1年で1万4000円の減額に
食品代など物価の高騰が続く中、6月に支払われる年金が前年と比べて0・4%減額する。
年金は2月、4月、6月、8月、10月、12月と年6回に分けて支払われるので、減額となる今年度の年金(4月・5月分)は、6月15日に初めて受け取る形となる。年金の保険料を納める現役世代の賃金が新型コロナの影響などで減ったためで、引き下げは2年連続となる。
日本に住む20歳以上60歳未満全ての人が加入する「国民年金」の支給額は月額6万5千75円から6万4千816円に259円減少、会社員らが入る厚生年金は22万496円から21万9千593円に903円減少する。(平均的な収入のある夫婦2人の世帯)年額にすると1万3千944円減額する計算だ。
また、物価の変動に応じて変動する老齢年金生活者支援給付金(65歳以上で同一世帯全員が住民税非課税の人が対象)も、5千30円から5千20円に引き下がる。
年金受け取りは65歳以外も可能
今年度から老齢年金の受け取る年齢にも大きな変化があった。老齢年金とは、老後の生活を支えるために給付される年金のことで、私たちがイメージする年金のことだ。(他にも年齢に関わりなく給付される遺族年金や障害年金がある)
老齢年金の受け取り開始年齢は65歳が原則だが、本人が希望すれば60~70歳の間で受け取り開始時期を自由に選ぶことが出来た。さらに2022年度4月から、繰り下げ受給の上限年齢が75歳まで引き上げられることになった。
繰り上げて受給する場合の減額率は、1ヶ月早めると0・4%減となるため、1年繰り上げると4・8%減、最大である60歳まで繰り上げると、年金は早くもらえるが受給額は24%減となる。
一方、繰り下げて受給する場合の増額率は、1ヶ月遅らせると0・7%増となるため、1年繰り下げると8・4%、70歳で42%増、さらに75歳まで繰り下げると、年金は遅くもらうことになるが、受給額は84%増となる。
日本年金機構のHPでは、一例として、年金額が180万円の人が、75歳に「繰り下げ」た場合、本来の年金額180万円に加えて、繰り下げ加算額が151・2万円、合計331・2万円給付されるとしている。
「繰り上げ」か「繰り下げ」か。早くもらうか、遅くもらうかで判断が難しいのは、いつまで生きられるか、つまり自分の「寿命」が分からないことだ。
70歳に繰り下げて42%増額された年金を受給すると、65歳から年金を受給した場合に比べて、受給総額は81歳で追い抜く計算となる。また、75歳に繰り下げた場合は、86歳で追い抜く計算だ。
日本人の平均寿命は男性が約82歳、女性が約88歳(2020年)。年金の支給額は物価や賃金の変動に応じて毎年改訂されるほか、制度改正もされるので、長生きをしながら、どのような老後の生活を描くか柔軟に考えていく必要がある。