西日本豪雨から4年。愛媛県内の被災地のひとつ、西予市野村町の中心部では今、新しい「まちづくり」が進んでいる。

商店街で文房具店・呉服店・理容店を営む3人

「相撲のまち」の拠点・乙亥会館に50軒以上が軒を連ねる商店街。そして、町並みを二分するように流れる肱川。

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西予市野村町の中心部は、2018年の西日本豪雨で肱川が氾濫、ほとんどの住宅が水につかり、犠牲者が出るなど甚大な被害を受けた。

復興が進む西予市野村町の中心部
復興が進む西予市野村町の中心部

今、この地域では、住民ら主体の新しいまちづくりが進んでいる。

谷本英樹さん:
当初は廃業される方がどれくらい出るんかなという不安はあったんですけど、何軒もなかったから。だいぶ元気になってきたと思うんですけどね

文房具店の佐藤豊さん、呉服店の谷本英樹さん、そして理容店の岡澤志朗さん。3人は野村町の商店街でそれぞれ店を営んでいて、地域の新しいまちづくりに取り組んでいる。

佐藤豊さん:
机上のものなんですけど、町の形がちょっとずつ変わっていくのを見られて、すごく興味深かったです

岡澤志朗さん:
川を何とか安全にできるような方向で物事を考えるように、いろいろ提案はしてるんですけど、意見が通るやつもあれば、通らんやつもある

3人はワークショップを通して「まちづくり」に関わっている。

谷本英樹さん:
小型ポンプで上げる。そこで中継に消防庁舎につなぐ

ワークショップに参加した住民:
開放的な駐車場ができないものか

まちづくりのアイデアを出し合う住民たち。ワークショップは、野村町の「復興まちづくり計画」のひとつで、大学や行政と連携しながら、住民たちが地域の未来像を描く。

川沿いを4つのエリアに分け整備 活気あるまちへ

西日本豪雨の翌年から、これまでに16回開かれていて、新しいまちの設計図ができあがった。

設計図では、野村町の中心部・肱川沿いの空間を大きく4つのエリアに分けて、目的や特長を備えた空間を整備する。

三島橋から肱川の上流に向かって右側に位置するのは「レクリエーションエリア」だ。このエリアでは、多目的なレクリエーション広場と、フットサルや3オン3のコートを備えたスポーツコートが整備される。

佐藤さん・谷本さん・岡澤さんの3人:
エリアを分けた時に、ここに体育施設があったから、こういうものを作ったらいいんじゃないか。「遊びの場」にしたいと。レクリエーションもできるわけなんですけど、避難場所にもなるという形で広い広場に

商店街からも近く、町の内外からの人出が見込めるエリアで、谷本さんらは街なかのにぎわい創出を期待している。

谷本英樹さん:
いろいろなイベントを開催できる。同時に地域の商店街のイベントを加味してタイアップしていけば、人の流れもできるんじゃないかと

まちづくりを専門に研究し、野村町のワークショップの進行役を務める愛媛大学の松村暢彦教授。住民目線のまちづくりの狙いは、将来への希望だという。

愛媛大学社会共創学部 松村暢彦教授:
日頃から、自分たちの町をどうしたいか考えておくこと。実際に行動しておくと、災害からの復旧・復興がいち早くなる。大きな被害があった地域に一番重要なことは、将来に対する希望なんです。その希望を住民自ら与えられることが、最も大きなメリットじゃないかと思います

神社周辺は菜園に 住民が求める「安全第一」

愛媛大学 1年生 三瀬瑞稀さん:
被災した時に見た野村が、私たちがいつも来ていたような雰囲気とは全く別物で。ここ野村なんかな、みたいな

高校生の頃からワークショップに参加
高校生の頃からワークショップに参加

野村出身で愛媛大学生の三瀬瑞稀さんは、高校生の頃からワークショップに参加している。三瀬さんと向かったのは、三嶋神社周辺のエリアだ。

愛媛大学 1年生 三瀬瑞稀さん:
ここは菜園エリアになります。今、ここにはヒマワリが植えられていて

30cmほどの高さに成長したヒマワリは青々と生い茂り、開花の時を待っている。このヒマワリを植えたのは、野村小学校の子どもたち。手作業で穴を掘り、一粒一粒丁寧に植えた。

ヒマワリを植えた小学生:
ヒマワリの畑でみんなと遊びたいです。みんなで協力して植えるから、みんなで最高の遊び場にしたいです

三嶋神社周辺のエリアは、菜園や公園として整備される予定だ。種まきなどの菜園づくりは2021年に野村高校の生徒が始め、今では地域の子どもたちに広がっている。

愛媛大学 1年生 三瀬瑞稀さん:
小学校、中学校の子どもたちと一緒に菜園エリアを一緒に作っていけるのが、すごくうれしい

乙亥会館の対岸の三島地区には、ヘリポートを備えた防災広場が整備される。この三島地区は西日本豪雨で特に被害が甚大で、2人の住民が亡くなった。

今も三島地区で暮らす住民は今回の取材に対し、ワークショップによる住民主体のまちづくりについて、「自宅の敷地に接した公園ができることは、日常生活に直結する大きな出来事で、不安や戸惑いがある」などの意見を寄せている。

三島地区で暮らす住民から寄せられた意見
三島地区で暮らす住民から寄せられた意見

また、「全てに反対しているわけではない」と計画に一定の理解を示しつつ、「事業の原点は『災害』であることを肝に銘じて進めてほしい」などと、安全を第一に考えた復興を求めている。

これまでの暮らしをより良い形で

肱川とともに生きる…。野村町の「復興まちづくり」のテーマのひとつとして盛り込まれている目標だ。

愛媛大学社会共創学部 松村暢彦教授:
河川の氾濫によって尊い命が失われたことは、重く重く受け止めなければいけない。それと同時に、肱川とともに暮らしてきたこれまでの生活の営みも、よりよい形で引き継いでいくと

谷本英樹さん:
子どもと年寄りが一緒になって遊べる場所であり

岡澤志朗さん:
安全に憩えるように

谷本英樹さん:
安心安全やな

愛媛大学 1年生 三瀬瑞稀さん:
災害が起きてしまった川沿いを良い場所にしていったら、ここに被害があったと知っていただけるきっかけになる。すごく良い場所になるんじゃないかと、前向きに思っています

忘れてはいけない「思い」と「場所」を未来に残すために。復興は新たなステージへ進んでいる。

(テレビ愛媛)

テレビ愛媛
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