新潟・上越市で、菓子店の閉店により、50年以上にわたって親しまれながらも姿を消してしまった銘菓。その復活への物語を取材した。
地元の人から愛される銘菓 店の閉店で一度姿を消すも…
障がい者福祉施設が運営する上越市の喫茶店たんぽぽ。
この記事の画像(24枚)食べた人が「懐かしい」と話すのは、ブッセのような見た目にたっぷりの粒あんとバタークリームを挟んだお菓子『チャーム』。上越市で50年以上親しまれ、一度は姿を消してしまった銘菓だ。
チャームの製造は、喫茶店たんぽぽを運営する「はなの家」で行っている。
「はなの家」は、障がいがある利用者に働く喜びなどを経験してもらう施設。ここでチャームの作り方についてアドバイスしていたのは、チャームを開発した菓子職人の滝本清さん(79)。
滝本清さん:
ここまでできるとは思わなかった
かつて、滝本さんが営んでいた滝本菓子店で妻の美津子さんとともに製造・販売し、店の看板商品となっていたチャーム。
夫婦二人三脚の店は、妻の美津子さんがくも膜下出血で倒れたため存続が難しくなり、2019年に閉店。同時にチャームも姿を消した。
滝本清さん:
妻がずっと入院していたので、閉店は仕方ない
施設利用者に託す“大切なレシピ” 滝本さんの直接指導も!
「チャームの味をもう一度…」障がい者の就労を支援する「はなの家」は、長く上越市で親しまれた味を製造することが利用者の働く喜びにもつながるのではないかと考えた。
滝本清さん:
チャームは「おいしい」と言われるまで努力してきた。一日、二日でできたお菓子ではない
菓子職人の滝本さんが一番大切にしているのは、食べたお客さんの喜び。しっかりした商品をお客さんに届けるため、滝本さん自らが施設の利用者へ製造方法を直接教えることで、チャームの復活が決まった。
滝本清さん:
昔の味と変わりない。製造の全部を教えている
職人の命ともいえる製造方法。滝本さんは、チャームの全てを利用者の未来に託す。
はなの家 水野沙映さん:
滝本さんから引き継いだ宝を、みんなで守っていきたい
焼きあがった生地にバタークリームを塗り、専用に炊き上げた粒あんをたっぷり挟んだら、優しく手で包み完成。
滝本さんは、一緒にチャームを製造する利用者を今では…
滝本清さん:
後継者として頑張ってほしい。もう、私のお菓子じゃなくなってきたな。ここで実を結んだことがありがたい
多くの人を笑顔に…懐かしく優しい味は未来へ
チャームが復活して2年。喫茶店たんぽぽで、チャームは1日60個を売り上げる看板商品になった。
お客さん:
もう食べられないと思っていたが、ここで食べられるのがありがたい
お客さん:
チャームを食べると昔を思い出す。昔を思い出しながら食べている
お客さんの笑顔は、チャームを製造する利用者の励みにもなっていた。
チャームを製造する利用者:
お菓子作りはすごく楽しい
チャームを製造する利用者:
滝本さんのように、立派なお菓子を作れる人になりたい
チャームを製造する利用者:
今、農家とお菓子屋さん、兼業農家のようなものを目指して頑張っている
さらに菓子職人・滝本さんの横には、リハビリにより体調が回復してきた妻の美津子さん。夫婦で守ってきた味の復活を誰よりも喜んでいた。
滝本清さんの妻 美津子さん:
おいしい。よくできている
滝本清さん:
自分がお菓子を作ることはもうないと思っていた。後継者に夢を膨らませてもらっている
上越で長く愛された滝本菓子店の名前はなくなっても、チャームの名前と味は未来へ。
懐かしくて優しいお菓子の物語だ。
(NST新潟総合テレビ)