「忍者の里」として知られる滋賀県甲賀市(こうかし)で、これまで存在が分からなかった忍術書が見つかった。

(提供:福島嵩仁さん)
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甲賀市によると、市内には個人蔵など20数点の忍術書があるという。その中で「万川集海(ばんせんしゅうかい)」は、甲賀・伊賀の忍術をまとめた書物で、市の指定⽂化財や⽇本遺産にもなっている。

この忍術書の冒頭には「本書は『間林清陽(かんりんせいよう)』の要点をまとめたものである」と書かれていたのだが、原典と言える書物はこれまで見つかっていなかった。そんな、まさに忍者のように隠れていた「間林清陽」が、甲賀市で新たに見つかったのだ。

“忍者の心得”など48種の記載

発見したのは同市地域おこし協⼒隊メンバーの福島嵩仁さんで、昨年12月3日に葛木区の蔵を調べたところ「間林清陽」と表紙に書かれた書物があったという。

今回見つかったのは「間林清陽」の写本で、大きさは14cm×20cm。40ページの中には、以下のような忍者の心得や忍者が使う道具の作り方などの記載が48種あったという。

・忍び込む時間
子(ね)の時(午後11時から午前1時)というのは、忍び入るにも夜討するにも、人が寝入った最中であるのでよい。子と丑の間に忍び入るのがよい。

・音を立てない方法
忍び⼊る時は、草履、草鞋の裏に真綿を糊で幾重も重ねて、⿐緒をつけて履く。

・忍び込むときの注意
複数名で忍び⼊る時は、⼿を取り合うか、または帯に⽷を付けて、または時々合⾔葉を使
って⼊る。出る時もまた相図が第⼀である。

・小さな音を聞く
⾳を聞くには、⼾尻(扉の付け根や引き⼾の次に来る⼾と接する部分)に⽿を当てて聞くと、物⾳がよく聞こえるものである。

・暗闇での戦い
夜に太⼑で打つ時は、太⼑をかざして、⾃分は⾝を沈めて、腰をすえるとよい。敵を雲す
きに⾒る(薄明りに透かして見る)様にするとよい。

・マキビシの作り方
菱は古い⽵を細く割って、三⾓でも四⾓でも結び、どのように投げても⼀⾓は上になるよ
うに菱を結ぶ。敵が追って出てくる道に撒き捨てておけば、敵は是を踏み⽴てる。

・武術(刀)について
用心が必要なときは、刀は右か枕元に置く。脇差は柄を足の方に向けて、左の方に置く。緊急のときに直に抜き打って斬るためである。

見つかった写本の奥付には「延享五年(1748年)」と書かれおり、また題目に「巻中」とあることから、ほかに上・下巻が存在すると推定している。

学生時代から探し続け、甲賀に移住…飛び上がるほどうれしい

「複数名で忍び入る時は時々合⾔葉を使って⼊る」は、時代劇や漫画で見たことがありそうだが、音を立てないように「草履の裏には真綿を幾重も重ねる」などは知らなかった人も多いだろう。

ところで、存在が分からなかった忍術書をどのようにして見つけることができたのだろうか? また、この忍術書はどうなるのだろうか? 発見者の福島嵩仁さんに聞いてみた。


――見つけるまでの経緯を教えて

僕は去年までの3年間、三重大学の大学院で忍者や忍術の研究をしていました。その時、修士論文のテーマに選んだのが「万川集海」という忍術書でした。その原典が「間林清陽」なので、研究のため、いろんな人に話を聞いたり、いろんな図書館へ行ってみたり、2~3年ぐらい探していました。

それでも見つからず、大学院を出てから忍術書があるのは伊賀とか甲賀だろうということで、甲賀に移住しました。そこで、「昔、整理をしていたらそういうものが出てきたかもしれない」という神社の蔵があるとの情報を聞いて、蔵の中を見せてもらうことになりました。

去年の12月3日、蔵に行ってみると大量の古文書があったのですが、「この辺から探してみようか」と最初に調べたひと塊の中から、いきなり見つかったのです。

(提供:福島嵩仁さん)

――蔵を調べてすぐ見つかったということ?

ちょっとあっけなかったですね。(笑)
 

――発見した時の感想は?

長年探し続けてきたことや、ずっと研究してきた「万川集海」の原典がここにあるということで、ここ数十年で一番飛び上がるほどうれしかったですね。


――見つけた「間林清陽」は今後どうしていく予定?

やるかやらないかは分かりませんが、いくつか考えています。まず1つ目は「間林清陽」の複製を作って展示すること。2つ目は「間林清陽」の中身をわかりやすく読める形にまとめた本を出版すること。最後は、中に書いてある忍者の道具を再現して展示することです。

(画像はイメージ)

今後は時代劇でも、綿のついた草履や竹製のマキビシが登場するようになるのだろうか?

それにしても蔵の中の山のような古書の中から一発で忍術書を見つけたとは驚きだ。もしかしたら福島さんは、探し物を見つける“忍術”が使えるのかもしれない。

記事 4289 プライムオンライン編集部

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