4月15日、発売してから初めてという「からあげクン」の値上げが発表された。ローソンは「36年守ってきた価格を変えることに泣いた、苦渋の決断だった」とコメントしている。
そして、街中でもから揚げの値上げが広がっている。おいしくて手頃な価格のから揚げに何が起きているのか?“から揚げ界”に押し寄せる値上げドミノに注目する。
発売以来初「からあげクン」値上げ
4月15日、世間をざわつかせるニュースが入ってきた。それがローソンの人気商品「からあげクン」の値上げ。
今は本体価格が200円(税込み216円)だが、5月31日から20円値上げして220円(税込238円)になる。

ネットでも「ショック」という声が相次いで、衝撃が走った。
なぜなら、ローソンは年度が変わる前の3月、すでにおにぎり・サンドイッチなどの値上げを発表していた。それが今回、この4月15日という微妙なタイミングで、「からあげクン」1品だけの値上げ発表となった。

なぜ、そんな発表になったのか?「からあげクン」の値上げが実は特別なものだったからだ。
4月15日は「からあげクン」の36年前の発売日で、この鶏のキャラクター・からあげクンの36歳の誕生日だったのだ。その記念日に値上げを発表したという。
そして、発表に衝撃が走ったワケは、実は「からあげクン」は発売から36年、本体価格の200円を一度も値上げせずにいた。

この値上げの理由について、からあげクンは申し訳なさそうに頭を下げて、昨今の原材料の高騰を受けてのものだと報告している。国産の鶏肉や小麦粉・油といった原材料の高騰や輸送コストなど、さまざまな要因で値上げせざるを得なかったという。

一方、コンビニのチキン商品の値上げといえば、ファミリーマートも4月「クリスピーチキン」を値上げしている。

から揚げの値上がりはコンビニだけじゃない!?
今、から揚げの値段の上昇が、コンビニ業界に限らず幅広く広がっている。
東京・世田谷区にある「デリカのサカイ」では、3月下旬にから揚げを1個当たり10~20円値上げした。使っている鶏肉はブラジル産で、3月初めから大幅に仕入れ値が上がったという。

デリカのサカイ 綿貫真太郎店長:
(値段を)上げざるを得ないので上げさせていただきました。そうしないと本当にちょっと厳しいですよね。何のためにやっているか、わからないですので。ギリギリですね。
店長は非常に苦しそうにコメントしていた。

から揚げ界を直撃しているのが、このお店も苦しんでいるブラジル産の鶏肉の値上がり。現在、日本が輸入する鶏肉の7割がブラジル産となっている。しかし今、そのブラジル産の輸入鶏肉の価格が2週間前には1kgあたり480円と過去最高レベルに上っている。
このブラジル産の鶏肉は、外食店や冷凍食品などで手頃な価格のから揚げに多く使われているのだが、この値上がりが直撃している。

なぜ値上げ?要因にはウクライナ情勢
加藤綾子キャスター:
ブラジル産の鶏肉が値上がりしている、その要因というのは何なんですか?
経済部・麻生小百合記者:
円安というのももちろんありますが、大きな影響を与えているのが、ウクライナ情勢です。
なぜウクライナ情勢の影響で、ブラジル産が高くなるのかというと、実はウクライナはあまり知られてないんですけども、鶏肉も生産も盛んで、中東やヨーロッパが仕入れているんです。しかし今、ロシアの侵攻を受けて、ウクライナから鶏肉を輸入していた国が仕入れ先をブラジルに変更しています。それにより、ブラジル産鶏肉の値段が世界的に高くなっていて、日本でも値上がりし、さらに品不足になっているんです。
農畜産業振興機構によりますと、4月の鶏肉の輸入量もブラジル産の高騰などを受けて、2021年と比べると大幅に下回ると予想されています。

経済部・麻生小百合記者:
さらにいろいろ調べてみると、今回意外なケースを見つけました。
高知・土佐市にある料理店「からあげとチキン南蛮のお店・味彩」の名物「チキン南蛮」。これまではブラジル産の鶏もも肉を使用していたんですが、その値上がりを受けて、4月15日から安い国産の鶏胸肉に切り替えることにしたんです。
このお店のように、ブラジル産をこれまで安定していた国産に切り替える動きというのが出てくると、今度は国産の価格の値上がりが後押しされそうです。

経済部・麻生小百合記者:
しかし、輸入鶏肉が減っている影響で、国産の鶏肉が玉突き的に値上がりする動きに出ています。私があるスーパーに聞いてみたところ、国産の鶏肉の仕入れ値が2021年より平均1~2割して上がっているということです。現在は企業努力によって売値には反映されてないが、今後は値上げも検討せざるを得ないとちょっと苦しそうでした。

ローソン涙の決断 ネットでも「泣ける」の声
今回、値上げを発表したローソンのメッセージがとても切実で、それがネットでも共感を呼んでいた。
ローソンからのメッセージ
ここに至るまでに、社内で何度も話し合いを続けました。
どうしても価格を維持できないと決まったとき、商品本部長は「36年間守ってきた価格をここで変えなくてはいけないのか」と泣きました。苦渋の決断です。
涙の決断だったようで、これにネットでも「泣ける」と声が上がっている。
経済部・麻生小百合記者:
ローソンに取材してみたところ、本部長はやはり商品の開発に長年携わってきた方なので、ローソンの看板商品ともいえる「からあげクン」にかなり熱い思いを持たれているようでした。

経済部・麻生小百合記者:
値上げのニュースについて、これまで数多く放送してきていますが、今回改めて値上げは消費者にとっても、また企業にとってもつらいことなんだなと感じました。

加藤綾子キャスター:
できることなら変わらない値段で提供し続けたいという、その思いが伝わってきますけれども、企業にとっても守り続ける大変さというのがあるわけですよね。
ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
やむを得ないんでしょう。36年間値上げをしてこなかったというのは、やっぱりローソンにとってもこれは一種の自負・プライドだったと思うんですよ。そういう意味でいうと、「からあげクン」というのは“プライドチキン”だったのかもしれませんね。
(「イット!」4月18日放送分より)