解散総選挙を今やっても勝てる?
23日に発表されたFNN産経の世論調査によると内閣支持率は68.9%、自民党の政党支持率は40.5%だった。永田町には「青木率」という青木幹雄元官房長官が言い出した言葉がある。これは内閣支持率と政党支持率を単純に足した数字が50を切ると政権が倒れるというまあ「経験則」である。
この記事の画像(4枚)この青木率が何と109.4もあるのだ。100越えとはすなわち政権は安定しており、なおかついつ衆院を解散しても勝てるという数字である。さすがに衆院選は半年前にやったばかりなので今すぐには解散しないだろうが。
こうした中、月曜(5/30)に驚くべき調査結果が出た。日経の世論調査によると比例投票先「自民」が何と50%を記録した。2位は維新の8%、3位は立憲の7%だった。ここ数年の自民の比例投票先は大体40%前後で国政選挙でずっと勝っているのだが、50%超えというのは久しぶりだ。20年ぶりだという。
2カ月後に行われる参院選は半数改選なのでいくら自民がバカ勝ちしても単独過半数は難しいが、現状の与党過半数はそれほど難しくはないだろう。調査を見ると維新は議席を増やし、立憲、共産は苦戦すると見られる。もちろん投票まであと2カ月あるので投票行動が変わる可能性はある。
与野党がケンカしない理由
先週から今週にかけて国会では補正予算審議などにより衆参の予算委で岸田首相を呼んで論戦が行われているのだが、あまり盛り上がらずニュースにもならない。
予算委が「面白くない」理由は野党第一党の立憲が「これまでの追及型では国民受けが悪い」として「政策提案型」に転換したことと、「聞く力」を売りにしている岸田首相が本心はともかく、聞く姿勢を打ち出しているためなのだろう。これではケンカにならずつまらない。
加えてウクライナ危機により、日米軍事同盟の強化や原発の再稼働を望む世論が増えていることも立憲や共産の質問の勢いを削いでいる。
ところで比例投票先50%もすごいが、内閣支持率68.9%という数字もすごい。歴代内閣で70%を超えたのは、細川、小泉、鳩山の3内閣だけだ。いずれも一時的に国民が熱狂した。細川、鳩山についてはその後人気が急降下し短命政権に終わった。
バイデンを「説得」した岸田さん
岸田さんのような地味な首相がこれだけ高い支持率を得るのは初めてだ。単純に考えると、これまでの支持層に加え、真ん中から左にかけての無党派層が流れ込んでいる。岸田政権の分配重視を歓迎しているのだろう。だが注目すべき点は従来の保守層が離反していないことだ。
それは悪く言えば「安倍支配」なのかもしれないが、普通に考えれば岸田さんは外交安保、あるいは国家のあり方などについて「宏池会だからリベラル」というわけではないということなのだ。
5/26付の産経新聞によると岸田首相は日米首脳会談で、日韓の関係改善に前のめりになるバイデン大統領に対し、韓国が合意を無視してきた過去の経緯について「あなたも知っているはずだ」とくぎを刺した。この記事を読んで岸田・林外交が中韓に妥協的になるのではないかと心配していた人たちはホッとしたのではないか。
党内第4派閥の岸田政権が安倍派(第1派閥)、茂木派(第2)、麻生派(第3)とうまくバランスを取りながら、保守層を固めつつ、リベラルにもウイングを広げているうちは強い。だが参院選も勝ち、「これならいつでも解散できる」と岸田さんが強気になると党内力学は変わり、そこからほころびは広がるかもしれない。
【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】