福岡市の「海の中道大橋」で、幼い3人のきょうだいが命を奪われた事故から、2022年で16年。しかし福岡県内では依然として、飲酒運転容疑の逮捕者が相次いでいる。
後を絶たない福岡の飲酒運転。根絶を目指し、街中で目を光らせるのが福岡県警交通機動隊だ。飲酒運転の摘発、その最前線に密着した。

フラフラ走行の車…「飲んでない」「わかんない」とぼける男
深夜2時。覆面パトカーが目撃した光景は…。
捜査員:
えらいヨレとうでしょ?はい、遅いし、レンタカー
車線の左側ギリギリを走行したかと思えば、緩やかなカーブでは大きく膨らむ、1台の車。

不自然に車線をまたいで走行している。

捜査員(スピーカー):
運転手さん、左に寄せて止まって下さい。左に寄せて止まって下さい

スピーカーで声をかけて、捜査員がパトカーを降りる。
捜査員:
こんばんは、運転手さん。だいぶフラフラしよるですけど、大丈夫ですか?
男:
大丈夫です、大丈夫です
捜査員:
目もちょっと赤いんですけど
男:
大丈夫です
捜査員:
ちょっとお酒の確認をさせて下さい。ここに息を強くフーッと吹いてもらっていいですか?はい。しっかり吹いて下さい
男:
え?

捜査員:
これ、ピーって、ここゲージが溜まっていきます
車を運転していた男は、スースーと軽く息を吹く。
捜査員:
スーとかじゃなくて、フーッと普通に吹いてもらえれば溜まります。運転手さん、ちゃんとして下さいね
運転していたのは、30代の男。何度もごまかし続け、検知器に息を吹きかけようとしない。
捜査員:
臭いあるでしょ?無線入れときますね。
(無線連絡)
福岡627号車から福岡626号車。なかなか息を吹こうとしません。証拠隠滅の恐れもありますので、現場までお願いします。どうぞ
捜査員:
運転手さん、お酒、飲まれています?
男:
飲んでないですよ

捜査員:
飲んでないです?若干、お酒の臭いもします。どうですか?
男:
いや、どうですかって言われても…
運転手の男は、県外から来た観光客だった。
捜査員:
運転手さんちょっと、いまからですね、正式にアルコールを測ります

男:
はい
捜査員:
ちょっと、さっきみたいに吹くとですね。全く測れません
男:
うん、いや分かんないですよ
捜査員:
息を大きく吸ってしっかりくわえて…、強く、しっかりくわえてください

捜査員:
これが最後です。はい、しっかり吹いて。
…最後、やめたじゃないですか。何か、やましいことがあるけん吹けないんじゃないです?
男:
携帯なくしちゃいました
捜査員:
携帯なくした?え、携帯なくした?それ、全然、我々が言いよることと違うでしょ。我々は、お酒の話をしよるの
事の重大さに気づいていないのか、男は真剣に向き合おうとしない。ここで出てきたのが、別のアルコール測定器だ。

捜査員:
普通に吹けば膨らむと思います
男:
普通に吹く?
捜査員:
もうずっと続けて下さい。もうやめなくていいので
男:
そうですね、結構、辛いやつなんですよね
捜査員:
辛くないです
約15分後、ようやく測定できるほどの呼気が採取された。呼気から検出されたのは、何と基準値の4倍近いアルコール。

捜査員:
飲酒運転になります
男:
はい、ということは
捜査員:
検挙です。酒気帯び運転として午前2時37分、現行犯逮捕します

男は居酒屋で、友人と焼酎を飲んだという。
逮捕後、男は手錠で遊び始めた。最後まで反省の色は見られなかった。
一体、なぜ飲酒後、ハンドルを握ってしまうのか…

配送業の男を現行犯逮捕 免許取り消しで職も失い…
別の日、交通機動隊が向かったのは、久留米市内の住宅街。
軽乗用車が、交差点を減速せずに曲がったため、停止を求めた。

ところが、運転していた男が一度、逃走を図った。不審に思った捜査員が疑ったのは、飲酒運転だ。

捜査員:
今から口の中のアルコールを排除しますので、ちょっと一旦降りて、うがいをしてもらいます
うがいは、口の中から余分な物をなくし、呼気のアルコールを正確に計測するためだ。
捜査員:
よろしくお願いします。何て書いてありますかね
男:
0.50ですね
捜査員:
0.50です
車を運転していたのは、20代の男。男の呼気からは、基準値の3倍を超えるアルコールが検出された。

捜査員:
なぜ飲みましたかっていう質問なんですけど、「飲みたかった」ですかね
男:
疲れてたから

捜査員:
職業を教えてもらえますか?
男:
配送業
あろうことか男は、酒を販売する会社に勤務し、配送業務を担当していた。

捜査員:
きょうは何時頃から何時まで飲まれました?
男:
多分7時ぐらいから9時とか10時ぐらい…。うーん、ちょっと、そこまでよく覚えていない
捜査員:
時間がたっているのは、何でですか
男:
車の中で寝てました
捜査員:
運転手さん、寝ようと思って、いったん寝たん?
男:
いったん、寝ました
捜査員:
で、大丈夫と思ったわけ?
男:
そうですね
捜査員:
いま考えてみたらどうね
男:
酔っぱらってたのかなと
捜査員:
そん時は、大丈夫と思った?
男:
うん
捜査員:
今回ですね、酒気帯び運転ということで午前1時54分、現行犯逮捕します

男は、2年間の免許取り消し処分。配送業の仕事も失うことになる。
取り調べに対し男は「申し訳ないことをした」と供述したという。
飲酒運転の撲滅目指すも過去最多に…カギ握る“周囲の目”
人生を狂わせる飲酒運転。警察は「認識の甘さを断ち切ることが撲滅につながる」と指摘する。

福岡県警交通機動隊・松本哲弘 副隊長:
お酒を飲まれると正常な判断ができなくなって、「代行運転が捕まらない」「少し車で休憩したからもういいだろう」などと身勝手な理由で、車を運転する人が多い。認識が甘いと思う。
検挙されてからのペナルティが非常に重たいというのをしっかり認識してもらいたい
2022年、福岡県内の月別の飲酒運転の逮捕者を見ると、4月5月と右肩上がりに逮捕者の数は増え、福岡コロナ警報が解除された6月は56人と、統計が残る中で過去最多を記録した。
県内の飲酒運転は、目標の0にはほど遠い状況だ。
一方で、「酒を飲んだ人が車に乗り込んだ」などと飲酒運転を目撃した場合など、県民から警察に通報があった件数も右肩上がりに増えている。
実際に通報に合わせた検挙件数も増えていて、県民の飲酒撲滅に向けた意識が高くなっているとも言えるかもしれない。
ドライバーの意識も大事だが、周囲の目も大事。飲酒してもハンドルを握らせない環境作りが必要だ。
(テレビ西日本)