兵庫・尼崎市に立つ真新しい施設。
地域住民のために建てられたが、完成から8カ月たっても鍵がかかったまま利用できない状態だ。
”開かずの施設”となってしまった背景を取材した。

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完成から8カ月 閉ざされたままの扉

兵庫・尼崎市の阪急園田駅前に立つ、真新しい施設。
地域住民の交流の拠点にして町を活性化させようと、地元自治会の東園田町会が建設した。
しかし…

地域住民:
せっかくきれいなのができたのにね。早く使えるようになってほしいです

完成から約8カ月たっても、鍵がかかっていて市民は利用できない。
施工会社が鍵を持ったまま渡さないのだ。

施工会社:
払うまで、わしは(鍵を)離さん。100年かかろうが200年かかろうが

市の補助金2億円を投入した地域のための施設で、一体何が起きているのだろうか。

駅前の一等地…貸し会議室やホール備える4階建ての会館

尼崎市の阪急園田駅の目の前、利便性の良い一等地に、2021年7月に完成した東園田町総合会館。
地元の自治会東園田町会が建設した4階建ての会館で、貸し会議室やホールがあり、地域住民の交流の拠点となることが期待されていたが…

記者リポート:
会館の2階の出入り口にやってきました。建築資材や、工事に使われていたとみられる道具がそのまま放置されています。そして2階の部屋は、鍵が開かず誰も入れないということで、非常にがらんとしています

完成から約8カ月たっても、市民が利用できないというのだ。

建て替えに伴って解体された施設で、気功サークルの活動を行ってきた徳永泰子さん。
新しい会館を利用できないため、現在は会館から歩いて20分ほど離れた施設を利用している。

気功サークル代表 徳永泰子さん:
私らの教室も高齢者の人が多いですからね。『遠いからもういいわ、あっちやったら行かれへんわ』って言う人もいて。(サークルの人数は)減りましたね、やっぱり。半分くらいになりましたもんね

もともとこの場所にあった総合会館は、子どもたちに向けた紙芝居の上映会や落語家を招いた寄席などが行われる、地域住民憩いの場だった。

2021年7月 落成式の直前に起こったこととは

市の施設の移転に伴う周辺地域の貸しスペース不足を補うため、東園田町会が尼崎市から2億円の補助金を受け、総合会館を建て替えた。

なぜ、会館は閉ざされたままなのか。
工事の際、施工会社とやり取りをしていた町会の関係者に話を聞くと…

東園田町会 橋本春雄 事務局長:
(事前の)報告はなしに落成式の2日前になって初めて、実はこれだけの追加の金額をいただきたいという請求書が渡されたんですよ。工事会社からね。払ってもらわん限り渡されへんというような返事になってきたわけですね

市長も招かれる予定だった落成式当日の朝、工事を請け負った施工会社が、突然町会に「会館の鍵を渡さない」と言ってきたのだ。

東園田町会 橋本春雄 事務局長:
びっくりしましたね、こんな話聞いてないし。新しいとこで色んな活動ができるというのは、絶対みんな心待ちにしてますんでね

町会は、この施工会社と約1億7000万円の請負契約を結んでいて、ほぼ全額を払い終えていた。
それにも関わらず、約6000万円の追加工事費用の支払いを求められたのだ。

東園田町会 田中靖二 会長:
追加工事っていうのが正しければ、追加工事の請負契約をしなあかんわけですよね。1枚もありませんよ、そんなの。我々も聞いてなかったし

追加工事費6000万…発注者はだれ?

なぜこんな事態になったのだろうか。鍵を握る施工会社を取材すると、新しい総合会館の内部を案内してくれることに。
ある広い部屋は、立派なスライディングウォールで仕切られていた。

施工会社:
(端から端までで)600万。仕切りの向こうに声が流れへんねん。普通のは80万やけど。それを自治会が『声が漏れるから高いのにせえ』ということで。館内にはこれが4本入ってる

鉄骨など資材の高騰や、スライディングウォールをはじめとした仕様変更などで費用がかさみ、約6000万円の追加工事が発生したとする施工会社。

Q.追加工事を指示したのは?)
施工会社:
監理者Xや。『監理者Xの指示により追加』してる。自治会側の工事のメンバーと聞いとっから

監理者とは、設計図面通りに工事が行われているか確認する役目を担う建築士のこと。施工会社は、監理者X氏に指示され追加工事を行ったと主張する。

自治会と施工会社の間に入っていた監理者X氏とは、一体何者なのか。
建て替えの構想段階から関わりを持っていたというX氏。
一級建築士を名乗り、町づくりの協議会などにも顔を出していたという。

