ウクライナ情勢など、世界では日々さまざまなことが起きているが、日本以外の国の立場で世界の物事を考えたことはあるだろうか?
2022年夏、鹿児島の高校生たちが集まり、いろいろな国の立場になって議論を交わした。

テーマは「地雷」 模擬国連大会で高校生たちが議論

2022年7月、鹿児島市の甲南高校で2日間にわたり行われた「模擬国連大会」。参加する高校生たちは各国の国連大使になりきり、その国の立場で議論を展開する。

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話し合うテーマは「地雷」。
現在も50を超える国に地雷が埋められていて、戦争とは関係のない一般市民が被害を受けている。
模擬国連大会の2週間前、甲南高校では参加する高校生たちが準備を進めていた。2年生の外園響希さんと1年生の尾辻はるかさん。今、戦禍に見舞われているウクライナを担当する。

ウクライナ大使役・尾辻はるかさん(甲南高校1年)
ウクライナ大使役・尾辻はるかさん(甲南高校1年)

ウクライナ大使役・外園響希さん(甲南高校2年):
うーん…地雷は(被害を受けるのが)兵士だけじゃない。地雷を埋めた地域にも住む人がいるわけで

ウクライナ大使役・外園響希さん(甲南高校2年)
ウクライナ大使役・外園響希さん(甲南高校2年)

一方で…

ロシア大使役・梶原理緒さん(甲南高校2年)
ロシア大使役・梶原理緒さん(甲南高校2年)

「どういう立場で行くのか難しいね」と悩んでいる2年生の梶原理緒さんと吉村歩乃佳さんは、ロシアの大使役。軍事侵攻を進めるロシアの立場に立って考える、なかなか難しい立場だ。

ロシア大使役・吉村歩乃佳さん(甲南高校2年)
ロシア大使役・吉村歩乃佳さん(甲南高校2年)

生徒たちはそれぞれの国の事情を丹念に調べ、模擬国連でどんな主張を打ち出すのか考え抜いた。

地雷問題解決へ…異なる立場の大使役同士で激しい議論も

大会本番。鹿児島県内4つの高校から、21カ国の国連大使役の生徒が集まった。

模擬国連のゴールは、地雷問題を解決するための決議案を作ること。
しかし、地雷をめぐる各国の立場は大きく異なる。

対人地雷を禁止する「オタワ条約」を批准しているのは、参加している国のうち12カ国で、残る9カ国は地雷の使用や保有を認めている。

(条約未批准)イラン大使役の高校生:
まだ中東は戦争が活発で、他国から迫られたときに地雷がないと…

(条約を批准)フランス大使役の生徒:
最終的な目標が(地雷)ゼロだから、妥協するのが難しい

フランス大使役の生徒の意見に、隣にいたアメリカ大使役(条約批准せず)の生徒も同意した。

中でも、激しいやりとりが交わされたのは、地雷を禁止しているウクライナ側と地雷を必要としているインド側との議論だった。

ウクライナ大使役・外園響希さん(左)とインド大使役・二石修輔さん(右)
ウクライナ大使役・外園響希さん(左)とインド大使役・二石修輔さん(右)

(条約を批准)ウクライナ大使役・外園響希さん:
暴力に対して非暴力で返していかないと、戦争が激しくなるだけ

(条約未批准)インド大使役・二石修輔さん:
でも一方的に侵略され続けるということでしょ

(条約を批准)ウクライナ大使役・外園響希さん:
ウクライナもしょうがないじゃん、自分の国民を守るために…

(条約未批准)インド大使役・二石修輔さん:
結局それは武力で武力を返しているでしょ、ウクライナも。非暴力で話し合うために武力が必要

(条約を批准)ウクライナ大使役・外園響希さん:
それは地雷じゃなきゃだめなの?

丁々発止のやりとりが続いた。

知らない国の実情見つめる機会に

自分の国を守るために地雷が要る。では、民間人の地雷被害をなくすために各国はどこまで歩み寄れるのか。
国防のために地雷を使うと主張するロシアは…

(条約未批准)ロシア大使役・梶原理緒さん:
国境付近だけ、自己防衛のために制限することで地雷による人民の被害を減らすことができるんじゃないか

国境付近に限って地雷の使用を認めてほしいという意見だったが…

(条約を批准)ドイツ大使役の生徒:
(地雷の使用を)認めてくださいとオタワ条約に批准している国に言われても、こちらはダメだと言っているので、ちゃんとした発言ができない

結局、ロシア側のこの提案は可決されなかった。

しかし、ウクライナの大使役から、ひとつの提案が持ち上がった。

(条約を批准)ウクライナ大使役・外園響希さん:
生産の規制や場所の規制を徹底していくのであれば…

これについて、ロシアも…

(条約未批准)ロシア大使役・梶原理緒さん:
それぞれ個人で(生産)したら、自分たちの利益のために地雷をたくさん作ってどんどん広がっていく。その(地雷の)工場自体を国営にする

民間企業も含め、果たしてどれだけ作られているのかすら分からない地雷。この工場を国営にすることで数を把握すれば、その後、地雷を減らしていくこともできるのではないか。 
これが、各国の大使役の高校生たちが導き出した、ひとつの回答だった。

2日間で10時間に及ぶ議論が繰り広げられた模擬国連大会。地雷問題を通して、知らない国の実情を見つめた高校生たちは…

ロシア大使役・梶原理緒さん:
本当の自分の意見とは違う立場の国なので、難しいと思っていました

ウクライナ大使役・外園響希さん:
完全に否定から入るのではなく、そういう意見もあるんだなと、そこからまず入ることが大事だと感じた

様々なことが起き、情報がめまぐるしく更新されていく、今の世界。
こんな時代だからこそ、相手の立場に立って物事を見つめると新しい扉が開けるのかもしれないと、高校生たちの姿に学んだ。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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