ロシアによるウクライナ侵攻や、北朝鮮による弾道ミサイル発射など、世界の安全保障が大きく変化する中、日本でもその議論が活発になってきている。被爆地「ナガサキ」で、離島防衛を担う最前線の部隊と、安全保障をめぐる動きについて取材した。

2024年 長崎の駐屯地に“日本版の海兵隊”…3つ目の連隊を配備

長崎県佐世保市の陸上自衛隊 相浦(あいのうら)駐屯地に、2つの連隊が編成されている「水陸機動団」。

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2024年には、大村市の竹松駐屯地にも、3つ目の連隊が配備される。“日本版の海兵隊”とも呼ばれ、離島奪還を想定した、陸上自衛隊のエリート部隊だ。

“日本版海兵隊”ともよばれる水陸機動団
“日本版海兵隊”ともよばれる水陸機動団
“日本版海兵隊”ともよばれる水陸機動団
“日本版海兵隊”ともよばれる水陸機動団

水陸機動団の3つ目の連隊の誘致をめぐっては、経済波及効果への期待から、佐世保市や五島市なども手を挙げていたが、防衛省は2022年2月、大村市への配備を決めた。

600人編成で経済波及効果は約20億円
600人編成で経済波及効果は約20億円

大村市は、竹松駐屯地に600人の部隊が編成された場合、家族も含め約1,200人の人口増加を見込んでいて、経済波及効果を約20億円と試算している。

オスプレイ使用想定で波紋…市民団体「戦争につながりかねない」

オスプレイ
オスプレイ

水陸機動団を乗せて作戦を展開する輸送機には、「オスプレイ」が想定されている。7月、大村市の海上自衛隊大村航空基地と、佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で、初めて訓練が行われた。

オスプレイは現在、千葉県の木更津に9機が暫定配備されている。
防衛省は南西諸島に近い佐賀空港に配備したい考えだが、地元との調整が難航している上、木更津での暫定配備期限まで3年を切っている状況だ。

自衛隊を30年にわたって取材している軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之さんは、大村への水陸機動団の配備で、オスプレイが長崎の上空を飛行する機会が増えると指摘している。

軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之さん:
(水陸機動団は)移動手段としてヘリを使うことになる。海上自衛隊の大村航空基地や、もしかすると長崎空港も、自衛隊が今後使う回数はどかんと増えると思う。今後、海上自衛隊の大村航空基地や長崎空港にオスプレイがやってくる可能性は高くなると思うんですね。そうなった場合、どこまで地元が許容するかという話になってくる

アメリカをはじめ、2016年には沖縄でもオスプレイの事故が起こっていて、今回の飛行訓練の際には抗議の声も上がった。

大村地区労働組合会議・岩崎等 議長:
何か事故が起きる可能性がある。市民総意のような言い方をしているが、市民総意ではない。私たちは戦争反対の立場を貫く

市民団体は東南アジアの緊張を高めるとして、水陸機動団の配備が戦争につながりかねないと訴えている。

変わる安全保障…専門家「“核共有論”は悪影響」

2022年に入り、世界の安全保障環境は、ますます厳しさを増している。

北朝鮮は2022年6月までに、過去最多となる26発の弾道ミサイルの発射実験を行った。また、ロシアによるウクライナ侵攻は終わりを見通せず、犠牲となった兵士は1万人を超えている上、プーチン大統領は核兵器の使用も示唆している。

こうした世界情勢から、日本国内でも自民党が、防衛費をGDP国内総生産比2%にまで増やすことや、「専守防衛」のもとでいわゆる「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換え、保有する議論を始めている。

さらには、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの「非核三原則」を見直して、アメリカの核兵器を日本国内で共有する「核共有論」を唱える政治家も出てきている状況だ。

核軍縮などを研究している長崎大学の西田充教授は、アメリカの核兵器を国内に置くNATO型の「核共有論」に、否定的な見方を示す。

長崎大学・西田充 教授:
抑止の目的でもなくて、使い道がない上に配備すると、逆に敵の先制攻撃を受けてしまう。長崎という被爆地の観点からしても、核軍縮に逆行するというのは当然。そういう意味で総合的に考えたら、安全保障上の面でも意味がないし、むしろ悪影響だし、少なくともNATO型であれば意味がない

日本政府団の一員として、NPT再検討会議(核拡散防止条約再検討会議)が開かれたアメリカにも現地入りした西田教授。今後の安全保障や核軍縮のあり方について、議論を深めたいとしている。

長崎大学・西田充 教授:
NPTは、世界の核の秩序を基盤づける重要な国際的な枠組みなので、この枠組みが揺らぐと非常に危険なことになります

世界の安全保障を取り巻く環境が変わる中、国内でもさまざまな議論が生まれている。

被爆県・ナガサキでも、核兵器や平和をめぐる議論がどう進んでいくのか、冷静に見つめる必要がありそうだ。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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