コロナ禍で日常生活が変化する中、飲食や観光などの業界は経済的に大きなダメージを受けた。そんな中、あるものの需要が世界的に高まっている。

それが半導体だ。鹿児島県内でも関連工場の増設が計画されるなど、活気に沸く半導体産業の“今”を取材した。

世界的に高まる“半導体”の需要…コロナ禍のライフスタイル変化が影響

2022年2月に発表された、鹿児島県の2022年度当初予算案。法人税などを含む県税収入は、前年度を約139億円上回ると予測されていた。コロナ禍で観光業や飲食業が不況にあえぐ中、なぜ、税収の増加を見込めるのだろうか。

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鹿児島県・前畠実 税務課長:
法人事業税については製造業の企業の業績が比較的好調だったというところで見込みが上がった

製造業の中でも特に好調な業界が、半導体だ。半導体の需要は、世界的に高まりをみせている。

鹿児島県にある、京セラ鹿児島川内工場でも、駐車場の敷地に新たな工場を建設する予定だ。

5月、増設工事に着手した京セラ鹿児島川内工場。増設の理由は、生産する半導体の供給が追いつかないためだという。

追いつかない半導体不足…“巣ごもり”需要による影響か

京セラ鹿児島川内工場・重田幸男 工場長:
今、現状は顧客の要求に対して供給が追いついていない状況なので、建物・人・設備を導入し、安定供給につなげようという動きをしている

半導体とは、パソコンやスマートフォン、車のセンサーなどに使われる電子部品だ。デジタル化が進む私たちの生活に欠かせない。その半導体が今、世界的に不足している。

その理由を、九州経済産業局の後藤雄三局長は次のように分析する。

九州経済産業局・後藤雄三 局長:
新型コロナの感染拡大がとても大きな要因になっているのではないだろうか。人々のライフスタイル、ワークスタイルが変化している。こうしたことが半導体需要の要因になっているのではないか

コロナ禍での“巣ごもり”需要での影響か
コロナ禍での“巣ごもり”需要での影響か

当たり前のようになったテレワークやオンライン会議。そして、“巣ごもり”など、新型コロナによりライフスタイルは大きく変化した。その結果、パソコンやタブレットといった電子機器の需要が高まり、それが半導体不足につながっている。

世界一の半導体製造企業が熊本に進出

そんな中、かつての輝きを取り戻しているのが、半導体工場が集まる“九州”。

九州経済産業局・後藤雄三 局長:
元々、九州は「シリコンアイランド」と言われていた。今は当時の勢いはありませんが、それでも日本のIC(集積回路)の生産量の4割は九州で作っている

1970年代から半導体の生産が盛んになった九州。関連企業は約1000社にのぼり、かつては“シリコンアイランド”と呼ばれ、鹿児島県内でも企業の進出が相次いだ。
海外企業との競争に押される時期もあったが、コロナ禍による需要の高まりを受け、京セラをはじめ、九州の多くの企業が設備投資を計画している。

中でも熊本は、世界一の半導体企業、台湾の「TSMC」が日本で初となる工場の建設を進めている。投資額は約9,800億円。桁違いの投資額に今、九州全体が沸いている。

九州経済産業局・後藤雄三 局長:
台湾のTSMC社、世界一の半導体製造企業が熊本に進出する。こうした動きは一つの起爆剤になる

課題は“人材の確保”  地域社会との共存は不可欠

鹿児島県湧水町にあるフェニテックセミコンダクター鹿児島工場。今回、特別に許可を得て、半導体が生産されている様子を取材した。

若松正大記者:
こちらの工場では“ウエハー”と呼ばれる、半導体が集まったものを製造しています

500~1000にも上る工程を経て作られるウエハーを、この工場では、年間2万枚製造。従業員約200人がほぼ24時間体制で作業にあたっている。

活況に沸く半導体産業の課題は、人材の確保だ。受注が増加した2020年11月以降、生産が追いつかず、この1年間で従業員を40人程度増やして対応した。

フェニテックセミコンダクター鹿児島工場・栗原俊介 工場長:
今後も増産が続くと思うので、人をいかに確保していくか。地元の方にかなり新卒で入ってもらっているので、地域に貢献するよう、雇用できるようにしていきたい

今、鹿児島で経済や雇用を大きく支える半導体産業。

京セラ鹿児島川内工場・重田幸男 工場長:
地域にある工場なので、当然、地域社会との共存は不可欠と考えている。経済や雇用で地域の活性化につなげるという意味では、企業としての大義を果たしているのではないかと思う

2030年に、世界の市場は100兆円規模になると予測される中、鹿児島県内の半導体産業のさらなる飛躍に期待が高まる。

(鹿児島テレビ)

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