女性特有のがんの一つ「子宮頸がん」。患者として、娘を持つ母親として、ワクチン接種の重要性を訴えるある女性がいる。
子宮頸がんの原因はウイルス感染で、予防するにはワクチン接種が有効だが、接種後、さまざまな重い症状が報告されたことから、国は積極的に勧めることを一時中止した。約9年を経て2022年春に再開したが、接種に迷いや戸惑いを覚える人も多いようだ。
そんな中、女性が訴える、ワクチンとの向き合い方とは。

「こんなに深刻だとは…」病気を経験して思うこと

高橋景子さん(仮名・38)
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2人の娘を持つ高橋景子さん(仮名)38歳。2022年1月、子宮頸がんと診断された。

高橋景子さん(仮名・38):
まさか自分がと思いました。子宮頸がんはその時は詳しく知らなかったので、レーザーで焼いておしまいかな、ぐらい。こんなに深刻だと思っていませんでした

子宮などを摘出する大きな手術も経験し、今、思うことは…

高橋景子さん(仮名・38):
子どもと一緒に寝られること、こうやって外に出られること、すごく幸せだな、って。国によっては、(子宮頸がんは)希少がんになっている国もあります。日本もどんどんワクチンを打って、こういう病気になる人が減っていけばいい

一方、取材班は長野市にある「中澤ウィメンズライフクリニック」を訪れた。
女子中学生が受けていたのは、いわゆる「子宮頸がんワクチン」だ。原因となるHPV・ヒトパピローマウイルスの感染を予防するもので、2022年4月、中止されていた行政による「勧奨」が再開された。対象は小学6年から高校1年の女子。ワクチンは2種類あり、どちらも6カ月間に3回の接種を終えることが望ましいとされている。

この日、2回目の接種を終えた中学生は…

中学生:
痛かったです。両親が勧めてきたので打とうと。これで子宮頸がんにならないのなら、それが一番

父親:
副作用があるという話も聞いたが、メリット・デメリットを考えて、受けた方がいいと思い、受けさせることに

日本では毎年約2900人が命を落とす… 比較的若い世代に多いがん

そもそも、子宮頸がんとはどんな病気なのか?ワクチンのメリットとデメリットは?子宮頸がんに詳しい医師は「まず正しい知識と理解が重要」と話す。

信州大学医学部 産科婦人科学教室・宮本強 医師:
子宮頸がんは文字通り、子宮の入り口、子宮の頸部にできるがんで、特徴としては非常に若い世代に多い。子宮頸がんの95%くらいがHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染して発症

HPVは、主に性的接触により感染する。存在自体はありふれたもので、女性の多くが「一生に一度は感染する」と言われているほどだ。しかし、ごくまれにがんを発症する。その数は国内で毎年約1万1000人にのぼり、そのうち2900人程が命を落としている。

患者は40代が多く、比較的若い世代で多いがんと言える。冒頭で紹介した高橋さんも、そうした患者の一人だ。

高橋景子さん(仮名・38):
ずっとおりものがおかしいなと思っていたが、そんなに気にするほどではなかった。正月明けから水のようなものがどばっと出ることが続いたので、これはおかしいと思って(受診・検査をした)

「子宮頸がん」とわかった時は既に進行していて、6時間にわたる手術の末、子宮と卵巣を全て摘出した。死を意識せずにはいられなかったと話す。

高橋景子さん(仮名・38):
生命に関わってしまうのではないか、死んでしまうのではないかと怖かった。(夫が)「子宮よりも命の方が大事。これからの子どもたちや、家族の時間の方が大事」と言ってくれたので、(手術を)決意しました

その後、リンパ節に転移がみつかり、放射線と抗がん剤による治療のため、再入院。吐き気や食欲不振に襲われる抗がん剤治療が1カ月続いた。

入院中の写真

今は退院し、経過観察中だ。

高橋景子さん(仮名・38):
約半年間の闘病生活で思ったのは、普通の生活が一番幸せなんだなって。今まで家族と過ごすのは当たり前のことだと、外の空気に触れられることも当たり前だと。入退院して家族と過ごせる幸せや、普通の日常がいかに幸せだったと感じました

患者減らせるとわかっているが…「日本では検診もワクチンも充実せず」

「当たり前の幸せ」を守るのに有効なのが、ワクチン接種だ。WHO=世界保健機構が推奨していて、2006年に欧米で始まり、2020年には110カ国が公的な接種を実施。カナダやイギリス、オーストラリアの接種率は約8割に上る。

しかし、日本では…

信州大学医学部 産科婦人科学教室・宮本強 医師:
ワクチンと検診の充実でだいぶ減らせることが分かっているがんなのに、日本は現在、どちらも充実していない状態。現在も(患者は)増え続けている

日本でも2013年に無料の定期接種が始まったが、国はわずか2カ月で積極的勧奨を中止した。接種後、はれや発熱の他に全身の痛みやしびれなどの重い症状が報告されたためだ。この「中断」により、接種が進まず、患者が増えた。

その後、症状が重いと報告されたケースは「1万人あたり6人」ほどとわかった。リスクは皆無ではないものの、痛みやしびれは接種と因果関係があるとは認められていないとして、安全性・有効性の面から勧奨が再開された。

ワクチン勧奨の“空白世代”キャッチアップ制度も

定期接種のワクチンで5割から7割のがんが防げるとされ、過去、接種できなかった人の救済措置・キャッチアップ制度も設けられている。ただ、中断された経過も影響して、今も接種に迷いやちゅうちょを覚える保護者は多いようだ。

高校1年生の親:
副反応が怖いかなというのはあるけど、女性としてこれから出産もあるので、受けて予防できるんだったら、予防した方がいいのかな

小学6年生の親:
周りの様子を見て、周りが打っていくようであれば打たせてもらおうかなと。どういう副作用が出るかが分からないので、最初から打つという判断はできない

小学6年生の親:
その時にしか打てないものなので、考えてはいますけど。副作用ですかね。どういうふうに出てくるのか、自分で体験していないので、分からないので

信州大学医学部 産科婦人科学教室・宮本強 医師

信州大学医学部 産科婦人科学教室・宮本強 医師:
重篤な副作用というのは数百万回接種に1回という形ですので、何かおかしいなという症状が見られた場合には、早期に医療機関に相談することが大事。安全性もしっかり確認されて再開されることになったので、このあとはどちらかというと安心して受けてほしい

子宮頸がんで苦しまないためには、早期発見も重要だ。宮本医師は接種を受けていてもいなくても、20歳になったら2年に1回の検診を呼びかけている。

高橋景子さん(仮名・38):
どんな治療でも子どもたちの顔を見て頑張ろうと思いました

高橋さんの治療の励みになった2人の娘は今、小学5年生と3年生。長女は2023年、ワクチンの対象年齢になる。子宮頸がんのワクチンを打たせる気持ちはあるのだろうか。

高橋景子さん(仮名・38):
打たせます。自分が子宮頸がんになって、悲しい思いや、つらいこともありました。そういった思いはさせたくない。病気になってしまうと、諦めなくていけないことが出てきてしまうので、そういった思いをさせたくないのでワクチンは、私は打たせます

ワクチン接種には効果とリスクがある。不安や疑問がある場合は、厚労省や県の相談窓口に相談を。今、接種対象の娘を持つ母親が一番、子宮頸がんを発症しやすい年代。娘の接種を考えると同時に、自分の体のこと、検診などを考えてほしい。

(長野放送)

記事 681 長野放送

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