私がお伝えしたいのは、コロナで廃墟と化したテーマパークです。

トルコの首都・アンカラで3年前に開園したテーマパークが、わずか8カ月で閉園に追い込まれました。

コロナの影響で再開の目処も立たず、恐竜のアトラクションもボロボロの状態に。その上、市長は投資された1100億円の回収は不可能だと明らかにしたんです。

ポイントはこちら。「今後の活用方法は市民のアンケートで決定へ」注目です。

【注目ポイント・記者解説】

閉園したのはアンカラにあった「アンカパーク」で、前の市長の肝いりで建設が決まったものでした。「アンカ」とはトルコ語で鳳凰の意味があるほか、首都「アンカラ」の名前にもかけています。

前市長は税金8億100万ドル(日本円で約1100億円)を投じて建設し、多くの人が訪れる夢のテーマパークを目指していました。一方で、当初からイスタンブールと違い観光客が少ない首都・アンカラに巨大なテーマーパークを作ること自体に疑問の声が上がっていたのも事実です。

「アンカパーク」は2019年3月21日に開園。これも3月31日にアンカラ市長選を控え、前市長は自身の実績としてアピールするために急きょ、選挙の直前に開園させたのでした。しかし、市長選では景気低迷への有権者の不満が大きく、巨大テーマパークの開園もむなしく与党系の当時の市長は惨敗。野党系の市長が誕生することになります。

そのため、巨大テーマパークは大きな後ろ盾を失ったばかりか、コンセプトが曖昧との指摘もあるなど集客力もなく、わずか8カ月で閉園。その後は新型コロナウイルスの感染拡大もあり、再開することもできずに2020年、運営会社からの支払いも滞り、2020年5月に公園自体が閉鎖されました。

一方で運営会社と市側との対立から公園は放置され続け、テーマパークの象徴だった恐竜のモニュメントは背中が丸見えになるなどボロボロな状態に。放置された2年ほどの間にテーマパークは窃盗に何回も入られるなど、完全に廃墟と化しました。

市側が裁判によってテーマパークを取り戻せたのは2022年7月でした。

2年ぶりに中に入って撮影された映像が報道されると、想像以上の廃墟の状況に市民は衝撃を受けました。現市長は会見を開き、「投資資金の回収は不可能」「これを作らなければ橋が6本、架けられた」と話すなど、前市長を批判。

その上で、廃墟と化したアンカパークをどうするのか、「市民にアンケートをした上で決定する」と発表しました。市民に状況を見てもらうため、現在、土日に廃墟と化した園内をめぐるバスツアーが組まれています。

市民へのアンケートの途中経過では「公園を含む緑地」というのが1位となっています。しかし、巨額な損失のほか、施設の撤去費用もどのくらいかかるのか見通せず、市民の不満は収まりそうにありません。

(FNNイスタンブール支局 加藤崇)

加藤崇
加藤崇