8月に岩手・陸前高田市で、3年ぶりに伝統の七夕まつりが開かれた。
東日本大震災、そして新型コロナウイルスによる2年連続の中止。この逆境に負けず街を彩った山車を追った。
鎮魂の思いを込め…3年ぶり伝統の祭りに多くの人
8月7日、陸前高田市で3年ぶりに開かれた「うごく七夕まつり」。亡くなった人への鎮魂の思いを込めた伝統の祭りに、多くの人が訪れた。

陸前高田市民:
1年に1回の楽しみなので、すごくうれしい。大石が1番だと思います
7つの地区ごとに山車が参加する中、市民から高い評価を得ていたのが「大石七夕祭組」だ。

この祭組の会長・斉藤正彦さん(47)は、2021年、2020年とコロナ禍で祭りが中止となった中、形を変えてでも続けることに強い思いを持ってきた。

2021年、公民館で自主的に山車をお披露目した大石七夕祭組。祭りがなくなっても、祭りばやしを奏でていたのは理由があった。

大石七夕祭組会長・斉藤正彦さん:
ご先祖さまをお迎えするのに、「コロナでできない」となると申し訳ない。このくらいやれば、「ここが大石だ」と思って、帰ってこられると思う

「亡くなった人たちが帰る場所を失ってはいけない」
祭り当日の朝、斉藤さんは開催できなかった2年分の思いを込めて、山車の準備に汗を流していた。

子どものころから親しんできた祭りでもあり、出発前のお清めにも気持ちが入る。
復興に歩む地域の絆を支えた山車
街に江戸時代から続くといわれる「うごく七夕まつり」。歴史を受け継いできた山車は、約1時間をかけて街を練り歩く。

街の中心部にある商業施設に美しく彩られた山車が続々と到着すると、おはやしに誘われるように多くの人が訪れていた。
陸前高田市民:
楽しみというか、生きがいになっている。夏が来たなという感じがする

陸前高田市民:
感無量だね。亡くなった人たちもいるし、みんなの分も見ておきたいと思って
震災以降、歩みを止めずに続いてきたうごく七夕まつり。かつては、12の地区から参加していた山車も、津波でほとんどが流された。

被害を免れた大石七夕祭組のものを含めた3台の山車と、新たに作り直された山車が、復興に歩む地域の絆を支えてきた。
震災に負けることなく続いてきた祭りが、2021年、2020年と途絶えていた陸前高田市。
3年ぶりの2022年。斉藤さんは、祭りを開催できなかった2年分の思いと震災の記憶を重ね合わせながら、街に太鼓の音を力強く響かせていた。

大石七夕祭組会長・斉藤正彦さん:
亡くなった人たちへの目印として、やらなくてはいけない役目だと思う。だから、できる限り続けたいと思うし、どこに出しても恥ずかしくない、いい祭りだと思っている

朝から夜まで街を彩った色とりどりの山車。震災とコロナ禍の苦難に耐えた力強い祭りばやしが、陸前高田市を熱く盛り上げた1日だった。
(岩手めんこいテレビ)