「5月9日の戦勝記念日に“勝利宣言”か」と言われているプーチン大統領。
この日にこだわる理由を調べてみると、プーチン大統領にとってもロシア国民にとっても非常に“特別な1日”だと言うことが見えてきます。
なぜプーチン大統領が、「5月9日“勝利宣言”」にこだわるのか。

めざまし8では、その理由を解説しました。

理由① ロシアが“世界に誇る”「戦勝記念日」…Z文字もこの日から?

5月9日“勝利宣言”にこだわる理由①
ロシアにとっては“最大の祝日”である

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5月9日というのは、1945年第2次世界大戦で、旧ソ連がナチスドイツに勝利した日。約2400万人という途方もない犠牲者を出しながらも勝ったという、栄光の日でもある特別な日なのです。また、ウクライナ侵攻の時によく目にした「Z」という文字もこの日に関係があるといいます。

軍用車両などに記され、ウクライナ侵攻支持のシンボルとされる「Z」。
なぜ「Z」なのか、その理由が定かではない中で、4月18日、ロシアの国営メディアが説明をしました。それが、今年は「77」回目の戦勝記念日ということで、7と逆さにした7の2つ重ね合わせて「Z」という文字になる、という内容です。

では、侵攻当初から5月9日、77回目の戦勝記念日が念頭にあったのでしょうか。
筑波学院大学教授・中村逸郎さんに聞きました。

筑波学院大学教授・中村逸郎さん:
あったと思います。今回のウクライナ侵攻の考えを振り返ってみますと、2021年の10月から、ロシアとウクライナ国境にずっと軍を集結させていたんですね。そこからずっと、5月9日に向けて動いていたのではないかと私は思っています

5月9日はこれまでも、軍事パレードなども行われて、盛大に祝われてきた日です。軍事パレードでは、男性だけでなく、女性の軍人も敬礼をしながら行進をしていきます。そして当然ここには兵器なども登場しますが、約1万1千人が2022年も参加するのではないかと報じられています。
さらに、パレード参加者が一様につけているのが、旧ソ連時代の勲章を模したリボン。ゲオルギーリボンというもので、プーチン大統領の胸元にも付けられているオレンジ色のリボンです。

中村教授は実際に、現地でパレードを見た時の様子をこう話します。

ロシアの街中で渡されたという「ゲオルギーリボン」を手にする中村教授
ロシアの街中で渡されたという「ゲオルギーリボン」を手にする中村教授

筑波学院大学教授・中村逸郎さん:
私も偶然ですけども、ロシアにいたときに戦勝記念日とぶつかったのですけど、私も(黒と茶色のリボンを)持っているんです。持っているというよりも渡されてしまったんです。街を歩いているときに。
この、黒い色というのは“火薬”なんですよ。で、オレンジが“火”ということで。街を歩いているとこれを渡されるんですけど、みんな受け取ってどうするかというと、腕に巻いたり、自動車のアンテナとかバックミラーに付けて、街中がこのリボンで埋め尽くされるという雰囲気です

“世界をナチズムから救った” 国民にとっても「1年で1番のお祭り」

戦勝記念日の際は、プーチン大統領は決まって演説をします。演説は、建国の父・レーニン氏が眠るレーニン廟の前で行われ、この日ばかりは国営テレビは、かつての英雄を描いた戦争ドラマを数多く放送するといいます。

その意味として、「当時活躍した英雄たちを若年層にも認知をさせることで、国民の結束力を高めていきたいとの思惑がある」と中村教授は指摘。プーチン大統領の思惑、強いこだわりを感じることができます。
しかし、一般市民、国民にとっても特別な日で、“一年で一番のお祭り”と捉えられているそうです。