東園田町会 橋本春雄 事務局長:
会館を建て替えるにあたって、あの人に図面を描いてもらったらどうやというようなことになって。プランニングの時から一緒に入って、こういう建物どうやろうか、あぁいう建物どうやろうかというのを描いてもらってたんです。だからあの人に設計してもらったらどうと、今までやってもらったしって

町会はX氏を信頼し、設計・監理業務を委託する契約を結んだ。
町会の信頼を武器に、X氏は今回の工事で中心的役割を担っていたというのだ。

監理者Xとは何者か

X氏に取材を申し込むと、顔や声を出さないことを条件に話を聞くことができた。
追加工事の請求書については…

X氏:
追加のやつね、僕に相談もなく(請求額を)追加してるから
(Q.施工会社からXさんに(請求書を出す)相談はなかった?)
ない、いきなりそんなもん出して。請負業者だから、言われたからにはやらなあかん。工事はお金が足らなくてもやらなあかん

設計図以上の工事を指示し、追加請求は認めないというX氏。取材を進めると、驚くべき事実が判明した。

建設現場に設置されていた看板の設計・監理者の項目には、X氏とは別の人物の名前が記されている。
X氏は本当に設計・監理者としての資格があったのだろうか。

そもそも設計・監理業務は、建築士事務所協会に登録が必要だ。
兵庫県建築士事務所協会に問い合わせると、X氏の事務所は建築士事務所の登録がなかった。
この点について問うと…

(Q.この事務所は建築士事務所登録をされていますか?そうでないと監理業務を受託できないですよね?)
X氏:
厳密に言うと、そういうことになりますよね
(Q.登録されていますか?)
いや、してないですね

そもそもX氏は、法律上、町会から設計・監理を受託することはできない疑いがあるのだ。
一方で施工会社も規模が小さく、法律上は今回の工事を請け負う基準を満たしていなかった。

施工会社:
特定建設業ちゃう。一般建設業やんか。だから今回の工事、でけへんねんって言うてある
(Q.どこに言ってますか?)
町会。自治会に言うてる
(Q.自治会は施工会社が工事を請け負える基準を満たしていないことについて何と言っていた?)
(自治会も)構いません、X氏とやってもらったらええと。罰金覚悟しとるけどの。わしんとこも、そりゃ落ち度がある。自治会も監理者をきちっとしてないのは問題や

自治会、施工会社、監理者X…責任の所在は

資格がない疑いのあるX氏を信頼し、本来この工事を担うことができない業者と契約を結んだ町会。
なぜこんなことがまかり通ってしまったのだろうか。

東園田町会 田中靖二 会長:
私は設計というか、建設に関しては(知識)ゼロですからね
(Q.X氏の会社の登記や一級建築士の免許証の確認をされましたか?)
してません。さっきから言うてるように、みんな信用してたんだもん。普通にものを頼んで、お金を払ったら、頼んだもんが手に入ると、私自身恥ずかしながら、そんなように思ってましたからね

ずさんとも言える建て替え工事に、2億円もの公金を投入した尼崎市は…

尼崎市園田地域振興センター 林弘之 所長:
振り返って考えますと、補助金支出先が”町会”ということでしたので、もう少しきめ細かく進捗をお聞きする中で、ご助言できることはなかったのかなという反省はあります

知識も経験も少ない”自治会”に、大規模工事を任せることには疑問の声があがっている。
建築トラブルに詳しい弁護士は…

公房法律事務所 一級建築士 福島敏夫 弁護士:
正直、自治会あてに億単位の補助金が下りるということは、違和感というか、驚いた面もあったので、自治会そのものに補助を行うことが本当に妥当なのかどうか考えていかないといけないのかなと思います

東園田町会は会館の明け渡しを求めて、施工会社と裁判で争っている。

多額の公金が使われたにも関わらず、地域住民が建物の中に入ることすらできない「開かずの会館」。
扉が開く日はやってくるのだろうか?

(関西テレビ「報道ランナー」2022年4月14日放送)

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