ロシアが、新たにリマンの制圧を発表するなど攻防が激化しているウクライナ東部。“最後の拠点“とも言われるセベロドネツクでは、ウクライナ側が劣勢に陥っているとみられている。なぜここに来て、ウクライナが苦戦しているのか…木村太郎氏は、背景に「アメリカの誤算」があったと読み解く。

「異例の出来事」がソウルで起きた

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木村太郎氏:
21日にバイデン大統領がソウルにいたんですよ。そこでウクライナに対する5兆2000億円、400億ドルの支援の予算案に署名した。ソウルでしたんですよ。なぜかっていうと、その法案は19日にワシントンで採決されたんだけど、バイデン大統領はそのとき韓国に行っていた。だから、ホワイトハウスのスタッフが書類を持って、民間航空機に乗って追いかけて、ソウルで署名して初めて有効になったと。ものすごい異例。そのぐらい急いでた。それに何が入ってたかというと、りゅう弾砲の弾、何万発とかね。そういうのを送るために予算を一日でも早く通さなきゃいけないと。実は切羽詰まってたわけですね。

アメリカはまだ「時間稼ぎ」ができると思っていたのだろうか…

木村太郎氏:
というよりは、ロシアが素早く機先を制して攻撃してきた。これに対して対応しなきゃいけないっていう…。ウクライナ側の反攻計画は、大体5月以内にいろんなところから武器を援助してもらって、6月にスタートして、8月に勝つというシナリオを書いていた。それでは間に合わなくなりそうなんで、急いだっていうのがこれだった。

ロシアが一つ一つの街を集中的に攻撃し始めた動きも関係あるのだろうか…

木村太郎氏:
それしかできなかったわけですよね。そこへ手持ちのいい武器を全部集めて攻撃をし始めた。それは、アメリカの誤算というより、ロシアがそういう作戦をとったということ。

苦戦しているセベロドネツクをはじめ、どんどんロシア軍が侵攻していくと、ふたたびキーウまで行くことは考えられるだろうか…

木村太郎氏:
今日のアメリカの戦争研究所のリポート見ると、プーチン氏はとにかく成果をあげなきゃいけないから、全勢力をセベロドネツクに入れてると。それで、多分勝つかもしれない。でも勝とうが負けようが、そこでロシア軍は勢力を全部使い果たすので、そこからウクライナ軍の反撃が始まるって、言ってるんですよ。

「両国の“持ち駒”」が戦況を左右する

これからの戦いの行方は、両国の持ち駒次第だと読み解く、木村太郎氏。それぞれの“持ち駒”とは…

ウクライナ軍の“持ち駒”は…

木村太郎氏:
「M777」。りゅう弾砲っていう大砲なんですけどね、これまでの大砲と全然違うんですよ。弾に羽が生えているんです。打つとね、GPSで狙い定めたところに誘導していく、ミサイルみたいな大砲なんです。しかも50何キロ飛んじゃって、ロシアのりゅう弾砲より10キロぐらい余計に飛ぶわけですよ。しかも、大砲自身の目方が軽いんでヘリコプターで運ぶことができて、移動自由なんです。「空飛ぶ砲兵隊」っていわれるぐらい新型の大砲なんだけど、これがあるとね、ロシア側の大砲の騎士団っていうのがね、全部やられちゃうわけですよ。

一方、ロシア軍の“持ち駒”は…

木村太郎氏:
実は戦線へ向けてロシア国内を走っている映像があって、反ロシアのボランティアグループが撮影したものなんですけど。20両ぐらいかな、貨車に乗って(戦車が)運ばれているんです。なんと、見たら62型戦車。1962年のもの。ロシアは、72、80、90、それから14って2014年。いろいろ新しいのあるんだけど、みんななくて62年型の古いのを引っ張りだしてきた。物持ちがいいっていえばそうなんだけど。これがね、今の戦闘に使えるわけがない。だから、今のロシアは人員も不足しているし、新型兵器も不足しているし、これからの戦闘は容易ならざることになるだろうっていうふうにいわれているんです。

両国の持ち駒がどう戦況を変えていくのだろうか…。

(「Mr.サンデー」5月29日放送分より)