「たぶんうちのネクタイだ!」
ロシアの戦勝記念日がこれほどまでに注目を浴びたことがかつてあっただろうか。
少なくとも日本の情報番組でロシアの大統領の演説がノーカットで紹介されるということはおそらく前代未聞であろう。
ウクライナ侵攻について「戦争」という言葉が使われるかどうかなど、その一言一句に世界中のメディアが神経を注いだ演説で、イタリアではプーチン大統領がつけていたネクタイがちょっとした話題になっている。

ラジオ番組に出演したナポリの老舗ネクタイメーカー・マリネッラ社のマウリツィオ・マリネッラ社長が「たぶんうちのネクタイだ」と語ったのだ。
しかも、もしかしたらベルルスコーニ元首相からのプレゼントだったかもしれないという。

一見どこにでもありそうな紺地に白いドット柄のように見えるこのネクタイ、マリネッラ社長によれば「Punta a spillo blu e bianco」(紺白ピンドット)という定番柄で、特にフォーマルなシーンにぴったりな一本だという。価格は130ユーロ(約18,000円)。
マリネッラの日本のオンラインストアでは定価(税抜き)26,400円となっている。

ベルルスコーニ元首相はこの柄がいたくお気に入りで、各国首脳にプレゼントしていてプーチン大統領にも贈ったという。
ベルルスコーニ氏から贈られてイタリアが世界に誇るネクタイに開眼したのか、プーチン大統領自身からマリネッラ社にネクタイの大量オーダーがくるようになり、この数年でマリネッラ社からはベルルスコーニ氏からのプレゼント分も含むと、合計300~400本のネクタイをプーチン大統領あてに発送したという。
その際には両国の大使館を介して作業が行われたというが、この1年ほどはやりとりはストップ。ネクタイをめぐる興味は尽きないが、いまだ勝利を謳えない勝負の日にプーチン大統領が選んだのは世界中の王侯首脳の御用達として知られる老舗ブランドのネクタイだったということだ。
イタリアの高級ブランドがお気に入り
また、クリミヤ併合8周年記念式典ではイタリアの高級ブランド、ロロ・ピアーナのダウンコートを着て登壇。
ロロ・ピアーナ社のインスタグラムアカウントが非難のコメントで炎上する騒ぎがあった。


一方のウクライナのゼレンスキー大統領といえば、いまやカーキのTシャツやトレーナー姿がトレードマークとして定着し、ネット上にはそれ風のアイテムが「ゼレンスキーのウクライナ軍Tシャツ」などと称して売られている。

一流のハイブランドでワードローブを固めるプーチン大統領とカーキ服で有事のリーダーイメージをアピールするゼレンスキー大統領。対照的な2人の装いは言葉以上に雄弁にそれぞれの矜持と戦略を物語る。
そんな二人が渾身の勝負服で相まみえる日は果たして来るのだろうか。