中国で3回目の隔離生活を経験することになった。2021年2月は山東省・青島、同年11月は遼寧省・大連、そして今回も大連だ。ゼロコロナ政策を貫く中国の管理は日本とは比較にならないほど厳しいが、それでもかなりの変化を感じた。日本からの渡航時の様子、当局の対応から見る中国の実情だ。
隔離期間短縮 渡航する中国人が増加
その違いは成田空港ですぐにわかった。中国人の多さである。以前の渡航者は現地に赴任する日本人がほとんどで数も少なかった。日中双方で隔離が必要だったからだ。中国入りの条件で言えば、以前は3~4週間必要だった隔離が、今は基本的には1週間。日本での隔離はなくなり、双方を行き来しやすい環境になった。おかげで搭乗手続きや手荷物検査には長蛇の列ができ、出発は30分程度遅れた。

さらに感じるのは、日本を好きな中国人が根強くいるという点だ。日中関係は決して良くないが、空港にいた中国人はほとんどが旅行者。隔離があっても日本に来たかったということだろう。北京にいる中国人と話すと、日本人の謙虚さや奥ゆかしさを気に入り、「礼儀をわきまえない自国の人を恥じる」という方も増えたように感じる。時代とともに中国人は確実に変わってきている。
中国からに限らず、日本に来る外国人の数が増えたことは、経済的にプラスであることは間違いない。それは中国政府も同様だ。経済の減速傾向が進む中、ゼロコロナ政策を堅持しながらも人の往来を戻そうとしているようだ。前述した通り、隔離期間が最大4週間から1週間に短縮されているのはその証左だ。
秋の党大会を控え、国内の安定を最優先する習近平政権にとって、国民の生活に対する不満も決して無視できない。「コロナ禍で海外旅行に行けない中国人のストレスは相当大きい」(中国筋)との声があるように、庶民が旅行に行きやすくすることは中国の国益にも資するのだろう。

空港でのチェックにも変化
大連空港でのチェック、検査もだいぶ変化した。
到着後、全身防護服の職員が対応するのは同じだったが、座席を立つ前に自身の名前が書かれたカードと検査キットを渡され、首からぶらさげてから空港に降り立つのは初めての経験だった。以前は、携帯電話に登録した日本での検査結果など細かいチェックが行われていたが、手続きは以前より簡単になった。

ただ、機内では検査キットを受け取れない人もいて、体制が完全に整備されているとは言い難い。降りてからのPCR検査も、以前は鼻の奥にまで綿棒を突っ込まれたが、今回は口の中で、かなり楽だった。検査場所の撮影がNGだったのは変わらないが、時間は前回よりかなり短縮された気がする。

行き来する中国人が増えることで出国の手続きに時間はかかったが、現地では当局もそれなりに効率化を追求しているのだろう。
ゼロコロナ政策の堅持と検査の迅速化、経済発展、国民の不満への配慮。強気な外交姿勢とは裏腹に、当局は国内に山積する課題への対応に苦労しているようである。
【執筆:FNN北京支局長 山崎文博】