下校時間になると子供たちの笑い声で賑わう場所がある。その名も「まほうのだがしや」。子供たちが笑顔になる「魔法」の謎に迫った。

「誰もが気軽に集える場所を」オカン5人の挑戦
2022年7月7日、石川県金沢市に「まほうのだがしやチロル堂 金澤店」がオープンした。

子供たちは店に入ると、すぐに1回100円でガチャガチャを回す。

カプセルに入っているのは1枚から3枚の「チロル」。この店のみで使える独自の通貨だ。

チロルは1枚100円。子供たちはこのチロルを使って駄菓子やカレー、ポテトなどを食べることができる。

まほうのだがしやチロル堂金澤店 萩尾桃子さん:
あす友達連れてくるねーとか。弟に買って帰るんだっていう声を聞くと、本当にやってよかったと思う。

この店を開いたのは、自らを「オカン集団」と名乗る5人の女性。2歳から小学生の子供を持つ母親たちだ。

発起人 矢口樹梨さん:
駄菓子買ってふらふらっと入ってきて、お菓子食べてもいいし、勉強できてもいいし。

活動のきっかけは、コロナ禍で孤独に陥る親子が増えていると感じたことだった。
矢口樹梨さん:
虐待が多くなっていたり、亡くなっちゃう子が多くなったりしている社会現象がある。じゃあ、そこに対して私たちは何ができるか。小さなことからやっていこうと。

大人が子供を支える…多くの協力を得て開店
誰もが集える場所を作りたい。思案していたオカンたちが出会った店がある。それは奈良県にある「まほうのだがしやチロル堂」。

矢口樹梨さん:
「面白い駄菓子屋さん」で売ってるんです。だから魔法の駄菓子屋。
一体何が魔法なのか。ここでは、大人が買った弁当の売り上げの一部が子供のチロル代として
寄付される仕組み。子供をサポートする場所だが、こども食堂とはうたっていない。

矢口さんたちは店に直接交渉し、2号店としてオープンさせてもらうことにした。
オカンたちが店の場所を決めたのはオープンのわずか1カ月前。準備期間は圧倒的に足りなかったが、すでに店には魔法がかかっていた。

手伝いに来た人:
みんなの行動力にすごいなって。私も何か出来たらなと。

庭は人工芝の専門業者が整備していた。これもすべて無償。

人工芝の専門業者:
今はそういう時代なのか、他人の子供に対してそこまで気を使わない。大人たちが子供たちに何かしてあげるっていう姿勢がいいなと思って。

矢口樹梨さん:
こんなに人って優しいんだなって。予想外だったので、今でも不思議です。

大人にとっても魔法 笑顔あふれる場所に
こうしてオープンした「まほうのだがしや」。下校時間になると、店は子供たちで大賑わいだ。

大人がカレーなどのカフェメニューを頼むたびに、1チロルが子供たちに寄付される。

大人が子供を思う気持ちが、魔法となって通貨の価値を変えている。

矢口樹梨さん:
大人にとっても魔法なんですよ。子供たちが「1チロル(100円)で食べられるのー?」って、笑顔を見ていたら嬉しいじゃないですか。大人は「もっとカフェメニューを頼むよ」みたいな。そんな感じになってくれたらいいなと思います。優しさの循環になる、それが理想ですね。

ここは「まほうのだがしや」。おなかが空いていても、空いていなくても…。用事があってもなくても…。誰でもふらっと立ち寄れる場所。

ここではオカンたちがいつでも待っている。
(石川テレビ)