天皇皇后両陛下は6月20日、東京・台東区で行われた「第78回日本芸術院授賞式」に出席されました。

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芸術分野において、卓越した作品を手がけた人や、大きな業績を残した人に贈られる「日本芸術院賞」。今回の受賞者は5人。このうち、特に優れた業績をあげたとしてあわせて「恩賜賞」が3人に贈られました。

書家の牛窪梧十さん。「時をかける少女」など、SFから純文学まで幅広い創作活動を行ってきた小説家の筒井康隆さん。長年、宮内庁で雅楽の演奏に携わった大窪永夫さんです。

         今回の日本芸術院賞受賞者 前列左から 牛窪さん、筒井さん、大窪さん(以上 恩賜賞もあわせて受賞)            歌舞伎音楽竹本太夫で人間国宝の竹本葵太夫さん(後列左)、箏曲山田流演奏家の萩岡松韻さん(後列右)
         今回の日本芸術院賞受賞者 前列左から 牛窪さん、筒井さん、大窪さん(以上 恩賜賞もあわせて受賞)            歌舞伎音楽竹本太夫で人間国宝の竹本葵太夫さん(後列左)、箏曲山田流演奏家の萩岡松韻さん(後列右)

恩賜賞・日本芸術院賞の受賞者とご懇談

両陛下は受賞者3人から、それぞれの作品などについて説明を受けられました。

牛窪梧十さんの作品は、13世紀の詩人・陸游の漢詩を、3000年前の中国の青銅器に刻まれた古代文字「金文」の書体で書いたものです。

牛窪梧十さんの展示作品「陸游詩」
牛窪梧十さんの展示作品「陸游詩」

作品を書く際に実際に使用した筆をご覧になり・・・

皇后さま:
「筆は、素材は何ですか」
牛窪さん:
「羊毛といいまして、山羊(やぎ)の毛です」
皇后さま:
「柔らかいですか」
牛窪さん:
「すごく柔らかいです」
皇后さま:
「何本も」
牛窪さん:
「字の大きさがちょっと変わると筆の大きさも変えないと書きづらいものですから」    
陛下:
「1本をずいぶん長く…、何年も使えるものですか」
牛窪さん:
「結構大事に使えばかなり長持ちはします」

そして、皇后さまは「とても力強いですね」と感心されたご様子でした。

また、筒井康隆さんが万年筆で書いた短編小説「漫画の行方」の原稿を見た陛下は、「原稿で書かれるのとパソコンだとずいぶん違いますか」皇后さまは「こちらの原稿はいつごろお書きになったのですか」とそれぞれ質問されました。

筒井康隆さんの作品展示
筒井康隆さんの作品展示

恩賜賞・日本学士院賞の受賞者から説明を受けられた両陛下

翌週の6月27日、両陛下は東京・台東区で行われた「日本学士院第112回授賞式」に出席されました。
学術の分野で優れた業績をおさめた研究者に贈られる「日本学士院賞」。9人の受賞者のうち、東京大学・ニューロインテリジェンス国際研究機構の河西春郎特任教授には「恩賜賞」も贈られました。

東京大学・ニューロインテリジェンス国際研究機構 河西春郎特任教授
東京大学・ニューロインテリジェンス国際研究機構 河西春郎特任教授

受賞者を拍手で称えられた両陛下。授賞式後、河西特任教授から大脳の神経細胞をつなぐ「シナプス」の研究内容についてお聞きになりました。じっとしていると考えられていた「シナプス」が筋肉の力で運動する構造であることが明らかになったという説明に…

皇后さま:
「とても興味深い研究でございますね。どういうことで、もともとこの分野に興味を持たれたのですか」
河西特任教授:
「はい、私はやはり神経科学者でございまして、脳を科学的に理解したいということで…」
陛下:
「脳のことは、まだ分からないことがいろいろとあるのですか」
河西特任教授:
「分からないことがほとんどだと思うんですけれども、この記憶素子部分については、きちんと見えるようになってきたことが非常に大きな進歩だと思っております」

両陛下はそれぞれの受賞者のこれまでの努力に敬意を表し、文化芸術のさらなる発展や研究成果が未来につながることを願っていらっしゃいました。

(「皇室ご一家」7月3日放送より)