日本の職場で大きな課題となっているのが、労働力不足。しかし一方で、働きたくても職場が限られてしまう、体や心に障がいのある人たちがいる。
後継者不足で担い手がいない職人たちが、障がいのある人たちに作り方などを指導し、伝統文化の担い手になってもらう取り組みが始まっている。

一般企業への就職は3割…「活躍できる部分を探し、関わってもらえると」

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愛知県立豊川特別支援学校を訪れた。

高等部の時間割は、国語と数学が週2時間なのに対し、“作業”の時間は8時間。将来働けることを目標にしたカリキュラムだ。

女子生徒:
(将来は)お菓子作りたい
男子生徒:
車に興味があります

文科省の調査によると、高等部を卒業しても一般企業に就職できるのは約3割。大半の人は福祉施設に通うことになる。

豊川特別支援学校の先生:
何ができないかに着目されやすいが、できるところもたくさんある。会社の中で活躍できる部分を探してもらって、関わってもらえるとありがたい

月に平均約4000円…障がい者年金を合わせても生活保護受給額に届かず

名古屋市天白(てんぱく)区にある社会福祉法人 飛翔「てふてふ」には、知的障がいがある人を中心に、約30人が通っている。

施設長:
チップを細かく刻んで…。ホテル等に置くブーツの消臭巾着。(工賃は)2個で0.5円

コロナの影響で、企業から1個 数十銭で請け負う内職や、自主製品の販売会が減り、工賃や仕事が少なくなっているという。

施設長:
平均で(月の工賃は)1500円前後。多い人で4000円後半くらい。イベントが軒並み中止になっているから、販売する場所が少なくて。コロナ前はプラス800円~1000円くらいが平均でした

全国でみても、1か月の平均工賃は約4000円で、障害者年金を合わせても生活保護の受給額に届かない。

本人の能力を伸ばして工賃も上げたいと、多くの施設が仕事を求めているのだ。

伝統芸能を支える職人の後継者不足…障がいある人が担い手に

そんな中、後継者不足に悩む職人と障害者をつなぐ、ある取り組みに注目が集まっている。島根県浜田市の社会福祉法人「いわみ福祉会」。

ここで働く清井智彰(せいい・ともあき)さん(31)には知的障害があり、コミュニケーションが苦手だ。清井さんの仕事は刺繍で、午前8時半から午後5時まで、黙々と仕事をしている。

島根県を中心に100以上の地域に伝わる「石見神楽(いわみかぐら)」は、豪華絢爛な衣装をまとい踊る伝統芸能で、清井さんはその衣装を作っている。

いま全国的に職人が不足しており、清井さんのように障害のある人に担い手になってもらう取り組みが注目を集めている。

いわみ福祉会の支援員:
清井さんは黙々と刺繍ができるので、入社した時からすごく技術の上達は早かった

清井さんの父親:
生活よりも仕事の中で学ぶことが大きい。成長の1つ、成長の糧

障害のある人が石見神楽の道具を作れるよう指導を始めたのが、元支援員の佐々木善昭さんだ。

元支援員・佐々木善昭さん:
もともと神楽は、地域で長年保存され、育てられてきた。神楽の仕事について、地域の人と障害者が一体となって働ける職場を作りたいという気持ちが芽生えてきました

佐々木さんは自ら、後継者が無く廃業する“衣装職人”に作り方を学び、障害がある人にゆっくり、少しずつ指導をしてきた。

今では、障害のある人40人とパートの人などが、職人として神楽の様々な道具を作り、給料は多い人で月13万円ほどもらっている。

島根県の温泉街などで週末に行われる「石見神楽」。大事な観光資源を守りながら、障害がある人たちも輝く、そんな社会づくりが求められている。

(東海テレビ)

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