マスク着用の条件緩和、海外観光客の受け入れ再開へ。新型コロナウイルスを巡って私たちの生活様式は新しいフェーズを迎えようとしている。

一方で、病院の現場からは「後遺症の患者は増え続けていて、ワクチンの効果には疑問」という声も上がっている。後遺症の実態を取材した。

新規陽性者は減少も…後遺症の相談件数は“高い水準”

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26日に開かれた東京都のモニタリング会議では最新のデータに基づき、新規陽性者は減少しつつあるものの、「後遺症への相談件数は高い水準にある」として後遺症に対して警鐘を鳴らしている。

また、同データによると、後遺症の相談者について10~20代の若い世代が2割以上で、基礎疾患を含む既往症がない人は7割以上だった。コロナ罹患時は97%とほぼすべての人が軽症だったという。その症状については咳が38%、次いで倦怠感が34%と高い割合だった。

コロナ後の方が断然つらい…仕事に行けず収入がゼロに

「朝、布団から出られない。体がもう、鉛のように重いんです」Aさん(33)は体が思うように動かせず仕事にも行けない日々が続いている。

取材に対して、Aさんは「コロナ後の方がツラい」と語った。

Aさんが新型コロナウイルスに感染したのは、今年2月。症状は軽かったものの、療養を終えたころから徐々に体に異変が表れ始めた。それまでほとんど無かった頭痛や倦怠感が出始め、次第に外出もままならない状態に…

「買い物とか、外に出て歩いたりすると体がずーんと重くなって、その後は必ず熱が出たり、関節痛があったり。コロナに罹ったときより今の方が断然つらいです」

脱毛や偏食などにも及ぶ後遺症は、Aさんの生活を一変させてしまった。

それまで続けていた交通誘導の仕事にも行けなくなり、収入は絶たれた。「いつ治るのか、本当に治るのか。このままでは収入がゼロになってしまう。」やむを得ず転職活動をしているAさん。後遺症による休職に公的な補償がないことにもまた、強く不安を感じている。

シャワー、歯磨き…日常が送れない

「シャワーの湯気が苦しくて、息を吸ったり吐いたりできなかったです。歯磨きをしたら吐いてしまったり」

Bさん(50)も半年以上続く後遺症に苦しめられている。去年の6月に感染してから、重症化した後に退院。

それから10カ月以上、全身の倦怠感や頭痛、吐き気、息苦しさなどの後遺症が今も続いていて、歯磨きをすると吐いてしまうこともあるという。

在宅で仕事をするBさん。体調が悪化すると横になって休むことも・・・

「今は在宅で仕事をさせてもらっています。それでも、少し資料を作ったりしたらもう座っていられなくて横になったり」

幸いなことに、上司から理解を得て働き続けているというBさんだが、後遺症の回復の兆しは見えず、苦しみは続いている。

確立した治療法のない“後遺症”に医療現場は

最新の厚生労働省のデータによると、感染者の5人に1人が感染から半年が経過しても、疲労感や倦怠感といった後遺症を抱えているという。

一方で、後遺症に対する治療法は確立しておらず、対症療法で治療していくしかないのが現状だ。2人は、救いを求めていくつかの病院を訪ね、新型コロナ後遺症外来を設ける神奈川県の仁厚会病院にたどり着いた。

仁厚会病院での診察風景

同病院の森山直樹医師が現場で感じる後遺症患者の特徴は、やはり都のデータに沿う内容だという。

森山医師:
コロナに感染した段階での重症度というのは、後遺症の有無にはあまり関与していないように思われます。症状としては、息苦しさなど呼吸器症状を訴える人が多いです

そして、肝心の治療法については、医師同士で情報が共有されづらいのが現状だという。

森山医師:
今、治療法については個人で情報交換をする程度です。対症療法を基本とした上で、私たちが試行錯誤した結果の治療法もあるので、提言できる場があるのなら発信していきたい

取材に応じる森山直樹医師

また、今後も後遺症を抱える患者は増えるだろうとした上で、課題について指摘する。

森山医師:
これからは、後遺症を抱えた方が働き続けられるような環境を作っていくことが大事です。時短や配置転換など柔軟に働けるような職場での支援と理解が必要です

後遺症にワクチンは効く?現場からは疑問の声

さらに、同病院の外来担当看護師はここ数カ月の患者の傾向について「後遺症の患者さんは最近も増えていて、3月や4月は特に多かったです」と新規陽性者の減少とは裏腹に後遺症の患者は増加傾向にある印象だという。

では、まだ正確な研究やデータが示されていない”ワクチン接種の後遺症への効果”についてはどうだろうか。

「ワクチンの効果によって、発熱外来の患者さんは減っています。しかし、後遺症の患者さんは減っていない印象です」

この病院においては、ワクチン接種が後遺症へのリスクを低減させているとは言えないようだ。

様々な規制が緩和されつつある一方で、まだ分からないことの多い後遺症の問題。症状への理解を深め、患者の社会復帰をサポートする体制が求められている。

(フジテレビ社会部 市原璃音)

記事 959 社会部

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記事 5 市原璃音

フジテレビ報道局ニュース制作部。1997年静岡県生まれ。2020年東京大学法学部卒業後、入社。趣味はラジオ聴取。