おしゃれも心地良さも諦めることはない。

傷跡やリンパを締め付けないブラ

都内にオープンした女性用下着メーカーの小さなショールーム。

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カラフルな色使いの前開きのブラジャーに、総レースがフェミニンなブラジャー。
いずれも乳がん患者のために作られたものだ。

傷跡やリンパを締め付けることがなく、着け心地の良さはもちろん、色やデザインの豊富さがこちらの売り。社長の中村さん自身も2011年に乳がんを患い摘出手術を受けている。

アボワールインターナショナル・中村真由美社長:
買うところは決まっているし、選択肢も少なく、ここから先はもう女性としておしゃれな下着もかわいい下着も着けられないんだと思い知らされました。「私だけ?オシャレなものを着けたいと思うのは?」と思って。

そこで5年前に起業、乳がん患者のための機能性とおしゃれを兼ね備えた下着の開発を始めたのだという。

この日訪れていたのは3年程前に乳房の全摘手術を受けたという会社員の女性。

40代会社員女性:
乳がんする前に着けていた下着と今の下着がデザインなど変わりなく着けていられるのが大きいです。見て楽しむこともできますし、とにかく体が楽。明るい色もあるのでなんとなく気持ち的にも前向きになれます。

こちらは特許を取得した乳房再建手術を受けた人のためのブラジャー。

胸の再建手術を受けた人の場合、ホルモン治療などで体形変化が起こりやすく、高さなどで左右に違いがでることもあるという。

そこで大きさに合わせて調節できるようパッドを入れるポケットは2つ。
ワイヤーも様々な長さのものを抜き差しできるようにし、伸縮性のある素材を使用することで、左右差をなくすことに成功した。

そして現在開発中なのが、乳房を全摘した人のためのパッド。

アボワールインターナショナル・中村真由美社長:
アボワールの商品だけでなく、いろんな人がいろんなシーンでいろんなブラジャーに使えるようなシリコンパッドを作ろうと思って。

試着した女性:
違うと思いました。着けて。やっぱり今ピタッとした洋服は敬遠しているし、ゆとりあるようにサイズをあげちゃったりとかそれが気にならずにできるという感じです。

乳癌を経験した女性たちが今まで通り過ごせるようにー
中村さんの会社では乳がん患者のためのヨガ教室などにも力を入れている。

アボワールインターナショナル・中村真由美社長:
下着もそうですが、患者さんが自分1人の中に閉じこまらず、話して気持ちが楽になるようなことも進めて行きたいです。東京も落ち着いてきたらサロンやヨガもしていけたらと思っています。

2番目に多い悩みは「外見の変化」

三田友梨佳キャスター:
産婦人科専門医で4人のお子さんを育てる母でもある稲葉可奈子先生に聞きます。
自分の乳がんの経験を活かした商品の開発ですが、臨床の現場で女性の健康と向き合う稲葉先生の目にはどのように映りましたか?

産婦人科専門医・稲葉可奈子先生:
命が助かればそれでいいで終わらずに、治療の後遺症があってもオシャレを楽しめもうと人生や生活の質を上げていくのはとても素敵です。
今回の試みはテクノロジーを活用して女性の健康に関する課題に応えるフェムテックのとてもいい例の1つです。

三田キャスター:
今回はオシャレと機能性の両立をはかっていますが、テクノロジーを活用することで今後はどんな悩みの解決が期待できるようになりますか?

産婦人科専門医・稲葉可奈子先生:
がん治療の悩みで1番多いのは治療のつらさで、2番目に多いのは外見の変化というデータがあります。
例えばリンパ浮腫という治療の後遺症があるのですが、むくみや痛みで生活に大きく影響します。それを緩和させるリンパマッサージを通院せず自宅でできる機械などが開発されたら患者さんはとても助かると思います。
外見の変化を何かでケアすることで体だけではなく心も軽くなる効果が期待できます。

三田キャスター:
乳がんの早期発見、さらに治療の現状についてはいかがですか?

産婦人科専門医・稲葉可奈子先生:
最近では乳がんに限らず、がんと診断されても治療と仕事やプライベートなどの日常生活を両立できるようになってきています。

今回の取り組みなどはそのチカラになりますが、それも早期に発見できて治療できたからこそです。大事に至らないためにも検診をしておきたいですね。
乳がんについては自己触診も大事ですし、乳がん検診とあわせて子宮頸がん検診の案内もセットで補助がでる自治体は多いので、ぜひ定期的に検診を受けましょう。

がんは誰もがかかりうるもので、誰にとっても他人事ではなく、自覚症状がでる前に早期発見するのが検診の目的です。元気だからとがん検診を受けないのではなく、元気だからこそ元気を維持するために検診へ行きましょう。

三田キャスター:
乳がんは日本の女性の9人に1人が人生のどこかで罹患するといわれる身近ながんです。後回しにするのではなく、定期的に検査する重要性を強く感じますし、罹患しても何かをあきらめることなく毎日を過ごせるためのこうした試みが広がっていくことを期待したいと思います。

(「Live News α」4月26日放送分)