2021年、発覚した大手ジェネリック医薬品メーカーによる不正製造をきっかけに、今、富山をはじめ全国で薬不足が深刻化している。
薬不足を引き起こした医薬品メーカーの不正製造。その背景には、ジェネリック業界内に横たわる問題があった。

ジェネリック業界が急成長で人員不足に…

薬に使うお金はアメリカに次ぐ2位と、薬の消費が多い日本。
医師から処方される薬は、7割から9割が税金と保険料で賄われ、私たちは安く手にすることができる。この制度を支えているのが、開発コストの安いジェネリック医薬品。

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安倍元首相(2014年):
社会保障関係費が、初めて30兆円を突破しました。ジェネリック医薬品の普及を拡大します。毎年1兆円以上増える医療費の適正化を図ります

医療費を抑制するため、国の号令のもと始まったジェネリックの増産。私たちは薬をさらに安く買えるようになった。それとともに拡大したのが、ジェネリック医薬品メーカーの売り上げ。

県内最大手の日医工は、国内の薬がジェネリックに置き換わるとともに急成長を遂げた。2020年度の売り上げは1,900億円と、国内のジェネリック医薬品メーカーでトップの座をつかんだ。製造・販売する薬も、約1,200品目まで拡大した。

そうした矢先に、医薬品メーカーの不正製造が明らかになる。
福井県の小林化工、そして日医工での発覚後、自主回収や行政処分を受けるメーカーが全国で相次ぎ、薬が不足した。

日医工・田村友一社長:
業容の拡大で採用も豊富になる中、社員に対しての教育のスピードが不十分であり、教育の徹底ができなかったこと。私自身残念であり、今から思うと悔しい思いでいっぱい

10年以上にわたって不正製造が続けられていたという日医工。5月、その原因についてあらためて取材を申し込むと、書面で回答があった。

日医工の回答書面から:
ジェネリックの需要が急激に増え、人員不足になっていた。欠品させると、患者に迷惑をかけてしまうという一心で、無理な生産スケジュールを立てていたということも一因

収益とれない「不採算品目」で苦しむ企業

全国で相次ぐ医薬品メーカーの不正製造。問題の背景に、何があるのか。
5月まで日本ジェネリック製薬協会のトップを務め、現在、国内最大手の沢井製薬を率いる沢井製薬・澤井光郎会長。

日本ジェネリック製薬協会・澤井光郎会長(当時):
共通の原因としてあげられるのが、コンプライアンス、ガバナンスの意識の低さ。そこが製薬業に携わるものとしての一丁目一番地。人の命にかかわる仕事だということが根付いていれば、起きなかった問題

富山市にある中堅の医薬品メーカー。大手メーカーからの受託製造も多く、薬の製造から包装までを一貫して担っている。
請け負う製品は、少量から大量発注まで様々。現在、ジェネリック医薬品など多くの品目を製造しているが、なかには収益がとれない「不採算品目」もあるという。

一方、外資系の大手ジェネリック医薬品メーカーからは、こうした日本の医薬品市場は特殊だとの声があがる。武田テバファーマでは、自社の生産キャパシティを考慮して生産品目を絞りこみ、製造販売するのは一定のシェアが見込める約80品目。

社長の松森さんは、シェアの少ない不採算品目を抱えながら生産を続けるのは、欧米では考えられないと話す。

武田テバファーマ・松森浩士社長:
少量多品目という、日本のジェネリック業界の中では当たり前のような世界だが、これはグローバルな視点からするとあり得ない話。日本特有の状況。
(欧米では)利益が出なくなる、シェアを失って少量しか売れないような状況になったら、医薬品に限らず企業の効率化の視点から撤退する。発売中止にする

日本ジェネリック製薬協会・澤井光郎会長(当時):
経済の理由によっての供給不安が、次は大きな問題になりかねない。みんなわかっている。我先にやめておかないと、最後に残ったら不採算ばかり抱える会社になってしまう

関係者によると、日医工もかなりの数の不採算品目を抱えていたという。
決して、許されない医薬品の不正製造。
しかし一方で、この問題を発端に医薬品メーカーの厳しい実情が浮かび上がってきた。

企業の収益性と薬の安定供給をどう両立させるか。国と業界が苦悩している。

(富山テレビ)

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