ジャケットやパーカーに付けるボタンとストッパー。環境に配慮した素材が使われていて、あるメッセージが込められている。

三陽商会 コーポレートブランドビジネス部長 羽田野貴紹さん:
表示義務がない副資材関係はプラスチック原料のものが多い中、サステイナブルファッションブランドとして、解決へ少し向かっていきたい。

色鮮やかで環境に優しい「ボタニカルダイ」

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東京にあるアパレル企業、三陽商会。店頭に並ぶ黄色やピンクの色鮮やかなアイテムは、植物由来の染料で染められている。

コロナ禍が続く中でも、明るい気持ちになってもらいたいという思いから、この春はミモザ、シャクヤク、デルフィニウムなど、花言葉がポジティブなものが選ばれた。

これらの商品は、植物が本来持っている色素をタンパク質で定着させる、染色工程において水を汚さない『ボタニカルダイ』という特別な染色技術が使われており、環境に優しいことも、大きな特徴だ。

着る人に喜ばれ、環境に優しい洋服を作りたい。そんな三陽商会が、新たな試みを始めた。

“表示義務のない”素材も、サステイナブルに

こちらの洋服に使われているボタンとストッパーは、半分以上が植物由来の原料でできている。

なぜ、ボタンとストッパーに目を付けたのか。その理由を聞くと…。

三陽商会 コーポレートブランドビジネス部長 羽田野貴紹さん:
表示義務がない副資材関係に関してはプラスチック原料のものが多い中、サステイナブルファッションブランドとして、解決に少し向かっていきたい。

“表示義務のない”素材も、サステイナブルに。そんなこだわりを実現させたのはパナソニックが開発した新素材「kinari」。

捨てられていた間伐材が主な原料で、プラスチックに劣らない耐久性をもっています。

三陽商会 コーポレートブランドビジネス部長 羽田野貴紹さん:
環境負荷が低いというのを意識して商品展開している。物凄く1点1点、作り手の思いを込めてこだわって作っているので、そういったことを知っていただけると、すごくいいかなと。

今後については…。

三陽商会 コーポレートブランドビジネス部長 羽田野貴紹さん:
元々は木製品でできているものっていうのは結構多いんですけれども、その木製品が捨てられてしまうようなハンガーなどを回収して、それを、また今度ボタンに変えていくとか、そういう循環の輪みたいなもので、環境負荷が低いお洋服がどんどん生まれてくればいいかなと思っています。

内田嶺衣奈キャスター:
このニュースについて、デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに伺います。

見えない素材にも、ここまでこだわっているんだなと感じましたが、松江さんはどうご覧になりましたか。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:
本当にそうですよね。

“表示義務がない副資材”にも踏み込む企業の意志を感じますし、戦略の差別性も際立っていると思います。

これを可能にしている背景は、環境への対応という目的のもとに、異業種同士が手を組む戦略的な提携、これが効いているんですね。

今回で言えば、素材メーカーは植物をベースにした高機能素材を提供する。アパレルメーカーは副資材も含めたトータルなファッションを提案する。この両方の力を掛け合わせたところに魅力があると思うのです。

こういった動きは例えば、ファスナーのメーカーが商社と組んでリサイクル可能なボタンを作る、といった市場参入の動きもあるように徐々に広がってきているんですね。

内田嶺衣奈キャスター:
そうした企業間の連携に加えて、今後さらにこうした動き広げていくためには何が求められるんでしょうか。

松江英夫氏:
こういった広がりを循環の輪にしていくには、「既存の業務の延長で考える」では限界があると思うのです。それぞれの事業者が自らの強みを生かして、環境の対応のためには何ができるのか、範囲を広げて考える。本業の再定義、これが求められると思います。

アパレルメーカーにとっては、洋服の素材だけではなく、副資材も含めてトータルなファッションをどう環境対応していくのか。

それによって消費者の意識を変えていく、ここまで含めて本業を捉え返していく必要がありますし、素材メーカーも単に製品を導入するだけではなくて、アパレルメーカーが抱えている環境上の課題、例えばハンガーの有効利用とかですね。廃棄物の有効利用といった課題まで含めてどう解決に貢献できるのか。こういった視野で本業を捉え返していく。こんな努力が必要になってくると思います。

内田嶺衣奈キャスター:
そういった様々な活動を私たち消費者にももっと広げていくためには、どうしていけばいいんでしょうか。

松江英夫氏:
消費者の意識を高めるための環境整備とかルールづくり、これも重要です。

今、国では“サステイナブルファッション推進”ということで、省庁を超えていろんな議論が始まったばかりなんですが、これからは一歩踏み込んで、消費者の意識や目線が高まるような法整備。この辺の対応も必要になってくると思います。

例えば、環境対応に熱心な事業者の取り組みを可視化して、消費者がそこを選べるようにしていく。そういった法対応も含めて、取り組んでいく必要があると思うのです。

これからは、消費者と事業者と国や自治体が、それぞれの範囲を広げる中で相互に連携する。それによって循環型社会への動きを加速していく。こんな展開に期待したいです。

内田嶺衣奈キャスター:
そうですね。一人一人が環境への意識を高めていくことに加えて、表示義務のない部分についても、消費者の判断基準となるような、何かより分かりやすいマークの表示などがあれば、ますます進んでいくのかもしれません。

(「Live News α」5月6日放送より)