自分が何を買ったのかは、箱を開けてからのお楽しみ。売る人も買う人も共に豊かにする新たな消費の形とは。

商品に出会う新たな選択肢

届いてから開けてみるまでどんな商品が入っているか分からない、“謎の箱”の通販「フォーチュンボックス」。

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中には、このボックスを販売する坂内綾花さんが、展示会や全国の生産者をめぐり、選りすぐった加工食品や生活雑貨などの詰め合わせが入っている。

フォーチュンファクトリー・坂内綾花代表:
ありふれたものは売らないとか、7つのルールがありまして、食品であれば味がおいしいもの。「なんだこの味!?」という新体験があるものを入れるようにしています。

今回特別に見せてくれた一品は、刺し身用のごま。

フォーチュンファクトリー・坂内綾花代表:
ごまにしょうゆの味がついていて、わさびもつけなくて大丈夫。「刺し身用のごまってなんだ!?」と思って、実際にどんな味なんだろうって自分も気になるので、そういった体験をお客さまにもしてほしいなと。

人が商品に出会う新たな選択肢として話題となり、これまでにおよそ1万5,000個、1億円以上を売り上げた。

フォーチュンファクトリー・坂内綾花代表:
自分が欲しいものはもう世の中にあると思っていて、検索したらいろいろなものが出てくる。選ぶのに疲れてしまっている方も多い。わたしがキュレーター(選定する人)となって、商品を選んでお届けする。また、新しい方法で面白く思ってくださる方が多いのかなと思う。

この“選ばない消費”は、販路開拓が難しい小規模事業者にとっても、全国の消費者に知ってもらえる機会として期待されている。

静岡・本山製茶 杉本和隆氏:
いろんな販売チャネルを確立、増やしていかないといけない。全国に向けたいろんな食材をお届けできるコンセプトはいいなと。

この日は、静岡県の茶畑を訪れていた坂内さん。
生産者の声をノートに拾い、商品と一緒に現場で取材した開発秘話などを同封している。

フォーチュンファクトリー・坂内綾花代表:
実際に来て、想像以上に大変な場所で作られているんだなって。どんな工程を経て商品にされているのか、お客さまに価値として伝えていきたい。

消費者とメーカーを結ぶプラットホームとして期待される、“学べる通販”そして“選ばない消費”。

フォーチュンファクトリー・坂内綾花代表:
商品を選ぶ基準、1つの指標になっていけば生活が豊かになる。1個しか知らないより、10個食べてた方が「この肉料理に合うよね」とか、「こっちは魚料理に合うよね」とか発展がある。いろんな商品に出会うことは、生活を豊かにすることだと感じている。

リスク回避を好む消費者には不満も

三田友梨佳キャスター:
一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。なんだか買い物が楽しくなる、そんな取り組みのように感じましたが、鈴木さんはどうご覧になっていますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
玉手箱のような、開けたい気持ちになりました。
今回のようなフォーチュンボックス、あるいはミステリーボックスは、アメリカのeコマースで人気を博していて、アマゾンやウォルマートといった大手小売りでもよく見かけることができます。

YouTubeやTikTokでインフルエンサーが箱の中身を紹介するなど、話題を集めています。
謎の箱が消費者の心を惹きつけてやまないのは、それが意外性や驚きをもたらすためです。

人が買い物に求めるのは、単にモノやサービスを手に入れるといった機能的な側面だけでなく、ワクワク感や嬉しさなど情緒的な側面もあるためです。

三田キャスター:
確かに何が入っているのかわからない、というのはワクワクしますね。

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
情緒的な側面をどう満たすかは顧客満足を高める上でも重要です。
なかでも、顧客満足のさらに先を行くカスタマーディライト(CD)=感動を実現するためには、サプライズが大きな役割を果たします。

顧客の期待通りのものを提供することが当たり前になりつつある今、「こんなことまでしてもらえるのか」「次は何をしてくれるのだろう」といった感動を抱かせることは、顧客ロイヤルティーを獲得するうえでも重要です。

最近は買い物のパーソナライズ化も進んでいて、レコメンド=おすすめ機能なども発達していますが、良くも悪くもユーザーの想定内にとどまっていて驚きが得られにくくなっています。

謎の箱はそうした想定を良い意味で超えてくる、そんな商品だといえます。

三田キャスター:
一方で課題をあげるとすると、どういったことがあげられますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
注意すべき点は、消費者のリスク回避傾向が高い場合、むしろ不満が大きくなってしまうことです。消費者の期待をある程度コントロールする必要があります。

アメリカのあるeコマースのサイトでは、こんな注意書きを掲載しています。
「もしあなたがサプライズ好きであれば、このミステリーボックスはあなたのベストチョイスでしょう。しかし、もしあなたがリスクを嫌うなら、この商品はあなた向きではないかもしれません」。

謎の箱はすべての消費者向きではありません。そのため、顧客とのコミュニケーションや関係性構築が、より一層重要になってきます。

三田キャスター:
そういった課題をクリアしたその先には、“あえて選ばない”というのも商品との出会いの新たな選択肢として浸透していくのかもしれません。

(「Live News α」7月20日放送)