカ、国連機関などが上位に食い込む中、設問の中に「日本」という選択肢すらありませんでした。

投資“成功”の鍵は?日本の立場

アフリカに巨額のお金を投じる日本、投資の“成功”の鍵はどこにあるのでしょうか?

国際政治学者 六辻彰二氏:
ポイントはいくつもあると思いますけれども、ひとつには根本的なところで、政府が“必要性”というのを、日本の皆さんにもう少し「丁寧」に伝えていただくということと、できれば多くの方にアフリカというものの意識を少しだけでも頭の中に入れていただけると、今後日本が「まだ成長する余地のある土地なんだ」という意識を持っていただけるだけで、政府にとってアシストになるのかなと思います。

(めざまし8 「わかるまで解説」より8月31日放送)