個人消費は小幅に減少
内閣府が発表した2022年1月から3月までの3か月間のGDP(国内総生産)速報値は、物価変動の影響を除く実質で、前の3か月と比べて 0.2%減少し、年率換算では1.0%減だった。GDPでは、国内でどのくらい消費や生産が行われ、日本経済がどの程度成長したかが明らかになる。
マイナス成長となったのは2四半期ぶりだ。この3か月は、オミクロン株の流行により、東京などに「まん延防止等重点措置」が適用された時期にあたり、個人消費の動向が注目されていた。外食や旅行などが影響を受け、振るわない結果となったが、減少は小幅だった。
この記事の画像(5枚)GDP全体のマイナス成長に影響した要因のひとつは、輸入が増えた分が、輸出の増加幅を上まわったことだ。輸入は「海外で生み出された価値」で、GDPを計算する際に差し引かなければならないため、輸入の増加はマイナス方向に、減少はプラス方向に働く。
ワクチンや治療薬、携帯電話の輸入が増え、自動車などの輸出の伸びを上まわったことが、GDPをマイナスの方向に導く結果となった。
力強さに欠ける結果になった昨年度のGDP
項目別にみてみる。個人消費は、4四半期ぶりのマイナスに転じたが、減少幅は0.03%だった。住宅投資は、1.1%減と、3四半期連続の減少だ。資材価格の上昇が需要を抑制したことも、停滞につながったとみられる。公共投資は3.6%減と、5四半期連続の減少だ。
企業の設備投資は、グリーン化やデジタル化に対応するための投資が増えるなか、0.5%増と、2四半期連続の増加となった。輸出は1.1%増だが、一方で、輸入が3.4%伸び、輸入の増加幅が輸出が増えた分を上回って、全体のGDPを押し下げた。
また、この3か月間の実質GDPそのものは年率換算で537兆円だった。2019年10~12月の541兆円を下回り、政府が2021年度中の回復を見込んでいた新型コロナウイルス流行前の水準には届かなかった。
あわせて発表された2021年度1年間のGDPは、実質で2.1%増となった。新型コロナの感染拡大の影響で、4.5%減と最大の落ち込みを示した前の年度から、プラスには転じた形だが、回復には力強さが欠ける結果だといえる。
消費者心理に陰りをもたらす「値上げ」
経済活動が正常化に向かっているいま、焦点となるのが消費の動向だ。行動制限なしで迎えたゴールデンウィークは各地で人出が増え、控えられていた買い物や旅行が活発になる傾向がみられた。消費意欲が戻るなか、4月以降のGDPは、プラス成長に回帰するとの見方が強い。
一方で、ウクライナ情勢が深刻化し、円安が進むなか、エネルギーや食料品の価格上昇に拍車がかかる事態が続いている。家庭で消費されるモノやサービスの値動きを示す4月の消費者物価指数は、全国に先行して公表される東京都区部の指数がおよそ7年ぶりの上昇幅となった。5月20日に発表される全国の指数は大台の2%に乗るとのと予測も出ている。
外食各社でも値上げを表明する動きが相次いでいるが、主要外食100社の価格動向についての調査では、4月までの1年間に値上げを行ったのは3割にあたる29社に上り、このうち、半数を超える15社が今年に入ってからの4か月間で値上げを実施している。調査を行った帝国データバンクは、経営努力での吸収には限界があるとして、夏以降に値上げがさらに進む可能性を指摘している。
落ち込みからの回復軌道を描けるか
広がる物価の上昇が、家計支出に陰りをもたらし、消費の上向き軌道を抑えることになるのか。GDPの半分以上を占め、成長のけん引役となる個人消費が、値上げに直面してどう動くかが、この先の景気持ち直しのカギを握ることになる。
(執筆:フジテレビ経済部長兼解説委員 智田裕一)