「日米地位協定」が壁となり、沖縄県内の米軍基地周辺でPFAS・有機フッ素化合物による水汚染が確認されるも、基地内への立ち入り調査すら実現していない。

こうしたことから、沖縄は地位協定の改定を求め続けてきた経緯がある。県民の命を支える水を取り巻く現状を考える。

米軍の通知で水道施設の使用が止まる金武町

金武町は町の面積の約半分を基地が占めている。「戦後、人々は水源地を奪われ、自力で水源を掘り当てるしかなかった…」と話すのは、元副町長で現在は区長を務める伊芸達博さん。

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金武区 伊芸達博区長:
こっちが地下水ポンプ。これで汲み上げて送水しているわけさ

こうした地下水だけでは需要に応えられないため、3割を県がダムから取水する水に頼ってきた。その水を送る「送水管」が敷設されている土地の一部が、アメリカ軍基地内にあるため県は毎年、国に申請し使用許可をもらう必要があるという。

しかも、その許可書には「使用の中止」という驚くべき記述が。つまり、アメリカ軍が通知した際には直ちに、住民の命を支える水道施設の使用を中止しなければならないと明記されているのだ。

一方、この申請書に記された「伊那嘉原6614番地」とはどこなのか。伊芸さんは古い土地台帳を出してきてくれた。

金武区 伊芸達博区長:
これ1号(水源)か…これ入っているかもしれんな。基地の中に浄水場があるんだよ。だから言っていることは間違いない、提供施設がある

地下水の汚染発覚 直後に米軍が広報文発表

こうした「一時使用」の土地は、県内に25カ所も存在している。そして2021年10月、金武町では住民の命を支える地下水が汚染されていたことが発覚。

水道水からは、国の目標値である1リットルあたり50ナノグラムを超える、70ナノグラムの汚染物質が検出されていた。

汚染源は一体どこなのか?取水源から高濃度の有機フッ素化合物・PFASが検出されているのは、いずれも基地のフェンス沿い。

しかし、その報道の直後、アメリカ軍は広報文を発表。「基地内で予備調査を行ったが原因を特定できなかった」と因果関係を否定した。

どのような調査を行ったのか、沖縄テレビでは再三にわたりインタビューを申し込んだが、返答は一切なかった。

立ち入り調査はなぜ出来ないのか

沖縄県と金武町は立ち入り調査を求めたが、半年が経過してもアメリカ軍から回答はない。なぜ基地への立ち入りが出来ないのか…。壁となっているのが、アメリカ軍に排他的管理権を認める日米地位協定だ。

この地位協定に環境に関する規定が一切なかったことから、2015年に環境補足協定が結ばれた。

岸田文雄外相(当時):
日米地位協定締結から55年間で初めての地位協定を補足する国際約束であり、従来の運用改善とは異なる大きな意義を有するものと認識している

しかし、この1年後、県民45万人に水を供給する北谷浄水場の水からPFASが検出され、その取水源である嘉手納基地への立ち入り調査を県が求めたが、実現しなかった。

その理由を問われた当時の岸田外相は、「漏出が現に発生した場合」にしか「立ち入り調査は困難」であるとして、暗にその実効性のなさを認めた格好となった。

県が立ち入りを求めて6年が経過する2022年も実現していない。

(沖縄テレビ)

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