愛知県みよし市に人気のイチゴがある。青果の仲卸業者が最新の技術を生かして作ったこのイチゴは、市場に1％しか流通していない希少な品種だ。直売所には朝採れたてのイチゴを求めて次々と客が訪れる。
ほどよい酸味にこだわり 人気の希少種「よつぼし」
愛知県みよし市にあるイチゴ農園「丸進ファーム」には、人気の直売所がある。この直売所では「よつぼしM」（490円）など、朝収穫したばかりの新鮮なイチゴが並ぶ。
女性客A：
すごくおいしい
女性客B：
ここが出来てからは他のお店で買わない
一度食べたら虜になるというこのイチゴは、市場にわずか1％しか流通していない希少な品種で、ほどよい酸味が特徴だ。
「甘いだけでなく、ほどよい酸味がのったイチゴこそが最高においしい」と、青果の仲卸業者が最新の技術を駆使して栽培に挑戦。2017年に品種登録された。
この希少なイチゴは、鈴木邦夫さん（66）が大切に生産管理をしている。
おいしさは抜群だが、生産する農家はわずか
「よつぼし」は、旨味、酸味、風味が四つ星級においしいと、その名が付けられた。最近のイチゴは甘さを売りにした品種が主流なのに対し、よつぼしの売りは“ほどよい酸味”だ。
鈴木邦夫さん：
一般的には“大きくて甘い”イチゴがおいしいものと思われていましたが、「本当にそうだろうか」と。おいしいイチゴの新基準を作ってみようと探したところ、よつぼしにあたった
鈴木さんは、もともと生産管理のエキスパートで、スーパーに野菜や果物を納める仲卸の会社に「他にないおいしいイチゴを作って欲しい」と2019年にスカウトされ、よつぼしの栽培に携わってきた。
しかし、なぜ市場にわずか1％しか流通していないのか。
鈴木邦夫さん：
収量が少ない、大きくない、手間がかかると。生産者にとって、メインで「よつぼし」を作ったら儲からないという構造があります
おいしさは抜群だが、その生産効率の悪さから、なかなか一般の農家では手が出しづらい品種だという。
IT×人間の勘 先端技術を活用したスマート農業
鈴木さんは、定期的にタブレットを確認している。
鈴木邦夫さん：
一番イチゴの生育に重要なものは、温度と水と光合成のためのCO2。どの様な数値になっているかをチェックしている
丸進ファームでは、よつぼしを作るためにITや農業、生産管理に強い人材を集めて「スマート農業」を実践。ハウス内には、イチゴに肥料と水を与える装置もある。
鈴木邦夫さん：
2時間に1回ぐらいチョロチョロと水をやる。イチゴの気持ちに沿った栽培方法の制御をしている
さらに、自動カーテンでハウス内の温度調整も管理。しかし、機械に頼りっきりでもいけないと鈴木さんは話す。
鈴木邦夫さん：
管理をしたらそれで終わりじゃなくて。実際に観察してダメなら、思っている仮説がうまくいってない。どうしたらいいか、次の行動を常に繰り返している
ITと人間の勘や洞察力を組み合わせて栽培をしているのだ。
糖度13度以上の大きなイチゴだけを選抜 贈答用「四重奏」
直売所は10時にオープン。大きさごとにパックに詰められたイチゴが並ぶ。1粒10グラム前後のイチゴが約25粒入った「よつぼしM」（490円）や1粒35グラム以上の「よつぼし5Ｌ」（800円）などを求め、次々に客が訪れる。
女性客C：
よく来ます。甘みがおいしい。いつもこの時期は、お土産にこのイチゴを買っていきます
隣の東郷町から来た男性は…。
男性客：
奥さんの友達が「ここの安いイチゴおいしいよ」って。食べたらおいしくて
口コミで話題となり、お土産としても人気になっている。
さらにプレミアムな商品がある。
鈴木邦夫さん：
いま糖度を測っています。3Lというサイズ以上のもの、かつ13度以上の糖度のものをブランド名「四重奏」と名付けて販売しております
流通全体のわずか1％という、よつぼしの中でも特に大きくて糖度が高いものを選抜した贈答用の「四重奏」（3L 22個入り、4000円）も。少し値は張るが、今シーズンだけで800箱売れた。
4種のスイーツ＆濃厚なフリーズドライも
人気のよつぼしは、お店でも食べることができる。
農園から約2キロの所にあるショッピングモール「ららぽーと愛知東郷」内の「モンスーンカフェ」には、よつぼしを使った4種類のスイーツが。
一番人気の「ストロベリーパフェ」（1200円）は、収穫したばかりの新鮮なよつぼしの程よい酸味と、甘いクリームとの相性が抜群。
さらに、丸進ファームでは新商品を発売。極限まで乾燥させた「よつぼしフリーズドライ四重奏」（2本セット 4400円）は、味が濃縮され、特徴でもある酸味がより強調されている。
鈴木邦夫さん：
常温で管理出来て、通年で食べられる。水分を90％飛ばしていますので、味が濃厚で余韻が残るイチゴ
贈答用にと四重奏の名を付け、高級感あるパッケージに仕上げた。
「大切な人に贈るイチゴを作りたい」と話す鈴木さんは、希少なイチゴを生かして街の新たな名物を生み出している。
（東海テレビ）