筑波学院大学教授・中村逸郎さん:
ソ連というのは、ナチスドイツを打倒して世界をナチズムから救ったと。非常に甚大な損害をソ連は被ったわけですけども、でも、あのナチを打倒したということで、自分たちというのは特別な地位が国際社会で与えられるべきだという、特級意識というものをすごく持っています。ですから、こういった場を通じて、国際社会にソ連の姿を見せてやろうという思いがあります

理由② プーチン氏が“作り上げた”最大の祝日

5.9にこだわる理由②
プーチン大統領が“作り上げた”祝日

元々は、ソビエト政権が誕生した11月7日、これが「革命記念日」として“最大の祝日”とされてきました。ところが、プーチン氏が政権を取るようになって、かつての革命の流れ、当時の記憶を呼び覚まさませたくないという思いからか、革命記念日を平日に変えたといいます。
そして、戦に勝った5.9を戦勝記念日として重要な日に位置づけました。「“革命”を遠ざけながらも旧ソ連の栄光で団結させたい」という想いがあるのではないかと中村教授は読み解きます。

さらにプーチン氏の思いは国歌にも通じています。

影響は国歌にも 旧ソ連時代の栄光を…当時の国歌を復活

1991年にソ連が崩壊してロシア連邦ができた時に、当然国歌ができました。しかしプーチン氏が大統領になった段階でこの国歌を変えてしまい、旧ソ連のメロディーをそのまま使うものに戻したそうです。テレビなどは国歌を1日2回流すということが義務づけられているといいます。

理由③ 長期化する軍事侵攻 “せざるをえない”ロシアの内情とは

5.9にこだわる理由③
“せざるを得ない”ロシアの内情

当初の計画より、侵攻が進んでいないのかもしれない…というのも、戦死・脱走・兵役拒否をしたロシア兵がおよそ4万人にのぼるから。この数は、進攻に参加する兵士の5人に1人。兵士が足りていないというのです。

ロシアでは求人サイトで兵士を募集したり、地下鉄に募集ポスターを貼って兵士募集を呼びかけています。
このような状況の中さらに犠牲者が増えてしまうと、今度は、国民の不満が爆発し、何かしらの勝利宣言をしないと、支持層からも不満が爆発してしまうのではないか…。それで是が非でも5月9日にも勝利宣言をしたいのだとみられています。

“宣言”後は停戦? 専門家「むしろ激化するのでは」米露の動きがカギ

では、“勝利宣言”をしたら、停戦になるのでしょうか。
2人の専門家は、むしろ戦争が激化するのではないかと指摘をしています。

東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠さんは、ウクライナ東部2州(ルハンスク州・ネツク州)を制圧するまでは戦いは続くのではないか、さらに“特別軍事作戦”から“戦争”というふうに位置づけもに変わるのではないか、と指摘しています。

また、中村教授は、5月9に“宣戦布告”して旧ソ連構成国と手を組み、戦いが激化する可能性があると指摘しています。

筑波学院大学教授・中村逸郎さん:
実は、ロシアというのは旧ソ連諸国の6カ国といわば軍事同盟を組んでいます

筑波学院大学教授・中村逸郎さん:
いま、ロシアが大変苦戦しています。兵士の数も少なくなってきている、ミサイルの数も少なくなってきているということで、軍事同盟と呼ばれる機構があるんですけれども、そこには敵国から侵略を受けた時には、集団的自衛権を行使するということが書かれているわけです。
ロシアは、この旧ソ連6カ国と一緒になってウクライナに対して、これまでの特別な軍事作戦から開戦宣言をして本格的な戦争に突入していくのではないかというふうに考えられます

長期化するウクライナ侵攻、この戦いはどこで終わりを迎えるのでしょうか。

筑波学院大学教授・中村逸郎さん:
最後はアメリカとロシアですね。2つの国がどう話しあうのか、そういう場はいつ設定されるのか。今のこの状況の先が見えてくるのは、米露の動き次第だということです。このままだとずるずる2年、3年と戦争をしてしまう危険性というのも高いです

(めざまし8「わかるまで解説」4月26日放送)