まだまだ保守的な女性活躍の本家、アメリカ

上下両院に占める女性議員の割合はまだ2割
上下両院に占める女性議員の割合はまだ2割
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例えばハーバード大学を卒業した女性のお給料は同大卒の男性よりも3割低く、働く女性は全体の半分近くなのにトップを占める女性の割合はたった5%という“グラス・シーリング”、能力が同じでも男性の方が出世のスピードが早いから“グラス・エレベーター”なる言葉も生まれ、上院下院に占める女性議員の割合は2割以下、Lean Inによれば子供を持つ女性の43%が仕事を辞める、としたら?

全く女性活躍どころじゃない!と思いますよね。だけどこんな状況でも不思議なくらいアメリカの女性はいろんな所で自分らしく活き活きとしているのです。

それってどうして?
実は秘密があるのです。
女性活躍一つ目の秘密は、自分らしい仕事・生き方という活躍指標です。

国連が“仕事”を定義した?!

次世代女子が求めるのはロール・モデル。政策のスペシャリスト、アニー・バード博士から話を聞く娘とその友人たち
次世代女子が求めるのはロール・モデル。政策のスペシャリスト、アニー・バード博士から話を聞く娘とその友人たち

2015年に国連が仕事を定義しました。
それによると仕事には4つの種類があります。
1)有償の仕事:お金をもらえる仕事 
2)無償の仕事:家事・育児・介護など 
3)社会をよくする仕事:社会貢献活動など
4)自分をよりよくする仕事:趣味や学びなど

仕事って、社会との関わり方、生き方そのもの。社会と関わる、社会で活躍する、生きるって実はいろんな形があるのです。

秘策1:「女性はこうあるべき」を取り外す

女性活躍は長い歴史を見ればまだ始まったばかり。だからこそ長い歴史で叩き込まれた「女性はこうあるべき」を取り外し、いろんな形で社会と関わって生きていく自分らしさを見つけていくことが女性活躍の第一歩です。

自分らしさを追求する過程で従来の「べき」を離れ自由に生きる女性が増えれば、もっと数字にも反映されて行くでしょう。実際2018年の選挙ではいまだかつて最高数の女性が下院議員として当選しています。女性立候補者の数も過去最高。女性だって政治家になりたければなれる。なりたいという気持ちも女性に投票するのも「べき」を離れて自由に考えられるからこそ。そうしていろんなロールモデルが生まれる。

ゆっくりではあるけど変化を感じ、希望がもてるから悲壮感より活き活き感が強いのです。

女性活躍推進法の立役者、女性活躍推進・少子化相(当時)森まさこ氏に女性活躍の現状について取材する私(右)
女性活躍推進法の立役者、女性活躍推進・少子化相(当時)森まさこ氏に女性活躍の現状について取材する私(右)

専業主婦でいいやと思っていた私はアメリカ版女性活躍の洗礼を受け、いろんな自分の可能性に気がつきました。そして無理だと思っていたことも、女性起業家支援ローンなどの女性活躍制度を利用し女性活躍の風潮に押され可能にし、ライフステージに合わせた自分らしい社会との関わり方を見つけて行ったのです。

でもそこには女性だからこそのジレンマもありました。ジレンマに負けちゃうと活躍できなくなっちゃいます。

だからこのジレンマ攻略法が女性活躍の第二の秘密です。

秘策2:We are all in it togetherという横のつながり

女性起業家の実情を聞くアメリカ上院の公聴会
女性起業家の実情を聞くアメリカ上院の公聴会

「べき」は女性の中だけではなく、社会にも潜んでいます。

良妻賢母に大和撫子、女子力、男尊女卑などの「べき」。男女の給与格差の存在、子育て優先期間にはぶら下がりと言われ、キャリア優先の時は罪悪感を感じ、女性というだけで評価されず、男性がどんどん成功するのを目の当たりにする。そんな「あたり前」。

女性である限り同じジレンマを経験することになります。だからこそ女性同士は戦ったり批判し合うのではなく、違いを乗り越え共感力を発揮し助け合うネットワークを築くことが大切。多くの女性がつながれば、それだけ声が大きくなる。声はパワー。そうしていろんな社会の「べき」が少しずつ変わっていきジレンマに負けない女性が増え、数字にも表れてくるのです。

女性の病気だからと研究費が集まらないジレンマを持つ女性が繋がって大きく広がった乳がん撲滅のピンクリボン運動
女性の病気だからと研究費が集まらないジレンマを持つ女性が繋がって大きく広がった乳がん撲滅のピンクリボン運動

私にも子供のお迎えネットワーク、ママ同士が交代で子供を預かることで一息つけるプレイデートネットワークや女子大生ベビーシッターネットワークがあったし、仕事ではアート業界で活躍する女性のネットワーク、アートテーブルに参加し、月一回の女子会は専業主婦やバリキャリにパートタイマーにシングルマザーの友人たちとの大切な時間でした。このネットワークがなければ私なりの活躍はありえませんでした。

女性活躍って女性の生き方を自由に、そして多様化する素敵な社会です。
一人一人がそれぞれに活躍するためにいろんな「べき」とジレンマ解消を目指す私たち女性は運命共同体。
We are all in it together.
だから繋がりたい、よね!

「女性活躍時代のジレンマ」をすべて見る!

執筆:ボーク重子

ICF米国国際コーチング協会認定ライフコーチ、アートコンサルタント。福島県出身、米・ワシントンDC在住。1998年に渡米後、出産。子育てをしながら2004年にアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年にはワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)と共に、「ワシントンの美しい25人」の一人として紹介される。現在は全米・日本各地で子育て、キャリア構築、ワークライフバランスについて講演会やワークショップを開催中。著書に『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)などがある。

 
ボーク重子
ボーク重子

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。アートコンサルタント。
福島県生まれ。30歳目前に単独渡英し、美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学、現代美術史の修士号を取得する。1998年に渡米、結婚し娘を出産する。非認知能力育児に出会い、研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生」に選ばれる。子育てと同時に自身のライフワークであるアート業界のキャリアも構築、2004年にはアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年、アートを通じての社会貢献を評価され「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。
現在は、「非認知能力育成のパイオニア」として知られ、140名のBYBS非認知能力育児コーチを抱えるコーチング会社の代表を務め、全米・日本各地で子育てや自分育てに関するコーチングを展開中。大人向けの非認知能力の講座が予約待ち6ヶ月となるなど、好評を博している。著書は『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など多数。