鹿児島県が運用しているドクターヘリは現在2機あるが、1機は鹿児島市立病院を拠点としていて、カバーエリアは種子島、屋久島より北。
そしてもう1機は県立大島病院を拠点に、奄美群島をカバーしている。

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さらにこれらとは別にもう1機、医療現場に出動するヘリ・民間救急ヘリが存在する。
それが、鹿児島市の米盛病院が運用する民間救急ヘリ「レッドウイング」だ。カバーエリアは県本土のほか種子島、屋久島、十島村の一部もカバーしている。

実は全国に2機しかない民間救急ヘリ。
この救急ヘリを飛ばし続ける関係者の思いを取材した。

真っ赤な民間救急ヘリ「レッドウイング」運用する米盛病院

鹿児島市の米盛病院。医師と看護師が慌ただしくエレベーターに乗り込む。

フライトドクター、フライトナースと呼ばれる彼らを病院の屋上で待っていたのは「レッドウイング」、民間救急ヘリだ。

通報から25分後、レッドウイングは鹿児島県本土北部の現場に到着。
救急処置を施された患者は救急車に引き継がれ、病院に搬送された。

「医療がなかなか届かない状況変えたい」

この真っ赤なヘリが鹿児島の空に登場したのは、県のドクターヘリ運用開始から3年後、2014年のことだった。

鹿児島市立病院のドクターヘリがこなす出動は年間1,000件を超え、1機では全ての出動要請に応えられない状況を受けて、米盛病院が運用を開始した。
レッドウイングは県ドクターヘリの「補完ヘリ」に位置付けられ、2019年度の出動件数は345回。

自身もしばしばレッドウイングで出動する冨岡副院長は、フライトドクターとしての心構えをこう説明する。

米盛病院 冨岡譲二副院長:
検査の機材や薬剤など(現場では)限られているので、短い時間で最低限の最重要の処置をするという頭の切り替えが必要

そんな救急ヘリを鹿児島で運用するうえで、大きな意味を持つのは離島やへき地などの遠隔地の存在。

米盛病院 冨岡譲二副院長:
遠隔地の人は同じ鹿児島県民、国民でありながら医療がなかなか届かない、それを何とか変えようというのが、われわれの理念

甑島の医療を支えている齋藤学さんは、民間ヘリだからこそできるレッドウイングの医療貢献を、次のように説明する。

薩摩川内市・甑島 下甑手打診療所 齋藤学所長:
一番はやはり、ドクターヘリの適用でない患者(の対応)。足の骨折など、緊急性はないが船で行くのは痛い場合、ヘリで行けば痛い思いをせずに飛んで行って、米盛病院の屋上まで連れて行ってくれる

離島やへき地の患者にも対応するレッドウイングだが、年間数億円かかるというその管理維持費は、すべて米盛病院が単独で賄っている。

米盛病院 冨岡譲二副院長:
確かにコストはかかるが、患者が助かればそれはいいし、そのことで我々の理念がみんなに伝われば、みんなハッピー

その理念は多くの人に伝わっている。

米盛病院は現在、レッドウイングの運用にあてるためクラウドファンディングを行っているが、3月末の期限を待たずに目標金額の1,230万円を突破した。

レッドウイングで救われた命 感謝のメッセージ

病院のウェブサイトには、実際にレッドウイングで命を救われ、クラウドファンディングに協力した人たちからのメッセージが寄せられている。

「昨年、主人がお世話になりました。助けていただいて、ありがとうございました」

「父がお世話になりました。先生の親切な対応 涙が止まりませんでした」

「民間での維持は大変だと思いますが、離島の医療を守るため頑張ってください」

米盛病院 冨岡譲二副院長:
このヘリはみんなのもの。レッドウイングを飛ばすクルーの一人として、クラウドファンディングで出資して、県民国民の命を守るレッドウイングのクルーメンバーになってほしい

患者の1秒を救い、一生につなげる。その理念を実現するためにレッドウイングは、きょうも出動の時に備えている。

(鹿児島テレビ)

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