7月15日から大雨に見舞われた宮城県で、1人の命を救う、ある緊迫の救出劇があった。その背景には、勇気あふれる姉と弟の冷静な連携があった。
雨の中見えたのは…川に転落し流れてくる車 中には人が
警察:
ありがとうございます

警察から感謝状を受け取ったのは、宮城県加美町(かみまち)に住む、姉の佐藤真理さんと弟の優さん。佐藤さん姉弟は7月13日の朝、自宅前を流れる名蓋川(なぶたがわ)に、車ごと転落した40代の女性を発見し救助した。

姉・佐藤真理さん:
本当に今回は全てのタイミングがよくて、的確に動けたことが救助の助けになった
1人の命を救った佐藤さん姉弟。その時、何が起きたのか。

当日の朝、出勤しようとした佐藤さんは、水没し身動きが取れなくなっている一台の軽自動車を発見。そこから姉弟2人による、10分間の緊迫の救出劇が始まった。

姉・佐藤真理さん:
出勤しようとして(家を出たら)、車が流れてくるのを確認して。それで中に人がいるのか確認したら人がいたので、急いで110番して
その日は朝から雨が降り、自宅前を流れる名蓋川は増水。周辺の道路も足首まで浸かるほど冠水していた。悪天候の中でも、なんとか出勤しようと家を出た真理さん。ガレージのガラス越しに目に留まったのは、不自然な状態で動いている一台の車だった。
姉・佐藤真理さん:
車が見えて、それで弟に『車が曲がってきたけど大丈夫かな』と言ったら、窓の方から徐々に流されているのが見えたので、急いで回って車の中に人がいるかを確認した
急いで駆け寄ると、車内には女性の姿があった。

姉 佐藤真理さん:
完全にこの草が見えないくらい、ギリギリのこのくらいの水位でしたので…
当時、川の水位は、両脇に生えた草が見えなくなるくらい高かったという。車のドアや窓を開けようと試みるものの、開かなかった。
目の前でみるみる水没「消防車を待っている時間はない」その時とった行動
真理さんたちが、女性を救助したわずか1時間後に撮影した映像を見せてもらうと、流されていた水色の車は、屋根まで完全に水没してしまっていた。一刻も早く女性を救うためにはどうするべきか、判断に迫られた。

姉・佐藤真理さん:
橋のところで車が止まったので、そこからは急いで…このまま消防車を待っているのは時間がないと思ったので
目の前でみるみる水没していく車。しかし佐藤さん姉弟は冷静だった。弟の優さんが向かったのは、自宅脇の倉庫。そこには鉄製のハンマーが…。

実はこのハンマー、祖父が昔、仕事で使っていたもので、長年倉庫の片隅に置かれていたという。優さんはハンマーを手に、女性のもとに走った。
弟・優さん:
大体この辺で車が止まったので、まず助手席を1回で割って、そのあと後部座席もこういう風にガシャンと

ガラスが割れ、圧力が逃げたことで、ドアが開いた。とっさの判断で、女性を無事に救助することができた。
Q.ハンマーが倉庫にあったのは知っていた?
姉・佐藤真理さん:
知らなかったので、とにかく何か…「バールを持ってきて」と多分、私は言ったと思う。バールかハンマー持ってきてみたいな感じで。そうしたら持ってきたのが、とても大きいハンマーだったので、これなら割れるっていう感じで
弟・優さん:
そのときは、一回でうまく割れればという感じで
姉弟による、わずか10分間の緊迫の救出劇。

姉・佐藤真理さん:
本当に奇跡的に全てのタイミングが合って、救出がスムーズにできた。姉弟でちょうど指示出しと役割がうまくフィットして、それがスムーズにいったおかげかなと思います
勇気ある冷静な行動…そして姉と弟だからこその連携が、1人の命を救った。
(仙台放送)